ジミー・バトラー

「チームを勝たせてみんなをハッピーにしたい」

ジミー・バトラーはNBAで14回目のシーズンをスタートさせる。去年のシーズン始動は髪をストレートにして横に長し、眉にピアスをする『エモ・ジミー』で迎え、その1年前はドレッドヘアだった。今回、彼はいつも通りの格好で現れ、「おふざけはなしだ」と言った。

バトラーとヒートは2021年夏に3年1億4600万ドル(約220億円)の契約を結んだ。2023年から発効したその契約は今シーズンが2年目で、3年目はプレーヤーオプション。バトラーは今オフに契約延長を望んでいたと言われるが、ヒートのボスであるパット・ライリー球団社長はこれに応じず、「毎試合必ずコートに立ってプレーする選手でない限り、それだけの投資は厳しい」とコメントした。

NBAの球団幹部がスタープレーヤーのプライドを傷付けるような発言をすることは滅多にない。だがライリーは今回、バトラーを奮い立たせるためにこの言葉を発し、バトラーはそれに応えた。オフの間に発言する機会もあっただろうが口をつぐみ、シーズン始動のタイミングで自分の気持ちを明らかにした。

契約延長がない限りは契約最終年を破棄して来夏にフリーエージェントとなるのか──。その質問にバトラーは「分からない」と答えた。「今は今であり、僕はこの瞬間を生きている。今はここにいることができてうれしいし、これからバスケをして試合に勝ち、さらに上を目指していく」

ライリーの姿勢に彼は腹を立ててはいない。「契約を延長すると言ってもたった2ドルか3ドルの話だ」と不敵に笑う。「お金なら十分に稼いできた。僕はただバスケをしたい。パットが言ったように毎試合プレーできる状態でありたい。実際そうするつもりだし、チームをたくさん勝たせてみんなをハッピーにしたいんだ」

このオフにバトラーは35歳となった。ヒートの在籍は6シーズン目を迎えるが、その間に少しずつ年齢を重ね、無理が利かなくなっている。昨シーズンはついに彼がケガをしたことでプレーオフでの躍進がストップした。ヒートは各ポジションに戦力が揃っているが、やはり勝負どころで違いを見せる『プレーオフ・ジミー』は必要だ。その力が35歳になっても衰えていないことを示す必要がある。

「自分が勝利のために重要な存在であることを証明するつもりだ。これまでにやってきたことだし、今までと変わりないよ」とバトラーは言う。

ヒートはバトラーが加入してからの5年間、2度のNBAファイナル進出を含めて良い時期にあった。それでも今はセルティックスが優勝し、セブンティシクサーズとニックスが大型補強に成功しており、東カンファレンスのレベルが急速に上がる中で、ヒートは相対的に戦力が落ちているとの見方もある。

「新しいシーズンに向けて準備をするのは良いことさ。それは僕たちもやっている」とバトラーは語る。「カレンダーの日付にチェックを入れてその時を待っているよ。そこで自分たちの力を試すんだ」

セルティックス、セブンティシクサーズ、ニックス。話題を集めるこれらのチームとの対戦でバトラーは奮い立ち、いつも以上のパフォーマンスを発揮するだろう。ライバルをねじ伏せて周囲の疑念を払拭し、自分の得たいものを得る。それが彼のやり方だ。