マサイ・ウジリ

後任が決まるまではウェブスターGMが暫定で球団運営に

ラプターズ球団社長のマサイ・ウジリは契約満了とともに退任する。NBAドラフトでは1巡目9位で指名したコリン・マレー・ボイルズと笑顔で会話を交わす姿が見られたが、すでに退任は決まっていた。自分主導で進めてきたドラフトを見届けてから去るのが彼の望みだった。

ウジリはイングランド生まれナイジェリア育ちのナイジェリア人で、ヨーロッパで短いプロキャリアを送り、引退後にNBAチームの国際スカウトとして働き始めた。それと並行して、NBAによるアフリカでのバスケ普及活動『国境なきバスケットボール』の立ち上げに尽力。この活動から多くのアフリカ人選手がNBAにやって来て、その最大の成功例は彼が見いだしてラプターズに加入させ、2019年のNBA優勝に大きな貢献を果たしたパスカル・シアカムだ。

2008年にラプターズのアシスタントGM、2010年にナゲッツのGM兼球団副社長となり、2013年からラプターズのGMを務めて、カンファレンスファイナルに進出した2016年には球団社長へと昇格。そして2019年にヤングコアにカワイ・レナードを加えたチームで球団初優勝を実現させた。『We The North』と呼ばれるこの時代、ラプターズは成績面だけでなく球団運営でも素晴らしい成果を残し、その中心にいたのがウジリだった。

もっとも、この2019年がチームのピークで、カワイは1年限りで退団し、優勝に貢献したメンバーが抜けるにつれて成績は落ちた。直近の5シーズンでプレーオフ進出は1度だけで、その時もファーストラウンドで敗退している。そして今、ラプターズを保有するMLSE社のオーナーが変わろうとしているタイミングで、ウジリの立場も不安定になっていた。

MLSEのキース・ペリーCEOは「ロスターが整い、コーチングスタッフもフロントスタッフも安定している。変化は決して容易ではないが、今こそ変化の時だ」と語る。ウジリがラプターズの基盤整備に大きな貢献をしたと称えると同時に、「この変化がラプターズの再建を加速する」と続けた。

しばらくはボビー・ウェブスターGMがクラブの運営を牽引するが、ペリーCEOはこれから新たな球団社長を探すことを明かし、こう語った。「埋めるべき穴は大きい。著名で成功したビジネスリーダーが求められる」

本来であればウジリの退任とともに後任が発表されるべきだが、そうはならなかった。おそらくウジリは新たな契約を提示されていたが、その条件に納得しなかったか、オーナーグループが提示するラプターズの新たな方向性に納得しなかったのだろう。長きに渡り球団を率いて、ラプターズをNBA屈指の強豪へと引き上げたウジリを失った影響は相当に大きいはずだ。