島根スサノオマジックでゼネラルマネージャーを務める広瀬健太は、パナソニック、サンロッカーズ渋谷で14年間に渡ってプレーし、2021-22シーズンの引退を機に会社員に転身。2023年より地元クラブの島根にフロントとして加わった。Bリーグでのプレーとバスケットボールとは違う業界での勤務経験という珍しい経歴を持つ広瀬に、現職についた経緯やチーム作りに対する考えを聞いた。
「働かない人と逃げる人が嫌いなので(笑)」
──2023年にフロントして島根に加入し、3年目を迎えました。新しい仕事にはスムーズに対応できましたか。
もちろん簡単な仕事ではないですが、引退してバスケットボールとまったく関係ない仕事をしていたときのほうが苦労した印象です。今はよく知ったバスケットが仕事ですし、選手時代に「強化担当の立場にはこうあってほしい」と思っていたことに近づけるようにやっています。デスクワークが多いですが、そこはまったく苦ではないです。うまくできているかは別にして、自分の考えていることを文章や表にして他の人と共有していく作業は嫌いではないので。
また、サラリーマンを経験したことで、自分のやりたいことを組織の中で実現する方法を学べました。クラブの方針の中で自分のカラーを出したり、問題と感じるところを変えていくために、どうやってまわりの人を巻き込んでいけば良いか、というところです。選手は比較的時間の自由が利きますが、今の立場ではそうも行かないので、限られた時間の中で問題解決のために何をどう突き詰めていけば良いのかというところもです。こういう考え方を持てるようになったのはサラリーマン時代の影響が大きいです。
──編成担当をやってみたいという思いはかねてから持っていたのですか。
いずれはやりたいと考えていました。タイミングは想像していたよりも早くなりましたが、これもめぐり合わせだと思います。
──地元の島根で活動できていることをどのようにとらえていますか。
やりやすいところはあります。地元ということで、昔から知っているバスケ関係者の人もいて、今のところは好意的に受け止めてもらっていると思います(笑)。ユースやスクール運営にも携わっているので、地元の子供たちの成長に貢献したい思いは強いです。
──最終的にはユースからプロ契約を結ぶ選手が誕生するのが理想と思いますが、それは簡単なことではありません。まず、ユース部門で大切にしている部分を教えてください。
まずはプレーしているこどもたちがワクワクできるチーム文化を作り、社会に出ても通用するしっかりとした考えを持った人材を輩出できる組織にしていきたいです。一番は、一生懸命努力することが素晴らしいと思える人材をユースから輩出したいですね。僕は働かない人と逃げる人が嫌いなので(笑)。その次にプロバスケットボール選手を輩出することです。
──強化担当の仕事は、選手との契約交渉に限らず多岐にわたると思います。楽しさややりがいを感じるのはどんなときですか。
問題を見つけて、それを解決するときですね。トップチーム、ユース、スクール、それぞれの問題を一つずつ解決していくことが楽しいです。
「常に進化を求めて変わり続けてほしい」
──1年後にはBプレミアが始まり、選手総年俸の上限が8億円というサラリーキャップが導入されるなど環境が大きく変わります。チームの強化担当としては苦労も多いのではないでしょうか。
性格が飽き性なので、変化していくほうが面白くてい良いですね(笑)。クラブの人間には「『今までこうだったから変えなくてOK』というのはつまらないし、説得力がない」と言っています。サラリーキャップなど変化については賛否両論あると思いますが、現場はアジャストしていくだけです。もちろん、おかしいと感じるところがあったらそれはリーグにも言っていきますが。今までと違うことをああだこうだと考えていく。その上で、「あれを変えるにはあの人に相談しないといけない」と考えるのは楽しいです。
──チームのスタイルを作っていくのはコーチ陣ですが、文化や哲学はクラブ主導で作っていくものだと思います。広瀬さんは、どんなモノを築いていきたいですか。
まずは一生懸命やってもらいたいです。勝負どころや苦しいところで逃げる選手は、見ている人もすぐわかると思います。練習から常にハードにプレーし、困難に立ち向かっていく文化を作りたい。そして土日の連戦で2日続けて同じ試合を見せられても面白くないので、右肩上がりで成長していけるチームにしていきたい。コーチ、選手とも常に進化を求めて変わり続けてほしいです。
物事は簡単に変わるものではないと理解していますが、少なくとも僕が島根に来て2年で「今までこうだったから」「これをやればいいんでしょ」というような雰囲気や閉塞感はなくなってきていると感じています。今は目の前のことをこなしていくことで精一杯な部分もありますが、将来的には「島根ってなんでそんなに素晴らしいクラブなんですか? 勉強させてください」と言われるくらいになりたい。そこまで成長するために尽力していきたいです。
──シーズンは長く当然のように浮き沈みがあると思います。その中でも、チームとしてブレずに貫いてほしいのはどんなところですか。
時には選手とコーチの意見が合わないこともあると思います。ただ、選手は常にまとまっていてほしいです。ベテラン、若手、外国籍と日本人と関係なく、ずっと一緒に手を携えていられれば結果はついてくる。どうしても負けが増えてくると、誰かのせいにし始めるものですが、そういう苦しいときでもお互いの意見を尊重しつつ、思っていることを言い合う。難しいですが、そういうことが勝つためには大事です。
──島根ファンへのメッセージをお願いします。
ファンの皆さんのおかげで、リーグでもトップクラスの熱狂的なホームゲームの雰囲気を作れています。これは島根を代表する文化になっています。盛り上がるホームゲームでプレーしたいと思っている選手はけっこういます。僕が選手を誘うのが楽になりますし、ぜひとももっと熱狂してもらいたいです(笑)。