佐々宜央

3年目のBリーグは、優勝を争うチャンピオンシップへと突入した。琉球ゴールデンキングスはクォーターファイナルで名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦。第1戦は完敗を喫したものの、そこから持ち直して連勝でセミファイナル進出を決めた。今週末にはホームにアルバルク東京を迎え撃つ。佐々宜央にとってA東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは日本代表でヘッドコーチとアシスタントコーチの関係にあり、様々なことを学んだ『師匠』でもある。「ルカの弟子として、やっぱり対戦したかった」と気持ちの高ぶりを隠さない佐々は、前年王者A東京に挑む。

「チームとして戦えないと勝てないと痛感できた」

──セミファイナルを振り返ると、GAME1は我慢ができず第1クォーターで崩れる自滅で大敗。そこからGAME2、GAME3は最後まで堅守を貫いて圧勝しました。「やるべきことができればどのチームにも勝てるし、それができなければどのチームにも負けてしまう」。レギュラーシーズン途中から言い続けてきたことが、図らずも証明された印象です。

GAME1は、第1クォーターに一気に名古屋さんに持っていかれました。どんな状況でも耐えるしかないですが、いくら守備で頑張っていてもシュートが入らないとフラストレーションは溜まります。ただ、4点しか入れないのなら17点くらいに抑えないといけない(実際は4-21)。あそこで17点差と13点差では全く違うのに、あそこで心が折れちゃうのかという感じでした。

いつも取材で言わせてもらっていますけど、自分たちの流れはどこかで必ず来るのに、それを待てずにメンタルが切れてしまうのか。そういう思いはありました。GAME3も前半はGAME1と似た展開でしたが、GAME2で勝ったことで選手たちに、「ここで我慢すれば、どこかで流れが来る」という気持ちがあった。そこは物語として繋がったと思います。

──短期決戦の第1戦であれだけの負け方をすると、選手起用や戦術で大きく変えるかどうか、悩んだところかと思います。結果的には変えずに挑み、GAME2で圧勝しました。

GAME2でスタイルを変えるか、変えないかの決断は大きかったです。選手を信じて先発も変えずに挑みましたし、言葉がけもすごく繊細になりました。また、GAME2で大きかったのはアイラが途中、ファウルをコールされた後、怒りを出しかけたのを抑えた場面、結構あの場面に集約されていると思います。

誰かの感情が爆発しかけた時、僕ではなく他の選手たちが駆け寄って抑えることができる。あそこでフル(古川孝敏)と田代(直希)が駆け寄ってくれたのはこのシリーズにおける大きな出来事でした。

GAME1は結局、チームとして戦いきれなかった。でもそこでチームとして戦えないと勝てないことをより痛感できた。アイラは本当に素晴らしいエネルギーの持ち主ですが、少し感情的になってしまう。そこを他の選手が支えて良い形に持っていくのは、チーム力として良かったです。

A東京との激突「完全にアンダードッグです」

──「何とか生き残ることができた」とホッとしているのか、それとも「これでアルバルクとやれる」と気合いが入るのか、心境としてはどちらですか?

両方ありますよ。師匠(ルカ・パヴィチェヴィィッチ)とやれる充実感もあります。生き残ってきたっていう感覚は1月ぐらいからあります。2月の代表戦による中断前、千葉ジェッツとの2試合目に勝って連敗を5で止めた時もなんとか生き残ったという気持ちでした。本当にチャンピオンシップに行けるのか危ないという話をして、そこから一つずつやっていくしかないという気持ちでここまできました。だからこそ、生き残れたことを大事にして、また来週は本当にエネルギーを出してやりたいです。

──レギュラーシーズンではA東京に3勝1敗と勝ち越しており、対等という思いはありますか。

いや、完全にアンダードッグです。まず、ジョシュ・スコットは不在ですし、レギュラーシーズンで戦った時とメンバーが違います。例えば馬場(雄大)のパフォーマンスが象徴的ですけど、アルバルクの選手たちはここにきて一段とギアを上げてきています。今の状況で、ウチの選手たちが「レギュラーシーズンでは勝ち越した」という油断を少しでも持って戦ったら一気に持って行かれます。リーグ中のメンバーとは違うので、自分達の力がA東京に通じるかは今週末の試合でしかわからないと思っています。

東京さんはセミファイナル相手をどこでもいいと考えていたでしょう。ただ、レギュラーシーズンの借りは返さなければいけないと少なからず思っているでしょうし、こちらとしては嫌なモチベーションです。「琉球が相手なら余裕でしょ」と思ってくれた方がいいですけどね(笑)。

佐々宜央

「どれだけハードワークで全力を出しきれるのか」

──師匠のルカと、大一番で対戦できるのは意識しますか?

意識というよりうれしいです、Bリーグ1年目の時に代表で一緒にやっていました。ルカは、今の日本バスケット界に足りないものとして、よく「インテンシティ」、「アグレッシブ」、「ソリッドネス」を口癖のように言っていました。ルカが伝えなければいけないと思っていたことを僕も意識してチームを作り、最後の4つの椅子に残って、彼の作ったチームと対戦できる。そこには充実感、安堵感、楽しみといった様々な感情があります。

だからこそ、この3つのキーワードを彼の目の前で出したいです。何としても勝ちたい気持ちはあります。それとともにルカが自分に伝えてくれたものを、自分がこのチームに伝えられているのか。それが分かるテストとも思っていて、とてもポジティブな気持ちです。

──GAME3の前、ここで勝てばA東京とやれると分かったことで心境に変化はありましたか?

モチベーションが上がりましたね。もちろん、ホームでやれるところも大きいです。そして、いちバスケット人としての自分、ルカの弟子としてはやっぱり対戦したかった。そして、これ以上ない状況だと思います。

──最後にセミファイナルに向けての意気込みをお願いします。

本当にいろいろな感情が湧き出ます。今回もホームで戦えますけど、大半の人は普通にA東京がファイナル行くと見ていると思います。そのアンダードックの状況の中で、勝ちをつかめるのかはコーチとして本当にチャレンジですし、成し遂げたい。

どれだけハードワークで全力を出しきれるのか、そこの気持ちをもう一回作りなおす。ここから新しいシーズンが始まるというメンタリティを持って、GAME1の第1クォーターから最高のエナジーを出さないと行けない。A東京はチャンピオンシップを勝ち上がる術を知っていますし、実際に調子は上がっていす。だからこそ気を引き締めるだけでなく、大胆に戦っていきたいです。