「卓越性を求めてエゴを犠牲にした」
ウォリアーズvsマーベリックスが行われた現地2月23日、アンドレ・イグダーラの永久欠番式典が行われた。2004年にセブンティシクサーズでNBAデビューを果たした彼は、2023年に現役を退くまで長く充実したキャリアを築いた。2013年から2019年まで、ヒートでの2年間を挟んで最後の2シーズンというキャリアの後半はウォリアーズの『王朝』で過ごしたものだ。
『過ごした』という表現は不適切かもしれない。2013年にウォリアーズに加わった彼は、『王朝』を築くのに大きな貢献を果たしたからだ。あくまで主役はステフィン・カリーであり、そこにクレイ・トンプソンとドレイモンド・グリーンが続くのだろうが、誰もがイグダーラの貢献がいかに重要だったかを理解している。ステフは「これは単に彼の9番をアリーナに掲げるだけの話ではなく、このチームを変えた選手を称えるものだ」と話した。
カリーはイグダーラを「ウォリアーズを選んだ最初のスター」、「チームのために自己犠牲を払った選手」と表現した。スティーブ・カーは「ステフとクレイ、ドレイモンドはコート上にカオスを作り出し、シュート力でバスケを変えた。しかし、最高のレベルで勝つチームになるには、彼のバスケに対するIQと感性が必要だった」と言う。
3ポイントシュートの精度がどれだけ高くても、それだけでは優勝できない。そこに知性と感性を与え、若かったカリーたちに『ゲームに勝つ方法』を教えたのがイグダーラだった。ウォリアーズに来てからの彼はベンチスタートに回った。ステフたちにどれだけ才能があっても、実績で上回りキャリアの全盛期を迎えようとしている彼が、支える側に回るのは簡単な決断ではなかったはずだ。だが、彼はそれを受け入れ、ウォリアーズが『王朝』を打ち立てる大きな力になった。
指揮官カーはこう続けた。「2015年6月の初優勝でアンドレがファイナルMVPに選ばれたこと。あれはバスケにおける私の信念が正しかったと証明するものだった。みんな同じことを感じたと思う。犠牲と成功が同時に起こっていたんだ」
ステフが言う「チームを変えた」も、そのことを意味している。「僕らは良いチームだったけど、次のレベルに到達するにはどうすればいいのか分かっていなかった。僕たちが試すことを君が認めてくれることで、自信と知性、成熟度を得ることができた。卓越性を求めてエゴを犠牲にした。それが僕たちウォリアーズのやり方になった」
イグダーラからカリーへ「君なしでは何も起きてない」
セレモニーの主役であるイグダーラは、いつものようにスタイリッシュな物腰から知性を感じさせ、ユーモアを交えてスピーチをした。ステフの「チームを変えた」との言葉に対し、イグダーラは「君がバスケを変えたんだ。私はドレイモンド、クレイ、ケビン・デュラントの才能と、自分の役割を理解していた。ただ、君なしでは何も起きていない。それが事実だ」と答えた。
「私は彼らがまだ若い時期に助けることができた。スポーツの世界では、まだ全盛期にある選手が一歩下がって後進に道を譲るのは珍しいかもしれない。だけど、私にとって難しいことではなかった。ステフもクレイもドレイモンドも、それだけ特別だった」
「でもね」と言ってイグダーラは笑う。「素晴らしい旅路だったけど、まだ『王朝』が続いているのに祝杯をあげるのはおかしくないかい?」と彼は笑った。
この日、ウォリアーズはマブスに126-102で快勝し、セレモニーに花を添えた。ジミー・バトラー加入からチームが5勝1敗と上向き、プレーオフのストレートインとなる6位に1.5ゲーム差まで迫っている。西カンファレンスは激戦だが、だからこそチーム間の差は小さく、まだ巻き返しのチャンスはある。
半月前と比べてチームの雰囲気は格段に良くなっている。これまではカリーが身を粉にして奮闘しても、それが先の何に繋がるのか確信が持てなかった。だが、今は誓う。努力が結果に直結し、チームが良くなっていく実感がある。それはイグダーラが加わった頃にあった感覚に近いはずだ。チームが上り調子にあることが、イグダーラの永久欠番式典を何より盛り上げることとなった。