白井英介

昨シーズンの横浜ビー・コルセアーズは、絶対的エースの河村勇輝がチームを去ったことによる影響を競技・事業部門の両方で大きく受けた。とは言え、チームは最終成績2436敗と負け越したものの、後半戦で成績を向上させ右肩上がりでシーズン終了。ビジネス面でも河村移籍によるチケット収入の大幅減をスポンサー収入の増加などで補い、売上高は前年からわずか4.3%減に留め、2年連続の20億円突破を果たした。

今シーズンはラッシ・トゥオビヘッドコーチの続投、主力が揃って残留したことによるチームケミストリーの上積みが期待できるだけでなく、リーグ屈指のエリートガードである安藤誓哉を獲得。ビジネス面でも売上目標を23億円に設定し、来年3月には収容人数1万人を超える横浜アリーナでのホームゲーム開催を発表している。チームとしての地力を着実につけている横浜BCの舵取り役を担う白井英介社長に、現在のクラブ状況と2026年スタートのBプレミアを見据えた展望について聞いた。

「売上25億円、選手総年俸8億円をゴールにするのは違う」

──昨シーズンは、競技と事業部門でどのような1年だったと総括することができますか。

事業面では「なんとか耐えられた」という評価です。競技面では「もう少しできた」と感じています。外国籍選手のコンディション不良や中心選手の離脱に関しては、ロードマネジメントやケアの部分でもう少しやりようがあったと感じています。この部分に関しては体制の見直しを行っています。

──安藤選手の加入はリーグに衝撃を与えました。昨シーズンの主力が揃って残留した中で安藤選手を獲得できたのは、トップチーム人件費を昨年から増やすことができたからでしょうか。

地元の企業様を中心としたスポンサー収入がここ数年で大きく向上しています。利益貢献度の非常に高い項目で稼げているので、過去何年かに比べると選手の人件費に投資しやすい状況になっています。クラブは中長期計画として、Bプレミア初年度に横浜BUNTAIでホームゲームを30試合実施、売上25億円という目標を掲げています。それが達成できれば選手総年俸もサラリーキャップの上限である8億円にチャレンジできると考えています。Bプレミアはクラブにお金がないということが言い訳にならない戦いになると思います。

──Bプレミアは来年からスタートします。1年後に選手総年俸を8億円にすることは十分に実現可能という認識ですか?

不自然な成長を求めるリスクを負うことなく到達できると見ています。収入を上げていく施策はよりアグレッシブに打っていくつもりですし、初年度の総年俸8億円はそんなに難しい水準ではないと思います。ただ、プロバスケットボール業界全体が成長していく中、「売上25億円、選手総年俸8億円」をゴールにするのは違うと思っています。

横浜ビー・コルセアーズ

「なんとかビジネス面で持ちこたえることができた」

──昨シーズンの売上を拝見すると、チケット収入は前年比で約2億円の減少がありながら、総収入はほぼ同じです。これは想定内の結果なのか、それとも思った以上にスポンサー収入が増えたのか、感触はいかがですか。

想定内と言えば想定内でしたし、いくつか予想していたシナリオの中では良いものとなりました。特にスポンサー収入に関しては昨シーズンまでトップパートナーだった企業様が降り、大幅減収もありえると思っていた中、パートナー様の数が増えたり、ビッグクライアントもいくつか入ってくださいました。100点満点ではなくとも80点を超える結果で、なんとかビジネス面で持ちこたえることができたシーズンでした。

──河村選手は日本バスケ界では随一のブランド力を持っており、スポンサー獲得においても大きな訴求力になっていたと思います。その彼がいなくなってもスポンサーの数が増えた要因はどこにあったと思いますか。

チームとしてパートナー様に訴える内容や商品設計が変わったわけではありません。世の中的には、河村選手は我々のクラブで最も商業的価値があった選手と思います。ただ、彼がいた時と比べてバスケットボールそのものやチームの認知度が底上げされた部分があったため、河村選手がいなくなってもバスケットボールの盛り上がりを評価してもらうケースが増えました。例えばパートナー様の特典として観戦チケットを渡していますが、社内で希望者に配布する抽選の倍率が高くなったり、会社で告知するとすぐ埋まったりと需要が高くなっていると聞きます。

──新シーズンの売り上げ目標23億円は、背伸びしたチャレンジなのか、かなり現実的なのか、どのような認識ですか。

23億はちょっと背伸びしています。というのも我々にとって、横浜アリーナでのホームゲーム2試合は読めない要素が多いからです。今まで最大5000人規模のアリーナでしか試合をしたことがないので、15000人が来てくれるのかは未知数。この興行がうまくいけば23億円を上回る収入も見込めますが、こればかりは本当にやってみないとわからないですね。