
主力不在のレギュラーシーズン最終戦で43得点の活躍
現地4月13日、バックスはレギュラーシーズン最後のピストンズ戦に140-133で勝利した。開幕から2勝8敗と最悪の立ち上がりとなったシーズンだったが、最後は8連勝で締めた。
すでに第5シードでのプレーオフ進出が確定しており、ピストンズも同じ状況だったために、バックスはヤニス・アデトクンボやブルック・ロペス、ピストンズはケイド・カニングハムをはじめ主力を休養させた。カイル・クーズマは先発出場したが、彼がプレーしたのは第1クォーターのみ。そこで22得点を叩き出した後は、ベンチで応援に回った。
それでも、コート上では熱い戦いが繰り広げられ、消化試合で気の抜けたプレーをある程度予想していたファンは驚いただろう。中でもパット・カナートンの気迫は素晴らしかった。主力不在の状況でリーダーシップを発揮し、攻めのファーストオプションとして大活躍。44分のプレーで43得点11リバウンド5アシスト2スティールと、シーズン最高のパフォーマンスを見せた。
とはいえ、ここまでのカナートンはパッとしなかった。様々なポジションと仕事をこなせる経験豊富な選手だが、指揮官ドック・リバースからは『強力な武器のない選手』と見なされ、チーム在籍が長く、前回の優勝に貢献したベテランとしてのリスペクトは忘れなかったが、プレータイムは激減。41試合にしか出場せず、スタメン起用はなかった。
カナートンにとってキャリア10年目は苦しいシーズンとなったが、もともと彼は『主役』を演じる選手ではなく、優勝した2020-21シーズンも優れたサポートキャストとして勝負強さを発揮している。彼はその時と同じように、常に準備を整えてチャンスを待っていた。
それが訪れたのがシーズン82試合目にして初めての先発の機会であり、彼は最高の結果を残した。43得点は、これまで24得点だったキャリアハイを大幅に超える数字で、リバウンドもキャリアハイに1つ届かなかっただけ。そして何より、40得点10リバウンド5アシスト以上を記録したバックスの選手は、過去にカリーム・アブドゥル・ジャバー、アデトクンボ、クリス・ミドルトンしかいなかった。
「連勝でレギュラーシーズンを終えた勢いがプラスに」
「このチームにもう7年もいるから、みんな僕の性格は知っているよね」とカナートンは語る。「スタッツを残せたのはうれしいけど、僕はただ試合に勝ちたかった。オーバータイムで10得点を挙げたけど、第4クォーターで勝っていればもっと良かった。まあ、我ながら良いプレーができたとは思うけどね(笑)」
オーバータイムの5分間、カナートンはルーキーと2年目の若手、NBAでの実績に乏しいジャーニーマン2人と一緒にプレーした。およそNBAらしからぬ顔触れだが、カナートンはそれを喜んだ。「みんなは見たことがないかもしれないけど、練習でずっと一緒に頑張ってきたラインナップであって、この5人で戦えるのは楽しかった。今日は彼らがNBAに見合った選手であるとアピールできたけど、みんな今ごろ『もっとやれたのに!』と悔しがっているだろう」
この活躍があっても、プレーオフが始まればカナートンはベンチに逆戻りだろう。だが、彼は気にしていない。「チームの勝利に貢献したい。そのために一生懸命に努力することが僕の誇りなんだ。NBAでは浮き沈みは付き物さ。プレータイムがない日もあれば、時には43得点する時もある(笑)」
そして彼は今のバックスの状態に自信を持っている。「連勝でレギュラーシーズンを終えた勢いがプラスになる。勝利は勝利を呼ぶものなんだ。僕らは長いシーズンを通して良い習慣を作ってきた。あまり先のことを見るのではなく、目の前の試合を勝ちにいく。今の僕らは優勝候補とは見られていないかもしれないけど、それでいいんだ。ひどいスタートを切ったし、ようやく良くなったところでリラードが離脱した。でも、ピンチは様々な形で必ず訪れる。僕らはそれを乗り越えて、より強いチームになってきたんだ」