ニックス

『主力5人で戦う』を前提で作られたチームの危機

ニックスはカンファレンスファイナルの最初の2試合で連敗した。ペイサーズの得意とするハイテンポな展開に巻き込まれて走らされ、終盤には息切れして本来のクラッチ力を発揮できない。初戦は残り3分で14点リードを追い付かれて延長で敗れ、第2戦は残り1分で1ポゼッション差と肉薄するも追い付けなかった

課題は数多く挙げられるが、指揮官トム・シボドーの選手起用に問題があるのは明らかだ。シボドーは特定の主力メンバーに全幅の信頼を寄せ、プレータイムが偏ることを気にしない。シボドーが信頼を寄せるスターターは、ジェイレン・ブランソン、ミケル・ブリッジズ、OG・アヌノビー、ジョシュ・ハート、カール・アンソニー・タウンズの5人。しかし、今このラインナップは機能していない。

まずはタウンズで、守備の名手であるアヌノビーやブリッジズを避けつつ、ピック&ロールでスイッチを強制し、タイリース・ハリバートンがタウンズとの1対1を狙ってくるペイサーズの攻めに対応できていない。ディフェンスで引き出され、執拗に狙われることで、オフェンスのリズムも崩している。もう一人はハートで、彼の強度の高いディフェンスは1対1よりもゴール下へのヘルプに強みがあるのだが、今は3ポイントシュートを多投するペイサーズの攻めへの対応に苦しんでいる。

それでも今回のプレーオフでは、センターのミッチェル・ロビンソンとガードのマイルズ・マクブライドが絶好調だ。控えセンターのロビンソンは、フットワーク良く広いエリアをカバーでき、リバウンドでも圧倒的な強さを見せている。マクブライドは、外のシュートを打たせない1対1の粘り強いディフェンスで、ハートにできない仕事を果たしている。この2人の好調は好材料ではあるのだが、柔軟な選手起用ができないことで、チームのパフォーマンスに繋がっていない。

主力が1人、2人と本来のリズムを見失うことで、チームのバランスは崩れる。特にディフェンスでコミュニケーションミスが頻発し、ペイサーズのスピーディーなバスケに対応できていない。それをラインナップの多様性で対処できないのはシボドーの不手際と言うべきだろう。

ブランソン「精神力、集中力が試されている」

しかし、ニックスはメインの5人で戦う前提で、その強みを最大限に発揮できるように調整されてきたチームであり、ここに来てそのバランスを変えるのは難しい。特にロビンソンはケガが多く、レギュラーシーズンも3月以降しかプレーしていない。ロビンソンを含むラインナップの経験が足りず、彼がキャリア最高のパフォーマンスを発揮していても、それをチームとして活用できていない。

第2戦の第4クォーター残り9分の場面で、シボドーはタウンズを下げて、残り2分半までベンチに座らせた。ハートも第3クォーター残り2分から第4クォーター残り5分半までベンチだった。ファウルトラブルでもないのに2人のプレータイムが28分、29分だったのは、シボドーにとっては異例の選手起用だ。しかし、これも功を奏さずにチームは連敗した。

オールNBAのサードチームに選出された当日の試合で屈辱を味わったタウンズは、「劣勢に立たされている。これ以上やられるわけにはいかない」と悔しさをにじませる。ただ、現時点でニックスの選手たちに解決策があるわけではない。ハートは「解決策はこれだと言えたらいいんだけど、分からない。今は自分たちで墓穴を掘っている感じだ。すべてを見直さなければ」と語る。

ここまでの0勝2敗は、ニックスとペイサーズの力関係をそのまま表すものではなく、ペイサーズの強みとニックスの弱みがガッチリと噛み合ってしまった結果と言うべきだろう。ただ、それも勝負のうちで、ニックスは早急に対抗策を見いださなければならない。

ブランソンはこう言った。「カンファレンスファイナルを戦っているのに言い訳はできない。重要な試合が1日おきにある。精神力、集中力が試されている」