川崎が新体制を発表、『伝統』を受け継ぎつつ『変革』することでリーグ優勝を狙う

2019/05/17
Bリーグ&国内
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北卓也

退任の北卓也がGMに、佐藤賢次がヘッドコーチに昇格

5月17日、川崎ブレイブサンダースが北卓也ヘッドコーチの退任と、アシスタントから昇格する佐藤賢次新ヘッドコーチの就任会見が行われた。また、新設されたGM職に北の就任が発表されている。

まず北は、ヘッドコーチ職を退く決意を固めたのは、レギュラーシーズンのホーム最終節4月13日の新潟アルビレックス戦に敗れ、地区優勝を逃すことが確定した時と明かした。翌日も試合があったが、その日の夜に代表取締役社長の元沢伸夫にメールを送った。「目標としていた中地区優勝を逃したことで、自分から代わった方がいいと思いました。もし、チャンピオンシップで優勝しても辞めていました」

そして、元沢は北のGM就任の経緯を次のように振り返る。「1年間代表としてやらせていただいて、あらためてヘッドコーチをサポートしてあげられる存在、中長期的にクラブ経営を考えた上でチーム編成をできるGMの存在が必要と痛感しました。ヘッドコーチ退任後、何度も強く就任のお願いをして最終的に快諾をしていただいた経緯があります。これまで川崎ブレイブサンダースでGMに就いた人はいないので、初代のGMは北さんしかいない。選手、ヘッドコーチ、そして今後はGMとしてこのクラブを日本一にしてほしいです」

また、元沢は佐藤を新指揮官に選んだ理由をこう語る。「次のシーズン、70周年を迎える歴史あるクラブで、素晴らしいところは引き継いでいくつもりですが、それだけでは優勝することはできない。歴史を継承しながら大きく変革するのは言うが易しで、大変に難しいミッションですが、賢次さんならやってくれる。賢次さんは自分の頭で徹底的に考えることができる力、伝達する力、何よりもこのクラブを変革しようとする熱意を高いレベルで兼ね備えた人物です」

北卓也

北GM「先発が下がっても戦力が落ちないように」

北GMは、巻き返しを図る来シーズンに向け、「日本人選手に関しては、やはり控え選手の攻撃力が他チームに比べて弱かったです。誰が出ても得点が取れる。先発が下がっても戦力が落ちないようにしないといけない」と、日本人の即戦力をまずは狙うという。

外国籍については、「ウチはニック(ファジーカス)がいるので、ニックと共存することができる、彼にないものを補える選手が必要と思います」と、ファジーカスとの相性を重視する。

また、常勝軍団の復権という大きな役割を担う佐藤は、「『伝統』と『変革』。この2つを同時にどうやっていくのかが最初の仕事だと思っています」と、2つのキーワードを挙げ、自らの任務を語った。『変革』は、メンバーが確定してから作り上げていくものとなるが、来シーズンで70周年となる『伝統』については、以下の3つを継承すべきものと強調した。

「我々のルーツは企業スポーツです。そこでは従業員の士気高揚、職場の一体感の醸成を目的にしてきました。そういうDNAが絶対にチームの中にあります。この一体感の醸成、東芝時代は会社という枠でしたけど、今はそこから飛び出て川崎市、日本全国のファンへと広がっています。その遺伝子から生まれたのが篠山竜青で、みんなを巻き込むのが本当に得意です。今、当たり前のようにブレサンファミリーと言っていますが、ファンの方も含めてファミリーと言っているのは他にそうない。そういうところはずっと大事にしないといけない」

「2つ目として、いろいろな意見があると思いますが、東芝時代からずっと同じメンバーで戦ってきました。その中で阿吽の呼吸が生まれます。北さんの現役時代、当時、節政(貴弘)さん、折腹(祐樹)さんと日本代表のトリオがいました。試合の途中、節政さんはいきなりノールックパスを出したりしていましたが、でもそれを平気で取れてしまう。この連携は長くやっていないと生まれない。メンバーが変わらないデメリットもありますが、そういうプレーを作り上げられるのがウチ強みで、選手を入れ替えてもそこは引き継がなければいけない。ただ、それだけで優勝できるほど甘くはないです」

「3つ目は環境です。練習環境、選手をサポートする環境は東芝時代からDeNAに変わっても、本当にやりやすいものです。みなさんに見に来てもらって、広めてもらって、他のチームに真似してもらいたい。そうすれば日本のバスケットボールのレベルも上がる。それくらい環境は整っています。これを生かして強化につなげることを1から考え直していきます」

佐藤賢次

人情味の強い人事、これが川崎の選択した道

川崎はNBL最後のシーズンで優勝し、Bリーグ初年度には、レギュラーシーズンでリーグ最高勝率を残して、ファイナルに進出した。だが、ここ2シーズンは連続でチャンピオンシップには出場するも、クォーターファイナルで敗退するなど、右肩下がりと言わざるを得ない。だからこそ、栃木ブレックスに2試合続けて大差で敗れ、シーズン終了となった後、大幅なチーム刷新を行うべきという声も出ていた。

しかし、実際は外国籍選手こそ入れ替えを行うが、帰化選手のファジーカスを含めた日本人選手はほぼ変わらない。また、ヘッドコーチとGMの人事を見ても、基本的には継続路線だ。この選択の是非はそれこそ来シーズン終了にならないと分からないが、現時点でもっと刷新を行うべきと懐疑的な見方があってもおかしくない。ただ、これは1年前、DeNAが新たな運営母体となった中、チーム名にチームカラーなど東芝の流れを基本的に踏襲する形でクラブ経営をスタートした経緯を考えれば極めて妥当だ。

また今シーズンの川崎は、DeNAとなったことで顧客サービスや演出などがグレードアップし、大きく集客を伸ばした。もちろん、理由はそれだけではなく、東芝の下で派手さはなかったかもしれないが、地道にファンと真摯に向き合ってきた積み重ねがあったからこそだ。佐藤ヘッドコーチが語る、一体感の醸成という東芝時代からの70年に渡って培ってきたレガシーは、バスケットボール部門だけでなく、ビシネスオペレーション部門においても川崎の紡いでいくべき伝統だ。

楽しい時だけでなく、辛い時も一緒に過ごして乗り越えていくのがファミリーだ。ケジメとして北は指揮官から退いたが、北をずっと支えてきた佐藤がその座を引き継ぐ。何よりも結果が問われがちなドライなプロスポーツの世界において、今回の川崎の選択は人情味が強い。だが、これこそが川崎だ。この貴重な伝統を守っていくためにも、佐藤新ヘッドコーチの下、来シーズンの川崎はより結果が求められる。