パット・ライリー

バトラー問題は「もう終わったこと。彼の幸運を祈る」

ヒートのパット・ライリー球団社長は、シーズンの最後に記者会見を行うのが恒例となっている。ジミー・バトラーとともに成功を収めたヒートの『終わりの始まり』は、1年前のこの会見だった。「自分が出ていればセルティックスに勝てた」というバトラーの発言に対し、ライリーは「コートに立てないなら、他のチームを批判するな」と苦言を呈した。契約問題を抱えていた両者の関係はここからこじれ、バトラーはチームを散々に振り回した末にウォリアーズに移籍した。

バトラーを失ったヒートは勝利への意欲とクラッチタイムの勝負強さを欠き、プレーインを経てプレーオフ進出を果たすも、キャバリアーズにスウィープ負けを喫した。

ライリーがバトラーについて何を語るかが注目された会見で、彼は「ジミーに起きたことがチームに大きな影響を与えたのは疑いようのない事実だ。その責任は私にある」と話し、その5年半の良い思い出を繰り返し語った。「ジミーとの騒動はひどいものだったが、私が彼を評価していなかった、愛していなかったという誤解が広まることは望んでいない。彼は命懸けでプレーしてくれた」

それでも、契約を更新しないという決断は正しかったとライリーは考えている。「契約延長を断ったことを謝るつもりはない。もう終わったことだ。彼は移籍した。彼の幸運を祈っているし、彼もまた心の奥底で私たちの幸せを願っていてほしいと思っている。

そしてライリーは「変化が必要なのは間違いない。勝てないなら勝てるような変化を加えるまでだ」と、新たに強力なチームを作る意欲を見せた。

「変化は1年ではできないし、1人の選手がチームを変えてくれるわけでもない」と、再建には時間がかかると前置きしながらも、「長いプロセスに取り組むつもりはない。それはオーナーも同様の考えだ」と語る。

80歳でも意欲は衰えず「また強いチームを作り上げる」

「私は29年間で13回の再建をやったが、すべてを壊してやり直すことを13回やったわけではない。我々は相手にリスペクトされるチームをすぐに作り上げてきた。プレーオフ進出は24回、ファイナル進出が7回、優勝3回。これは自慢ではなく事実だ」

「タンクは2回やったが、どちらもタンクするとは言わなかった。何もないところから始めるわけじゃない。今は有望な若手と伸び盛りの中堅がいて、全盛期を迎える選手もいる。指名権の状況も以前より良い。今オフはこの柔軟性を生かすんだ。これまでの実績が示す通りに、我々はまた強いチームを作り上げるんだ」

ライリーは今年80歳になった。『バトラー問題』に上手く対処できず、チームが行き詰まったことで、彼への批判が高まったことも事実だが、彼はヒートの『ボス』としての自分の立場を変えるつもりはない。「80歳は新しい60歳だ。体調に問題はないし闘争心も旺盛で、勝負の世界に身を置くのが好きだ」と彼は笑う。

「アイルランド系の特性でもあるし、異常なまでの負けず嫌いだから、物事が上手くいかないとひどく落ち込む。プレーオフの第3戦と第4戦の負けっぷりで鬱になったよ。しかしオーナーは『戦い続けよう』と言ってくれた。だから私はまた強いチームを作るために努力する」

「世間ではヒートがいかにひどい状況にあるかが語られているが、我々はそう思っていない。プレーオフを見てみろ。20点差から逆転する試合の連続だ。NBAではオフェンスもディフェンスも分析と改善を続けなければならない。だが、それで物事は変えられる」