田渡凌

「ボールが欲しかった、自分で何とかしたかった」

B2プレーオフの準決勝は、B1ライセンスを持つ熊本ヴォルターズと島根スサノオマジックがともに敗れた。B2ファイナルに昇格要件を満たすチームが進出しなかった結果、横浜ビー・コルセアーズのB1残留が決まった。他力本願、しかも直接対決することのない別カテゴリーの結果で残留が転がり込むのは、チーム関係者にとってもさぞかし不思議な感覚だろう。

選手の気持ちを察するに、手放しで喜ぶ気にはなれないだろう。少なくとも27日、勝てば残留決定だったレバンガ北海道とのGAME3を落とした後の選手たちは誰もが沈痛な面持ちだった。

その中でも、特に敗れたことに責任を感じていたのが田渡凌だ。横浜での2年目、レギュラーシーズンは全試合出場、うち54試合で先発出場と存在感を増し、この残留プレーオフでも3試合ともに先発を託された。勝った第1戦と敗れた第2戦ではともに30分前後のプレータイムで15得点とスタッツは残したが、『勝てるポイントガード』でありたいと願う田渡が納得するはずもない。

「やっぱり良い選手、スペシャルな選手というのは、チームが必要な時に活躍するとか、チームを救うとか、そういう存在だと思います。僕はそういう選手になりたいって思いで日本に帰って来て、このチームに入って毎日の練習をやってきました。僕がそこでステップアップして得点に絡んだり、クリエイトしなければいけなかったと反省しているんですけど、そういう時間帯のそういう仕事をコーチにまだ僕は求められていません。そこで『凌のピック&ロールを使って何かやろう』と言ってもらえる選手になっていないのが現状です」

横浜にとっては絶対に勝たなければいけない試合だったし、第2戦も第3戦も横浜のペースで進んだ試合だった。それを2つ落として敗れただけに、田渡の悔いも深い。「ああいう時間帯でボールが欲しかったし、自分でどうにかしたいって気持ちはすごくありました」

「僕が勝手にフォーメーションを書いてやるわけにもいかないのですが、うまく行かない中で自分が何かもっとできたんじゃないか、任せすぎてしまった、という反省があります。僕はもっとアグレッシブに引っ張っていかなきゃいけないし、責任感を持ってプレーしなきゃいけない。もっと何かインパクトをチームに与えられる選手にならなきゃいけないと思います」

田渡凌

「僕に何ができるんだろうと60試合ずっと考えてきた」

それでも、2年目のシーズンで自分が成長していないとは思っていないし、周囲の信頼を全く勝ち取れなかったとも思っていない。「僕個人としては、昨シーズンはなかなか試合に出られず、といっても18分ぐらい出させてもらったんですけど、そういう立場から今シーズンはスタートで使ってもらって、これだけ信頼して試合に出してもらえたのはステップアップでした。その中で得点だったりアシストだったり、チームへの貢献は増えたと思います」

プレータイムは18分から26.1分へ、得点は6.4から9.7へ、アシストは3.0から4.0へ、それでいてプレー精度を示す1ターンオーバーあたりのアシスト数は2.38から2.73と効率が向上している。「でも、僕がいくら点を取っても、いくらアシストしても、いくらディフェンスしても、いくらリバウンドを頑張ってスティールしても、やっぱりチームが勝たなかったらポイントガードのせいなので。そこで僕に何ができるんだろうと60試合ずっと考えてやってきたんですけど、答えが見つからないまま終わりました」

「だから僕はずっと考えます」と田渡は決意を語る。「答えは見つからなかったですが、自分に足りないものがたくさんあるってことなので、そこは負けから学ばなければいけない。負けたら終わりの世界にいるので次、次とは言ってられないですけど、チームをどうやったら勝たせられるのかを学ばなければいけない。それが僕の課題です」

田渡凌

「僕の中で満足できるチームは優勝したチームだけ」

残留争いに巻き込まれ、プレーオフにも敗れて他チームの結果を待つ状況は、厳しいし寂しい。ただ、どんな形であれチームをB1に残すことができれば、それは勝利であり、一定の満足とともにシーズンを終えられるのではないか。そう問いかけると田渡は「違います」と答えた。

「僕の中で満足できるチームは優勝したチームだけです。ましてや僕らは残留の方に行ってしまっているので、満足の『ま』の字もないです。でも、最後に良い形で終わるのは来シーズンに向けても大切なので、もう一回チャンスがあるなら後悔しないように自分らしくプレーしたいと思うし、どうやったら勝てるのかをまた頭の中で考えて、思いっきりプレーします」

結局、その機会は訪れないまま横浜のシーズンは終わった。田渡は不完全燃焼のままオフに入ったが、休んでいる間も常に「どうやったらチームを勝たせられるのか」を考え続けることになるのだろう。来シーズン以降、その成果がどのような形で出てくるのかに注目したい。