アーロン・ネスミス

ニックスをガス欠に追い込み、最大17点差から逆転勝利

ペイサーズはニックスとのカンファレンスファイナル初戦で奇跡的な逆転勝利を収めた。ジェイレン・ブランソンがファウルトラブルで第4クォーターの前半のうち5分間をベンチで過ごす間に6-17のランを浴び、残り5分で休養十分のブランソンがコートに戻って来た時には98-111と13点差。しかし、ここからペイサーズの猛反撃が始まった。

この試合の勝利は、第4クォーターの最後にタイリース・ハリバートンが決めた同点シュートのシーンで人々に記憶されるだろうが、それは『ケーキの上のイチゴ』に過ぎず、ペイサーズの全員が走るスピーディーなバスケという土台があってこその勝利だった。第4クォーターのラスト5分、特筆すべき働きを見せたのは守備ではベン・シェパードであり、攻撃ではアーロン・ネスミスだった。

2年目のシェパードは出場機会に恵まれず、特にプレーオフではファーストラウンド最初の2試合は出番がなく、その後も出場機会は安定しない。しかし、この試合で劣勢を覆すにはハイペースを維持し、疲れの色を見せ始めたニックスをガス欠に追い込む必要があった。ペイサーズの主力も余裕があるわけではない。ニックスで唯一スタミナを残していたブランソンのマークがシェパードの役割。タレント力の差は大きく、ブランソンのアタックを止められたわけではないが、やる気十分で出て来たブランソンに執拗に貼り付くことで、少なくとも快適にはプレーさせず、それが少しずつニックスのリズムを狂わせた。

ここまでのプレーオフで、彼はバックスのデイミアン・リラード相手に同じ役割でプレーしている。血栓症から復帰してやる気に満ちていたリラードに貼り付き、リズムを乱すのが彼の仕事だった。そして今回も、7分だけの出場で彼は自分の役割を最大限のエネルギーでこなした。フィールドゴール1本放って成功なし、アシスト1とスタッツは全く目立たないが、彼の奮戦は試合の流れを変える一つのきっかけとなった。

『ゾーン』に入ったネスミス「投げれば全部入る感じ」

一方でド派手なスタッツを残したのはネスミスだ。この試合でフィールドゴール13本中9本成功、3ポイントシュートは9本中8本を決めて30得点を記録したが、そのうち20得点は第4クォーターに、しかもラスト5分間で記録したもの。きれいに崩したシーンはほとんどない。時間がない中で追い付くために、ショットクロックをかなり残していても、打てるシチュエーションであればすべて打つのがペイサーズの作戦で、それを打つだけでなく決めていったのがネスミスだった。

ステフィン・カリーばりのミラクルショット連発で、ニックスファンで埋まったマディソン・スクエア・ガーデンを何度も沈黙させたネスミスだが、試合後の会見では落ち着いた口調で「チームが必要としていたことをやっただけ」と話す。

「いわゆる『ゾーン』に入っていたと思うけど、試合中は気付いていなかった。今思い返せば信じられない感覚だった。バスケットが海のように広くて、ボールを投げれば全部入る感じで、最高に楽しかった。でも正直に言うと、最後の3分間のことはあまり覚えていない。ルーズボールやボックスアウトで必死に戦い、シュートを決め、勝つためにできることすべてをやっていた」

敵地での初戦で鮮やかな逆転勝ち。これ以上ない最高のスタートとなったが、ネスミスに油断はない。「1-0でリードできたのは良いけど、たった1試合のことだ。2戦目に向けて改善すべき点は多い。ブランソンに43得点、KAT(カール・アンソニー・タウンズ)に35得点も取られているんだ。彼らをもっと厳しい状況に置かなきゃいけない。今日みたいな苦しい試合をやっちゃいけないんだ。負けたつもりで必死になって改善する」

今回のプレーオフ、ペイサーズは相手がバックスでもキャバリアーズでも大逆転勝利を挙げている。劣勢でもあきらめず、自分たちのスタイルを信じて走り続けることで劣勢を覆す力はあるが、ネスミスが考えるのは『終盤の逆転劇』に頼らず勝ち切る試合運びだ。

「正直に言えば、今のチームはかなり良い状態だと思う。初めてのカンファレンスファイナルではないし、自信はある。でも、まだ1試合が終わっただけと考えたい。あと3つ勝つんだ」