米須玲音

「パスかシュートの判断をもっとうまくやれていれば勝ち切れた」

49日、川崎ブレイブサンダースはホームで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。終盤の追い上げで会場を沸かせたが、70-73で敗れた。

川崎は前半、人とボールが共によく動く流動的なオフェンスから確率良くシュートを決めてリードを奪う。だが、前節ファイティングイーグルス名古屋に続き、この日も第3クォーターにミスから崩れ、逆転を許してしまう。

しかし、この日の川崎はここから立て直し、身体を張ったディフェンスで徐々に追い上げる。そして残り8秒、2点差で自分たちのオフェンスと肉薄する。しかしタイムアウト明けのプレー、米須玲音がサイドラインからゴール下のサッシャ・キリヤ・ジョーンズへと放ったロブパスは痛恨のターンオーバーとなった。

ルーキー司令塔の米須は先発出場し、持ち味であるテンポの良いパスさばきで序盤からオフェンスの良いリズムを作り出した。しかし、出場1737秒で3ターンオーバーとミスも目立った。名古屋Dのフリースロー失敗によって生まれた残り4秒からのラストチャンス、決まれば同点となるハーフコート近くからのシュートが外れたあと、米須は悔しさを噛み殺すように両ヒザを床につき、しばらくコートを見つめていた。

米須は試合を振り返る。「最初は自分たちの良いペースで入り、前半をリードして折り返しましたが、自分たちの課題である第3クォーターの入りでどうしても流れに乗ることができずに逆転されてしまいました。第4クォーターの大事な局面で出させてもらいましたが、ガードとしてゲームコントロールがあまりできなかったです。(課題の1つの)ペイントアタックはだいぶできていましたが、そこからのパスかシュートの判断をもっとうまくやれていれば、最後、勝ち切れたと思います」

この日、体調不良で欠場したロネン・ギンズブルグヘッドコーチに変わって指揮をとった勝久ジェフリーアシスタントコーチは、残り8秒からのオフェンスをデザインしたのが自分だと明かし、「注意点をきちんと伝えきれていなかったのは私の責任。玲音は気にしなくていいです」と語った。しかし米須は「最初に狙うのは、サッシャというプレーでした。ただ、ロスコ(・アレン)がノーマークではないですけど空いていました。彼でもよかったんじゃないのか、自分の判断ミスだったと思います」と自身の選択を悔いていた。

米須玲音

篠山の助言で自ら仕掛ける大切さをより意識

言うまでもなく、米須の最大の魅力は卓越した視野の広さを生かしたパス能力だ。自陣から敵陣へと走る味方が一気にシュートへと持ち込めるタッチダウンパスなど、パス1本で局面を変えることができる特別な才能を持っている。しかし、ロングパスは当然のようにミスのリスクも高くなる。このリスクとリターンのバランスについて、米須はこう考えている。

「前半はミスをしてもいいくらいの気持ちで思いっ切り行って流れを作っていこうと思っています。ただ、後半の最後の局面では、ああいったロングパスはリスクも高くなります、第3クォーターで2本くらいサッシャに出してターンオーバーとなり、相手に点数を与えてしまったところもありました。そこはゲームの流れを考えて、もう少し判断できればと思いました」

勝久アシスタントコーチは「玲音のパスのセンス、才能は本当にピカイチだと思っています」と絶賛すると共に、これからの課題について言及する。

「この先、彼が壁に当たるとしたら『パスだけ』を考えた時です。チームに合流した当初は玲音の得意なプレー、何を軸に考えているのかを完全にスカウティングされていませんでした。それが徐々にパスコースを消したり、その場面での最適な判断がシュートという状況を作ってきていると思います。玲音はこれを受けて、自分がシュートを打つことで味方が空く状況を作ることにトライしています」

この試合は自らシュートを打つという点について、これまでと確かな違いが見られた。試合終盤、自らアタックしてプルアップシュートを成功させ、惜しくも外れたがドライブからレイアップにも持ち込んでいる。そこには大先輩の助言があったと明かす。

「前回のFEさんとの試合で、(篠山)竜青さんから『競った終盤に自分でアタックし、シュートが入って勝つこと、外れて負けを経験することも大事』と言われていました。それを今日は体現しようと思っていて、最後の場面でペイントアタックしてキックアウト、ミドルシュート、ドライブからレイアップができました。そこは1つステップアップできたので、あそこで決め切る力をつけて次の段階に行けたらと思います」

米須は得点でも相手に脅威を与えることの大切さを強調する。「今日は最終的に負けてしまいましたが、同じような場面となった時、自分がシュートがあり、周りに託すこともできる選手であれば、相手は守りにくくなります。最終的には自分が決め切ることが大事になってくる。そこを成長できるようにやっていきたいです」

唯一無二の武器であるパスをより生かすためにも、要所で得点を取れる選手に。米須にとってこの敗戦は、より相手にとって怖い選手になるための壁を超えるために必要な経験を積んだ。