
「恵まれた立場を神に感謝し、毎日を楽しんでいる」
若いチームには勢いがあっても好不調の波が激しく、一度落ち始めるとなかなか立て直せない。抽象的な表現だが戦術の幅が狭く、自分たちの武器が通用しないと次の手をなかなか出せないことが挙げられる。もう一つは選手層の薄さで、重要な選手を欠くことが戦力ダウンに直結してしまうことだ。
ピストンズもこれまでその傾向が強かったが、東カンファレンス6位と躍進する今はそこから抜け出したのかもしれない。現地3月23日、彼らはチームのベストプレーヤーであるケイド・カニングハム、彼のプレーメークを補佐するティム・ハーダウェイJr.も欠場した状況で、ペリカンズに136-130で競り勝った。
彼らに代わって先発したのはデニス・シュルーダーとマリーク・ビーズリー。しかし、ベテランの2人以上にインパクトを残したのが、ベンチから出て26得点6アシストを記録したルーキーのロン・ホランドだった。
昨年の1巡目5位で指名されたホランドだが、プレータイム確保に苦しんだシーズン前半を経て、次第に自分の力を発揮できるようになりつつある。その力がこの試合の勝負どころで爆発した。ペリカンズもザイオン・ウイリアムソンをはじめ主力を複数欠いていたが、試合を通じて3ポイントシュート成功率50.0%とシュートタッチが絶好調。その爆発力で第3クォーターに逆転したのだが、その勢いを止め、ひっくり返したのがホランドだった。
ビーズリーに代わってコートに入った前半はボール回しに徹してアシストを重ねていたが、相手に試合の流れがいったのを見てアタックモードに入る。細身ではあってもコンタクトを恐れず、スピードとスキルを生かして攻めながらも力強いフィニッシュができるのが彼の持ち味。第3クォーター終盤、ホランドがコースト・トゥ・コーストで決めたド迫力のダンクは会場の雰囲気を一変させ、ピストンズが勢いを取り戻すきっかけになった。
93-91と2点リードで迎えた第4クォーターには14得点を荒稼ぎ。打ち合いとなったこのクォーターを43-39で上回り、ペリカンズを撃破している。
キャリア最高の試合を勝利で終えて、ホランドは「最高の気分だよ。僕は全力でプレーし、全力で楽しんでいる。長いシーズンで好不調の波はあるけど、とにかく自分の恵まれた立場を神に感謝し、毎日を楽しんでいる」と語る。
ルーキーの彼にとってはすべての経験が成長の糧で、良いことからも悪いことからも学ぼうとする意欲がある。「今日も帰宅したら映像を見直すつもりだ。ディフェンスはかなり上手くやれたと感じているけど、実際どうだったかを確認しなきゃ。僕らはプレーオフ進出を目指していて、そのための良い習慣を身に着けるのに必要な取り組みだ」
「今日上手くプレーできたのも、これまで取り組んできたことの成果だと思っている」とホランドは言う。「必要に応じて落ち着いて状況を確認し、どこから攻めるべきかを見極める。そして正しい判断を下す。それができるのは、多くの映像を見て学んできたおかげだ。その結果として試合に勝ちたいし、自分のプレーでそれに貢献したい。みんなの信頼に応えたいんだ」
「周囲が僕を信頼してくれることに感謝している。僕はこのチームに来て、自分らしくプレーでき、たくさんの愛情を受けている。これは本当に幸せなことだと思っているよ」