ハピネスボール

平塚のバスケキッズ約60人が集結

6月14日、平塚市立旭小学校体育館に市内でバスケットボールに打ち込む約60人の小中学生が集まった。彼らを指導するのは、かつて市内にキャンパスと練習場を構えていた神奈川大男子バスケットボール部のOBたちだ。

『Happiness Ball』は同部で学生コーチを務め、現在もコーチとして活動している野崎秀平が、学生時代にお世話になった地域への恩返しと旧友たちとの再会を目的に開催したクリニックだ。2回目となる今年は、野崎を含む同部OBの9名に加え、キング開(横浜ビー・コルセアーズ)、中村ジャズ(元長崎ヴェルカ)がスペシャルゲストとして参加した。

小学生低学年を対象にした第一部は「まわりをよく見てプレーしよう」、高学年と中学生対象の第二部は「プレッシャーがかかっている状況でも良いパスを出せるようにしよう」がテーマだった。神奈川大OBやキング、中村は子どもたちの目線に立ってコミュニケーションを取りながら、相手役をしたり、アドバイスをしていた。

第二部のラストにはコーチ陣によるエキシビジョンマッチを実施。指導時とは異なる『ガチンコ』のプレーを繰り広げるコーチたちの姿に、子どもたちは目を輝かせながら大歓声を送っていた。

「Bリーガーの二人はもちろん、神奈川大のOBのみなさんも子どもたちにとってはものすごくレベルの高いプレーヤー。そういう方々と間近に接する機会はほとんどないので、子どもたちはうれしいでしょうね。私たちとしても貴重な経験をさせてもらっています」

平塚旭ミニバスケットボールクラブの古屋和仁コーチは、このように感想を話した。

キング開

キング「ミスしてもチャレンジして」

神奈川で生まれ育ち、高校時代は平塚の体育館でよく試合をしていたキングは、「子どもたちと交流できるのはこの時期くらいしかない。自分が子どものころはこういう機会が少なかったし、喜んでもらいたかった」と、今回のイベントに参加した理由を話した。

自己紹介で敬愛するデリック・ローズのことを話すも通じず「YouTubeとかで見てみて!目がハートになるから!」と力説したり、横浜BCの学校訪問で交流した子どもと数年ぶりに再会したり、エキシビションマッチで3ポイントシュートを連続成功させたり、サプライズでバッシュをプレゼントをしたり。約3時間ほどの子どもたちとの交流を存分に楽しみ、楽しませようとしていた姿が印象的だった。

低学年にはとにかく楽しむことを、高学年にはレベルに応じた指導を心がけたというキングは、クリニックの最後に「ミスしてもチャレンジすることが大切」と子どもたちに伝えた。これは自身の経験を踏まえた言葉だとキングは言った。

「ミニバスのころ、監督に怒られるのが怖くてレッグスルーやビハインド・ザ・バックなどにチャレンジできなかったんです。こういうプレーはどんどんチャレンジしないとうまくならないし、失敗したことが成長につながるものなので、ミスする恐怖をなくして、早い段階からたくさんチャレンジしてほしいと思っています」

中村ジャズ

中村「教えることは自分にとってもプラス」

バスケットボールスクールでの指導経験を持ち、今オフには他のクリニックにも参加したという中村は、より具体的な指導や声掛けが光った。

「小学校に上がる前からバスケを始めているような子も多くて、僕が小学生のときよりもドリブルが上手な子が多いなと感じました。ただ、止まり方やディフェンスが来たときの状況判断はまだまだ伸びしろがあるので、対人でプレーしている時間帯は、あちこちを周りながらそういうところを話しました。『こうしたらうまくなる』というポイントって、感覚ではわかっても言語化をするのが難しいじゃないですか。そこをうまく教えることは子どもたちにも自分にもプラスになるので、すごくやり甲斐を感じました」

中学までを青森で過ごした中村は、子どものころにプロの試合を見たり選手と触れ合う経験をしていない。小学生のころは中学生、中学生のころは高校生、常に一つ上のカテゴリーのプレーヤーと手合わせすることで研鑽を積んできたと振り返る中村は、プロとの交流は子どもに一足飛びの刺激を与えるのではと話した。

「小学校の時にプロの選手と触れ合う機会なんてなかったので、すごく貴重な時間だと思います。これからもこういう機会があればどんどん協力していきたいですし、子どもたちからもどんどん質問してもらいたい。今回はあまりなかったですが、もし一緒にプレーすることがあったらどんどん僕に挑戦してきてほしいです」

ハピネスボール

街のバスケットボール価値を高めるために

イベントの主催を務めた野崎は現在も平塚に住まい、地域の子どもたちに指導を続けている。横浜や川崎などの大きな街と比べると高いレベルに触れる機会が限られるという平塚の子どもたちの成長の手助けをしたい、この街のバスケットボールの価値を高めたい、という思いもこのイベントには込められていると話した。

「楽しくてスキルアップにつながる練習に取り組んで、『楽しみながらでもうまくなれるんだ』と感じてもらえたらうれしいし、来年はもっと規模を大きくしたり、内容をよりブラッシュアップしていきたい。地域のみなさんに少しずつこの活動を知っていただけるよう頑張っていきたいです」