立ち上がる熊本のシンボル、半年ぶりの得点で会場総立ち
B2プレーオフ、熊本ヴォルターズと群馬クレインサンダーズの第2戦。初戦を落として負けられない熊本は見事なカムバックを見せ、大量リードで試合は早々に決着していた。それでも4112人を集めた熊本県立総合体育館が一番盛り上がったシーンは、試合終了間際に訪れた。残り2分を切って、小林慎太郎が投入される。地元出身のキャプテンは、開幕から1カ月で左膝前十字靱帯断裂で戦線離脱。今シーズン絶望の大ケガだったはずが、小林はこの日に間に合わせた。
チームは復帰したキャプテンにボールを集め、小林は得意の3ポイントシュートをひたすら放つ。3本外した後の残り15秒、ついに小林の3ポイントシュートが決まると会場は総立ちとなった。
もとよりローカルクラブであるヴォルターズは、2016年4月の熊本地震ではクラブも大きな被害を受けて経営危機にも陥った。それでも何とか立ち直ると、どんな苦難にも折れることなく立ち上がる姿を見せることで、被災地の人々を勇気付ける役割を果たしてきた。その先頭に立ってきた働きぶりを知るからこそ、人々は小林に喝采を送るのだ。
もっとも、アリーナを沸かせた小林が試合後にどうだったかと言えば、ひたすら照れていた。「6カ月ぶりで試合勘がなくなっていて、緊張はしなかったけど恥ずかしかったですね。仲間があれだけパスを回してくれ、会場も『お前、決めろよ』という雰囲気で盛り上がる中、入らなかったらどうしようかと。決めた自分は『持っているな』と思いました(笑)」
それでも、あそこで自分がコートに立って得点を決めることが、チームにとってファンにとってどんな意味があるかは十分すぎるほど理解している。「あの歓声を上げてもらうために、僕たちは毎日毎日、100本でも200本でも300本でもシュートを積み重ねてきています。たまたま僕のシュートですけど、他の選手もその1本を決めるためにどれだけ努力をしているか。それを知っているからこそ、決めることができて良かったです」
自分のいないチームを眺めるのは苦しかったに違いないが、小林はもう完全に切り替えている。「離脱直後は難しそうでしたが、少しずつ成長してリーダーシップが取れるようになり、困難に立ち向かうことができるチームになった。結果的にB1に進むために、自分のケガはチームに必要だったのかもしれない。自分としてはプレーできず悔しい思いをすることが多かったのですが、それも明日勝てばそれがすべて。来週のことはどうでもいいです。明日の1勝のために8カ月を過ごしてきました」
チームを引っ張るはずの自分が、最後の最後に出て来て復帰の得点をお膳立てしてもらったことが、よほど気恥ずかしかったのだろう。小林らしい力強い言葉が出てきたかと思ったが、最後は「まあ、自分が最後のシュートを決めたので雰囲気は最高だと思います」と笑顔で締めた。
お膳立ては整った。あとはシーズンの総決算となる、15時からのGAME3を勝ちきるだけだ。
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