「任された以上は、自信を持って打つだけだ」

現地4月9日に行われたウォリアーズvsスパーズは、終盤に入ると両チームともディフェンスがオフェンスを上回り、ターンオーバーからの速攻以外では得点の伸びない展開となった。ジミー・バトラーのポンプフェイクが見抜かれてボールを奪われ、ステフォン・キャッスルがディフェンスの動きを見すぎてパスのタイミングが受け手と合わず、ステフィン・カリーもイージーなパスミスを犯し、そのこぼれ球を拾ったドレイモンド・グリーンまでも不用意なパスをスティールされて速攻を食らう。

ウォリアーズはバトラー獲得のテコ入れが機能して順位を上げており、6位以内に自力で入れるポジションにいた。レギュラーシーズン残り3試合のうち、すでに目標を失っているスパーズとトレイルブレイザーズには当たり前のように勝ち、最終戦のクリッパーズ戦に臨むはずだった。しかし、当たり前のように勝てる試合はNBAに存在しない。

スパーズには、第3クォーター終盤の最大14点のビハインドから追い付いた勢いがあった。ケルドン・ジョンソンが力強いスピンムーブから得点を決めて109-109と追い付いた残り30秒、カリーのインバウンズパスがそのままハリソン・バーンズの手に渡る。信じられないミスからポゼッションを得たスパーズは、キャッスルからジョンソンへのハイローであっさりと逆転に成功した。

残り時間もタイムアウトもないところからグリーンのフリースローで追い付けたのは、ウォリアーズのプレーオフ進出への執念だろう。しかし、スパーズには最後のチャンスが残されていた。ボールを持ったバーンズはバトラーから熾烈なプレッシャーを受けるが、残り3秒では打つしか選択肢がなかった。それでも、身体をひねりながらのフェイダウェイというタフショットが、試合終了のブザーとともにリングの中心を射抜いた。

バーンズがウォリアーズでプレーしていたのはキャリア最初の4シーズン。『王朝』設立に貢献してから月日は流れ、32歳になった今も、彼はタフで賢く、攻守に貢献できるプレーヤーであり続けている。現地4月6日のブレイザーズ戦で彼はNBA300試合連続出場を果たし、今回でその記録は302試合となった。スパーズでの1年目、彼は若手に自分の経験を伝えるメンターとしての役割をこなしつつ、ここまで全試合で先発出場を続けてきた。

「ずっと良いシューターであろうと努力している」

スパーズでの80試合目でゲームウィナーを決めた32歳のベテランは「プレーオフ進出の可能性がなくなった後のプレーは簡単ではない。次に何が待ち受けているのか分からないからだ。でも、試合に出続けて勝利を目指す。それはプライドのためだ」と語る。

タフショットをねじ込んでの決勝ブザービーターをバーンズはこう振り返る。「チャンスを与えられたことに感謝して、とにかく打つしかない。外すこともあれば決めることもあり、僕にはその両方の気持ちが分かる。でも、コーチとチームメートからシュートを任された以上は、自信を持って打つだけだ」

今回のゲームウィナーはタフショットを打たざるを得なかったが、基本的にバーンズはクリーンショットのシチュエーションを作り、そこで自信を持って打つことで結果を残している。NBA13年目の今シーズン、3ポイントシュート成功率43.8%はキャリアハイを大きく更新する数字だ。

「ウォリアーズを相手に決めたのは皮肉なことだけど、2016年のNBAファイナルで僕は上手くやれなかった」とバーンズは過去を振り返る。キャリア4年目の3ポイントシュート成功率はレギュラーシーズンで38.3%と及第点だったものの、プレーオフになると34.2%と数字を落とし、NBAファイナルでは31.0%と絶不調で、3勝1敗からの逆転でレブロン・ジェームズ率いるキャバリアーズに優勝をさらわれた。

「あれからずっと、良いシューターであろうと努力している。当時はまだ練習量も十分じゃなかった。良いシューターになるには、ひたすら練習して、その過程で自信をつけていくしかない。低調な時期もあるけど、努力し続けることだ」

あれから9年、勝負を決める3ポイントシュートがリングに吸い込まれるのを見届けたバーンズは、感慨深い表情を見せた。でもそれは数秒のこと。スパーズのベンチの前にいたバーンズは、あっという間に仲間たちの祝福の輪に飲み込まれた。