
「このオフに僕ほどトレーニングした選手はいない」
ビクター・ウェンバニャマがコートに戻って来た。今年2月に右肩の深部静脈血栓症と診断され、昨シーズンの出場は46試合止まり。スパーズはその後にディアロン・フォックスもケガでシーズン終了となり、チームは失速してしまった。
「人間にとって、やりたいことを禁じられるのが一番つらい。病院で医者に囲まれて長い時間を過ごし、聞きたくない話ばかりを聞かされる。僕にとって今後に生きる経験かもしれないけど、辛かったのは間違いない。人生を変えるほどキツい体験だった」と、彼は闘病生活を振り返る。
治療を終えた彼は旅に出た。中国に行って修行僧の生活を体験し、次はNASAで宇宙の不思議を学んだ。「今回の経験で、人生は永遠ではない、できる限りチャンスは逃したくないと思うようになった。NBAでプレーしているからと言って、興味のあるものを自分に禁じるのではなく、経験できるうちに経験したいと思った」とウェンバニャマは言う。
試合からは遠ざかっていたが、もちろんバスケも彼のやりたいことだった。「筋肉量はかなり増えたと思う。リハビリでまず体力を戻し、あとはひたすら過酷なトレーニングをやった。断言するけど、プロスポーツ界全体を見てもこのオフに僕ほどトレーニングした選手はいない。そういう意味で、今回のオフは最高のものになった。調子は良いし、身体も出来上がっている」
トレーニングキャンプが始まり、ようやく本格的なバスケを再開できる。「今はとにかくバスケがしたいんだ。個人練習でやれることには限りがあって、その限界までやった。だから今はバスケをプレーしたい、試合でプレーすることを求めている」
数日のチーム練習を経て、現地10月4日にはファンの前で練習試合を行い、キレのある動きを見せた。スター選手の多くはまだ調整段階だが、ウェンバニャマは明日開幕しても何の問題もなくプレーできる状態にある。
「医学的に再発の不安はないそうだし、僕自身も乗り越えたと感じている。数週間前の時点でコンディションは100%で、今はさらに上の状態にある。NBAに来てからの2年間、ルーキー全員が通る道だけど、82試合をこなすのは心身ともに大変だった。そのための準備が十分じゃなかったんだ。でも、今は大丈夫だと感じている」
「プレーには自信がある。でも、自分の身体が持つ可能性はまだかなり引き出せずにいると感じていた。身体の成熟度が追い付いていなかったから、ペースを落とさざるを得なかったんだ。僕らのような若手が全盛期を迎えるのは数年後だけど、自分の身体ができることの範囲を広げることに専念した。やれるだけのことはやったと思う。このオフに学んだことは、ここでは語り切れない。多くの教訓が僕の身体に刻まれた。そうやって選手として、一人の人間として一歩ずつ前進できていることに感謝しているよ」