ジョシュ・ギディー

3ポイントシュート好調のギディー、25得点6アシスト

現地2月24日、ブルズは敵地でセブンティシクサーズと対戦した。ここに敗れるとプレーイン・トーナメント進出圏の10位から脱落し、その後は勝利ではなくドラフト指名権の順位を上げるものと見られていた。オフにアレックス・カルーソとデマー・デローザンを放出し、今回のトレードデッドラインではザック・ラビーンを手放すなど、チーム作りの軌道修正を強いられている。

残る唯一のビッグネーム、ニコラ・ブーチェビッチはふくらはぎの痛みで欠場。チーム状況を考えれば、彼が万全でないのにコートに立つ理由はない。さらにジェイレン・スミスは脳震盪プロトコルで、パトリック・ウィリアムズとアヨ・ドスンムもケガで欠場。先発ポイントガードのロンゾ・ボールも、立ち上がりから意欲的なディフェンスといつもの縦に速いプレーメークを見せていたが、頭部から出血するアクシデントで第1クォーター途中でコートを去った。

残された若手がそれぞれの将来のために頑張る試合になるはずだった。ところが、ここからチームは攻守ががっちりと噛み合い、素晴らしいパフォーマンスを披露する。その中心はジョシュ・ギディーだった。

ギディーとコービー・ホワイトの2ガードが積極的にペイントを攻め、シクサーズのディフェンスを収縮させてはワイドオープンのチャンスを作り出す。ロンゾ不在で縦への力強いボールプッシュは消えたが、プレースピードは落ちなかった。

ギディーは31分の出場で25得点16リバウンド6アシストを記録。強靭なフィジカルとスピード、非凡なパスセンスを備えた大型ガードではあるがシュートは得意ではなく、キャリア通算のフィールドゴール成功率は46.3%、3ポイントシュート成功率は32.4%と低調だ。

しかし、このところは課題を克服しつつある。2月に入っての9試合でフィールドゴール成功率は50.4%、3ポイントシュート成功率は52.2%と驚くべき数字。サンプル数が少ないとは言え、2月はもう9試合を消化しており、自信を持って打てているのは間違いない。

ギディーとブゼリスのピック&ロールが相手の脅威に

フィジカルで強引にペイントを攻めることもできるし、同じようなアタックから鋭いスピンムーブでダブルチームをかわす。ドライブからのキックアウトは彼の十八番だし、今は相手が前に出てこなければ落ち着いて放つ3ポイントシュートを高確率で決める。ブーチェビッチに代わって出場したマタス・ブゼリスはサイズこそないが驚異的な身体能力の持ち主で、彼をギディーが使うピック&ロールもまた相手ディフェンスの脅威となった。

ジョエル・エンビード不在のシクサーズではガーション・ヤブセレやケリー・ウーブレイJr.がゴール下を守ったが、彼らは本来のセンターではない。ギディーは周囲との連携を巧みに用いて、このインサイドを攻略した。彼の好調ぶりが目立つ試合ではあっても、一人でスタッツを積み上げるのではなく、ゲームハイの彼でも25得点止まりであると同時に6選手が2桁得点と、バランスの良い攻めを作り出したのが彼らしいところだ。

結果、ブルズは142-110の大勝を収め、連敗を6で止めた。『NBA.com』の取材にギディーはこう語っている。「この数試合は接戦を落としていて、こういう試合をどう勝つかが課題だった。今日は正しい方向に一歩を踏み出せたと思う」

そしてギディーはこう続ける。「順位争いをしているチーム相手に30点、40点、50点と得点を重ねるのは気分が良いものだ。チームのみんなも同じ気持ちだと思う。今日の勝利はチームが正しい道に戻るために必要なもので、ここから勢いを上げていくつもりだ」

それは、ブルズが残りのシーズンで負け続けると予想する人々への反論のようだ。9位ヒートまでは4ゲーム差の東カンファレンス10位だ。しかし、自分たちより下の順位でプレーオフ進出をまだあきらめていないのはシクサーズぐらい。そのシクサーズを追い落とす勝利は、「シーズンをあきらめない」というブルズの決意表明なのかもしれない。