「チームとして成長し、一つずつ階段を登っている」
4月6日、アルバルク東京はホームでの千葉ジェッツ戦で75-72と激闘を制し、上位対決で価値ある同一カード連勝を達成した。
A東京はセバスチャン・サイズのゴール下でのアドバンテージを生かして一度は優位に立つも、それを生かそうとするあまり攻めが強引になってリズムを崩し、千葉Jの反撃を許して第4クォーターのオフィシャルタイムアウトを9点ビハインドで迎えることとなった。
しかし、ここから堅守で流れを引き寄せると、残り2分でザック・バランスキーの3ポイントシュートで逆転に成功する。そのまま粘りのディフェンスを継続し、千葉Jの追い上げを振り切った。
17分24秒の出場で3得点3アシスト1スティールとバランスキーのスタッツは目立たないが、唯一の得点が土壇場での逆転弾であり、さらに2点リードで迎えた残り11秒からの千葉Jのオフェンスでは見事はヘルプディフェンスで、クリストファー・スミスのペイントアタックを阻止しており、攻守に十分すぎるほどのインパクトを残した。
「終盤戦となってプレーオフが近づく中、タフゲーム、ビハインドのゲームを勝ち切れたことで、チームとして成長し、一つずつ階段を登っていけると思います」
このように試合を総括するバランスキーは、勝利を確定させた最後のディフェンスをこう振り返る。「スミス選手がマークについていたオサ(小酒部泰暉)を抜いていきましたが、ノースリーが最優先でした。スミス選手は、千葉で一番3ポイントシュートが得意な選手です。オサがしっかり3ポイントを抑えたことでドライブに来たので、僕がヘルプに行けました。スミス選手ならあそこで絶対にパスはしないという読みでした」
「能力がない分、バスケットボールIQで生きてきた」
昨シーズンから3番ポジションにブラジル代表のレオナルド・メインデルが加入したことで、同じポジションのバランスキーのプレータイムは減少しているが、メインデルが欠場した直近の3試合でその穴を埋め、チームの3連勝に貢献している。
バランスキーはコーチのどんな起用法にも応えることを最優先としているが、「選手としてクラッチタイムに出ていることが一番幸せというか、楽しい時間帯です」と語る。「できることならここ一番では常にコートに立ちたいとずっと思っています。最近の活躍でチャンスをつかめて、最後の最後に1本シュートを決めたり、ディフェンスをストップして少しでも勝ちに貢献できたのは良かったです。これをレオが帰ってきても継続していきたいです」
Bリーグ開幕前から所属する生え抜きのバランスキーは在籍11年目のベテランとなった。チームをまとめる立場になったが、「主役になりたい、ここ一番で活躍したい気持ちはプロして誰もが持っているもの。それを失ったらプロとして終わりだと個人的に思っています」と、一選手としての活躍にも強いこだわりを持ち続ける。
そして、一つのミスが命取りとなる緊迫した場面でのプレーに自信を見せる。「こうやってチャンスをもらった時に結果を残して、『困ったら呼んでよ』という感じです(笑)。長年バスケをやってきて、いろいろな状況を経験してきました。能力がない分、バスケットボールIQの高さで生きてきたと思うので、こういう正しい判断がより重要となる場面は嫌いではないです」
この試合のハーフタイムには『赤ちゃんハイハイレース』が行われ、バランスキーの愛娘も参加した。「見ることはできませんでしたが、娘が一歩も動かずに終わったという情報は入りました」と予想外の結末にも笑顔を見せた。「僕たち大人が楽しめて良い思い出となりました。チームとして勝ててうれしいですし、めちゃくちゃ記念になります」と、感慨深い一日となった。
36勝13敗のA東京は地区2位の3チームの中ではトップに立ち、チャンピオンシップをホームで開催するために今回の連勝は大きな意味がある。「60試合が終わらないと、どこの位置にいるのか全く分からないので、そんなに先を見ても仕方ないと思いますが、クォーターファイナルのホーム開催で直接のライバルになってくる千葉Jに2つ勝てたのは大きいです」とバランスキーは語る。
過密日程の中、どのチームもベストメンバーで継続して戦うのは厳しくなっている。ただ、この苦境を乗り越えない限り、頂点に立つことはできない。困った時にチームを救う『仕事人』、バランスキーの本領が発揮された週末となった。