コービー・バフキン

トレイ・ヤングの影に隠れ、肩のケガもあり活躍できず

ホークスはコービー・バフキンをネッツに金銭でトレードした。バフキンは2023年のNBAドラフトで1巡目15位指名の選手。しかし、過去2シーズンで27試合に出場しただけで、平均5.0得点、1.6アシストとスタッツも伸びず、ホークスはその前途に早々に見切りを付けた

ネッツは今オフのNBAで唯一サラリーキャップに余裕のあるチームで、かつてサンダーがそうして強豪への持続可能な礎を築いたように、他チームのサラリー削減を手伝うのと引き換えに指名権を集めてきた。しかしオフも終盤に入り、戦略を変化させている。バフキンのような、他のチームで見限られたものの、ブレイクの可能性をまだ残す若者を手に入れることだ。『HoopsHype』によれば、このトレードでネッツが支払った金銭は11万ドル(約1700万円)、NBA基準ではタダ同然だ。

ホークスはガード陣の層が厚いとは言えないが、ポイントガードのトレイ・ヤングは『チームの顔』であり、平均36.0分とプレータイムが長い。その繋ぎ役となる2番手には安定感のあるビト・クレイチが定着。そのクレイチの年俸はバフキンの半分でしかなく、ホークスにとっては使い勝手が良い。

ネッツは今年のNBAドラフト1巡目8位でイゴール・デミン、19位でノーラン・トラオレ、26位でベン・サラフと3人のガードを指名しており、バフキンも合わせればガードは多すぎるのだが、先発ポイントガードだったディアンジェロ・ラッセルを放出しているため、彼らには十分なプレータイムを与えられる。

1巡目指名の3人のガードがいる状況で、NBAでの2年でほとんどインパクトを残せていないバフキンを4人目で加える必要はあったのだろうか? これはサマーリーグのアピールが効いたからだ。シーズン中はトレイ・ヤングの影に隠れて存在感を出せないバフキンだが、サマーリーグでの活躍は目を見張るものがある。ドライブを仕掛けてインサイドのビッグマンを粘っこいフットワークでかわし、ゴール下をねじ込むフィニッシュ力は他の選手にはない特別な才能だ。この2年でピック&ロールのユーザーとしてのスキルを高め、そこでズレを作って自らの突破力を効果的に生かせるようになった。

問題は2シーズン平均22.0%と超低調な3ポイントシュート成功率。だが、それもホークスの途切れ途切れの出場機会ではシュートタッチに苦しむのも不思議ではない。さらに苦戦の一因にはケガもあった。ドラフトされた直後から右肩の脱臼を繰り返し、2年目の昨シーズンも開幕前に戦線離脱。その後も状態は上向かず、手術に踏み切ってシーズン終了となった。

手術により肩のケガは完治し、サマーリーグでは上々のパフォーマンスを見せた。それでもホークスでは居場所のないバフキンをネッツが拾った。バフキンの契約は残り2年あるが、最終年はチームオプション。ネッツとしてはチャンスは与えるものの、ダメでもリスクはほとんどない。

そして、バフキンにとっては今回がNBAでキャリアを築くラストチャンスとなる。追い詰められたバフキンは、『窮鼠猫を嚙む』で遅いブレイクを果たせるだろうか。