ネッツを経て「2度目はより優れたコーチになれる」

キャバリアーズは現地3月11日のネッツ戦に勝利し、これで今シーズン2度目の15連勝を記録した。ドノバン・ミッチェルが鼠径部の痛みで欠場し、長時間ビハインドを背負ったが、第4クォーターを31-18と圧倒して逆転勝ち。ジャレット・アレンがゴール下を支配してネッツの勢いを止め、ダリアス・ガーランドは第4クォーターだけで18得点を挙げるクラッチ力を発揮した。

これで55勝10敗、勝率84.6%はリーグで断トツの1位だ。残り17試合を今の勝率で乗り切れば14勝か15勝を挙げることになり、NBA史上3番目の70勝達成も可能だが、それは主たる目標ではない。ガーランドは「レギュラーシーズンで多くの勝利を収めてプレーオフに弾みをつけるのは大事だけど、それ以上に健康な状態でプレーオフに臨みたい。今まで健康な状態でプレーオフを戦ったことは一度もない。15人全員が健康で、いつでも自分の仕事ができる状態でありたいんだ」と語る。

いまだプレーオフに向けた長い道のりの途中で、何かを達成したわけではない。しかし、この試合の勝利はヘッドコーチのケニー・アトキンソンにとっては大きな節目だった。バックス、ペイサーズ、ピストンズと好調なチームが並ぶセントラル・ディビジョンでの優勝を決めたのだ。

「若い世代にはピンと来ないかもしれないが、昔気質の私にとってディビジョン優勝は特別なものだ。かつてコービー・ブライアントも言っていたが、練習施設に優勝バナーを掲げたくなるね。私たちはプレーオフという大きな目標を見据えているが、シーズンを振り返った時に今日の勝利は偉業だと思えるはずだ」

「最初にヘッドコーチになった時は、ただ怯えていた」

アトキンソンにとっては古巣ネッツ相手の勝利、シーズン4度の対戦で全勝するスウィープを達成したという意味もある。アトキンソンはネッツで初めてヘッドコーチとして指揮を執るチャンスを与えられたが、行き詰っていたチームを再生させたところで解任された。その後はクリッパーズとウォリアーズでアシスタントコーチから出直し、今シーズンから4年ぶりにヘッドコーチとしてキャブズを率いている。

この日のネッツ戦を控えた取材対応で、アトキンソンは自分のコーチキャリアを振り返り、「ネッツで最初にヘッドコーチになった時は、ただ怯えていた」と話す。それまでニックスとホークスで長くアシスタントコーチを務めていたが、その経験は彼にとっては役に立たなかった。

「アシスタントコーチとヘッドコーチでは役割が違う。アシスタントを何年やっても、ヘッドコーチの経験は積めないんだ。記者会見でメディアと対話し、練習メニューを組み立て、ミーティングを主導する。そのすべてが初めての経験だった。特に1年目は自分が何をやっているのかも分かっていなかった。すべての練習、すべての試合を完璧なものにするために必死だったが、あまりにも余裕がなかった」

アトキンソンは若いタレントを育て、見事な戦術で攻守を機能させてネッツを復活させたが、チームが強くなったことでカイリー・アービングとケビン・デュラントがやって来ると、スター選手を扱う経験がないことでアトキンソンは放逐された。ショックだったのは間違いないが、彼に恨みはない。「2度目はより優れたコーチになれる。私にとってはそれどころではないよ。今の自分自身に満足している」と彼は言う。

クリッパーズではタロン・ルーの下で戦術の多彩さが勝負どころで差を生み出すことを学んだ。ウォリアーズではスティーブ・カーの下でスター選手をどう扱うかを学んだ。そして「2度目はより優れたコーチになれる」という感覚が、彼に揺るぎない自信を与えている。そして今、70勝を狙えるチームを率いる状況をプレッシャーなく受け入れ、自分らしく采配を振るうことができている。

今シーズンここまでの戦いぶりを「危機と呼べるようなことは何もなかった」とアトキンソンは評する。「いくつかの試練が立ちふさがったが、すべて乗り越えてきた。今の勝率は98%くらいかな?(笑) とにかく何度かつまずいたが、乗り越えてきた。我々は経験不足の未熟なチームではない。私はこのチームの精神面の強さに自信を持っているよ」