NBAファイナル進出まであと2勝、敗退から3日で解任
ペイサーズとのカンファレンスファイナルで敗れた後、ニックスの指揮官トム・シボドーは「全員が素晴らしいシーズンを過ごしてくれた。彼らに祝福を」と語った。
その3日後の現地6月3日、シボドーは解任され、5年間にわたる政権は終わりを迎えた。ニックスのレオン・ローズ球団社長は「我々はファンのために優勝を勝ち取るべく全力を尽くしている。この目標を追い求める中で、トム・シボドーと離れるという難しい決断に至った。トムがニックスのヘッドコーチとして日々全力を尽くしてくれたことに感謝している。彼は常にニックス・ファミリーの一員であり、彼の未来に心からの祝福を送る」
2020年春、21勝45敗と低迷するニックスは、コロナ禍での『バブル』でのリーグ再開から弾き出された8チームのうちの一つだった。この年にニックスの球団社長に就任したローズは、現場から1年以上離れていたシボドーの招聘を決めた。
デイビッド・フィズデイル解任後、マイク・ミラーを暫定指揮官とした当時のニックスは若いタレントが揃っていたが、勝つために必要な規律を欠いていただけに、選手に厳しく、長時間の練習を課す『闘将』シボドーが必要とされたのだ。その手法は時代遅れとされ、若手とコミュニケーション不足や主力選手を酷使しすぎることへの批判はあったが、ニックスはシボドーの熱量に引っ張られ、そしてレオン・ローズ球団社長との二人三脚の補強も功を奏し、名門再興への歩みを進めていった。
それまで7年連続でプレーオフを逃していたニックスは、シボドーの5年間で4回プレーオフに進出しており、直近の3シーズンではカンファレンスセミファイナル2回、そして今回は2000年以来のカンファレンスファイナル進出を果たした。
ニックスは完璧なチームではなかったが、タフに粘り強くプレーする、規律の取れた『戦う集団』になった。マーベリックスではルカ・ドンチッチの控えだったジェイレン・ブランソンは、シボドーとアシスタントコーチである父の下で大きく成長して、クラッチプレーヤー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた勝負強さを生かしてチームに勝利をもたらした。チームの精神的支柱であるブランソンとジョシュ・ハートは、シボドーに絶対的な忠誠を誓っていた。
敗退が決まった後、ブランソンはシボドー続投の是非を問われて「その質問は必要なのか?」と怒気を発し、「彼が指揮官として適切なのか、それを僕に問うならいつも『イエス』と答える」と一蹴している。
シボドーは最後の会見で、こうも語っていた。「目標を達成できなかったのは残念だが、それをモチベーションにしてオフを過ごし、来シーズンの目標達成を目指す。そうやって昨シーズンより良いチームになれたのだから、続けていくべきだ」
しかし、その挑戦はシボドーではなく、その後任のヘッドコーチの手に委ねられる。