「颯がビッグショットを決めてくれて流れが来ました」
5月25日、Bリーグファイナルのゲーム2が行われ、琉球ゴールデンキングスが87-75で宇都宮ブレックスに勝利。1勝1敗となり、優勝の行方は明後日のゲーム3に持ち込まれた。
立ち上がり、琉球はゲーム1で25得点を挙げた宇都宮のD.J・ニュービルを再び止められず、第1クォーターだけでいきなり10点を奪われる。さらに宇都宮の激しいプレッシャーディフェンスに苦しんでタフショットが続き、得意のインサイドでも主導権を握れない。そして宇都宮に活発なボールムーブからズレを作られるなど、攻守に良いところなく0-15のビッグランをくらい、第2クォーター中盤には14点の大量ビハインドを負ってしまう。
ここで琉球は守備で踏ん張って前半を1桁のビハインドで終え、後半のスタートから帰化枠のアレックス・カークと外国籍2人を同時起用するビッグラインナップではなく、日本人選手3名によるスモールラインナップを採用。ニュービルのマークを前半のヴィック・ローからフィジカルに優れた松脇圭志に変更し、その松脇がニュービルの勢いを止める。
こうして守備で流れをつかんだ琉球は堅守速攻によってイージーシュートの機会を作り出す。第3クォーターでフィールドゴール19本中12本成功と高確率で沈め、自分たちのペースに持ち込んだ。第4クォーターに入っても勢いは止まらず。圧巻のオフェンスリバウンドでゴール下を支配することで得点を積み重ね、見事な逆転勝利をおさめた。
琉球の桶谷大ヘッドコーチは「出だしでかなりフラストレーションが溜まるゲームで、その中で選手が冷静に対処しながら1桁で前半を終われたことが大きかった」と試合を振り返る。
この1桁に折り返す立役者となったのが、前半最後のプレーで3ポイントシュートを決めた荒川颯だ。さらに指揮官が「颯がビッグショットを決めてくれて、流れが一気にこちらに来ました」と絶賛したように、第4クォーターにも荒川は値千金の連続3ポイントシュート成功で、琉球に大きな流れをもたらした。
「自分自身を信じて、今までやってきたことをやる」
最終的に荒川は、17分19秒の出場で3ポイントシュート5本中3本成功の13得点を記録。チームを救った荒川は、「昨日の反省点として、シュートチャンスが来るのを待ってしまったところがありました。今日は強気で自分でチャンスをつかみ取れるように最初から準備をしていました。その部分が出たのかと思います」と振り返る。
レギュラーシーズン終盤の3月中旬から4月にかけ琉球は破竹の16連勝を挙げたが、荒川はこの間、8試合で2桁得点を挙げるなど貴重な得点源となっていた。しかし、チャンピオンシップに入ると、この勢いを持続できず。この試合の前まで6試合で計9得点、3ポイントシュートは16本中2本成功とスランプに陥っていた。
だが、それでも桶谷ヘッドコーチは、荒川の起用をためらわず、その信頼に荒川は崖っぷちで応えた。「自分のリズムがつかめない状態もありました」と荒川は苦悩したこともあったと明かすが、「シュートを打つマインドで試合に臨んでいれば自分のタイミング、自分の打ちたいシュートが打てると仲間を信じていました。そして自分が決めるんだという気持ちを忘れずに打ち続けました」とスランプを打破した。
また、次のような発想の転換をすることでも、ポジティブな気持ちを持ち続けた。「本当にどうやったらポジティブに考えられるのか試行錯誤しました。その中で、今まで入っていなかったからこそ、相手のディフェンスもノンシューターとして『あいつはシュートがないから』という扱いになる。そういったところがすべて繋がって今日の結果になった。自分自身を信じて今までやってきたことをやるメンタリティで臨みました」
琉球の『苦労人』と言えば、今シーズン途中にB3の横浜エクセレンスから加入した平良彰吾が取り上げられるが、荒川も琉球に加入する前はB2を含め数々のチームを渡り歩くジャーニーマンで、居場所を確立できない苦しい時期を経験してきた。それでも「絶対に上の舞台で戦えると自分を信じてやるべきことをやってきました」と環境を言い訳にせず、ハードワークを続けてきた。
自分の可能性を信じ、続けてきた努力が間違っていなかったことを大舞台で証明した。その荒川にとってキャリアベストと言える試合だったが、彼はまだ満足していない。ゲーム3で敗れ優勝を逃した昨年の雪辱を果たすべく、「去年、足りなかったあと1勝をつかみ取りにいきたい」と、視線は明後日の最終決戦へと向けられている。