「自分がいるべき場所にいるだけ。これが僕の人生だ」
今年もスラムダンクコンテストはマック・マクラングの独壇場だった。2年連続で圧倒的なダンクで優勝している彼に対し、「NBAに定着できない選手が主役でいいのか」という意見が少なからず出ていたのは事実だが、異論反論はダンク一発で完全に沈黙した。
マクラングは最初の出番がやって来ると、自動車をコートに招き入れた。2011年、当時ルーキーだったブレイク・グリフィンがダンクコンテストで披露した『自動車超え』は、歴代でもインパクト上位に入る。それに挑もうというアイデアにスタンドは大いに盛り上がり、この時点でマクラングは他の参加者を圧倒していた。
しかも、ボンネット部分を飛び越えてのダンクだったグリフィンに対し、マクラングはセダンの屋根を飛び越えた。観客の期待を煽り、その期待を上回るダンクは当然のように50点満点。2つのボールを叩き込んだダンクも、エバン・モーブリーを飛び越えて決めたダンクも含め、マクラングは完全なるダンクコンテストの主役だった。
謙虚な彼は、『自動車超え』のアイデアを出して練習に付き合い、さらには踏み付けられるリスクを承知で自動車を練習台にさせてくれた友人たちへの感謝を忘れず、「仲間たちがいなかったら成し遂げられなかった」と語った。
マクラングは良い人を演じているわけではなく、本当に仲間たちの存在が大きいと感じている。「コンテストで大事なのは観客を味方にできるかどうか。そのためには常に50点満点を狙うべきだ。僕は新しいダンクをやるたびに映像を送って採点してもらう。彼らの意見があってこそ、僕のダンクはクリエイティブなものになるんだ」
Mac McClung over a @Kia… channeling Blake Griffin 14 years earlier 💯#KiaK5 | #ATTSlamDunk pic.twitter.com/wszyiLUWSb
— NBA (@NBA) February 16, 2025
これでダンクコンテスト3連覇。ただ、彼はいまだNBAプレーヤーとしての評価を得られていない。一昨年に初優勝を飾った時には、これをきっかけにチャンスが開けると誰もが思ったが、ダンクコンテストが終わればまた注目を浴びない舞台に戻る、という繰り返しから抜け出せずにいる。今シーズンはマジックと2ウェイ契約を結んでいるが、レギュラーシーズンの出場はここまで1試合のみ。マジックが好調なうちはともかく、ケガ人が続出した時期にもGリーグでプレーし続けている。
チャンスを得られないことに苦しい思いはあるだろうが、マクラングはここで不平不満を言うつもりはない。「自分がいるべき場所にいるだけ。これが僕の人生だ」と彼は言う。
「僕はダンクじゃなくてバスケが好きだけど、今の状況を僕は受け入れる。そして今まで以上に努力すべく自分を奮い立たせていくつもりだ。Gリーグから来たことも僕は誇りに思っているよ。Gリーグでは多くの選手が夢を追いかけ、それをつかみ取ってきた。今まさに夢に突き進んでいる選手もいて、僕はその一人なんだ」
「僕は自分の可能性とここに至るまでの道のりを信じている。だから今いる場所が自分に相応しいところだと思っている。高校までダンクばかりやっていたから、卒業を機にダンクはやめるはずだった。なのに今ここにいるのは面白いよね。ダンクだけのヤツだとは思われたくないけど、僕はバスケもダンクも好きだ。大会3連覇に何の意味があるかは僕には分からない。それはダンクを愛する人々に判断してもらおう」