岸本隆一

「勝敗以上に得たものが大きかったと思っています」

琉球ゴールデンキングスは2月9日、サンロッカーズ渋谷と対戦。出だしからシュートタッチが悪く劣勢の中、試合終盤に猛烈な追い上げを見せたが67-69で敗れ、前日の勝利に続いての同一カード2連勝を逃した。

試合の出だしから、琉球はSR渋谷にタフショットを含め確率良くシュートを決められる。特にリード・トラビスとケビン・ジョーンズの両ビッグマンに外角シュート、スイッチからの高さのミスマッチでインサイドアタックを効果的に決められ、前半で37-45と大量失点を喫した。

後半に入ると琉球は持ち味のオフェンスリバウンドの量産により、ポゼッション数で優位に立つが、シュートを決め切れない。第4クォーター頭からは桶谷大ヘッドコーチがSTB(スーパースリービッグ)と名付けるジャック・クーリー、アレックス・カークの両センターに206cmのケヴェ・アルマを同時起用するビッグラインナップを使うも悪い流れを変えられず。9点ビハインドの残り1分半から岸本隆一の3ポイントシュートなどで1点差に詰め寄るが、あと一歩及ばなかった。

琉球は1月末の宇都宮ブレックスから大阪エヴェッサ、アルバルク東京、天皇杯セミファイナルの三遠ネオフェニックス、サンロッカーズ渋谷と強豪揃いの過酷な日程を4勝4敗で終えた。勝率5割の是非は難しいところだが、桶谷大ヘッドコーチは「正直、現時点のチーム力としては上出来。こういう上位チームとの試合を重ねていくことが強くなっていけます。もちろん2勝したいですけど、1勝1敗は悪くないです」と評価する。

そしてチームの顔である岸本隆一は、「タフなスケジュールに加え、各地区の上位との対戦が続いていた中、勝敗以上に得たものが大きかったと思っています」と語る。

ここまで琉球は、連戦の初戦を落とすケースが少なくなかった。そんな中、天皇杯という一発勝負でリーグ最高勝率の三遠に見事な逆転勝ちをできたのは、結果だけでなく内容的にも大きなステップアップとなった。岸本は、試練の2週間のチームの歩みをこう振り返る。「宇都宮、A東京戦を含め今まで初戦を取れていなかったです。プレーオフに入っていかに初戦が大事か毎年言われている中、1戦目を取りに行くことに対してみんなが危機感を持てる機会となりました」

岸本隆一

「速く感じるように上手く見せることができている」

チームの現状に満足することはなくても、「課題を乗り越えつつあり、充実感を得られています」という手応えが岸本にはある。

「天皇杯準決勝という絶対に落とせない一発勝負に勝って、昨日も第1戦に勝って課題を克服しました。その上で今は2戦目に相手が修正し、インテンシティを上げていた中でどうやって勝つのか、次の段階の課題に入れています。この2週間は収穫に加え、前向きな課題が出てきた期間でした」

3月に入るとEASL(東アジアスーパリーグ)のファイナル4、天皇杯ファイナルとビッグゲームが続く。その前に約3週間に渡る代表ウィークが入ることに「ラッキーです。連戦続きではなくなることでメンタル、フィジカルともにリフレッシュできます」と岸本は語る。

そして「単純に欲しいです」とタイトルへの思いを強調し、さらに大舞台のコートに立つことでしか得られらないモノがあると続ける。「コーチ陣も言っていますが、大会の規模どうこうでなくファイナルはファイナルです。あの場で戦わないと分からない、経験できないことがあると僕は思っています。この経験は絶対にBリーグのチャンピオンに向けた戦いにも繋がっていきます」

タフなスケジュールに加え、対戦相手は岸本の代名詞である3ポイントシュート封じをディフェンスの優先事項とし、徹底的に封じてくる。それでもここ一番で沈める勝負強さは健在かつ、相手の隙を突いたドライブでゴール下に切れ込みチャンスメークする巧さも光る。昨シーズンから複数の主力が抜けた琉球において、岸本の存在感はより増している。

34歳とベテランの岸本だが、彼とマッチアップしたSR渋谷のベンドラメ礼生、宇都宮ブレックスの遠藤祐亮といった歴戦の名ディフェンダーたちは、衰えを知らない岸本の速さを警戒していた。この点について本人に聞くと、「昔より速いという意識はないです。そう言ってもらえるとうれしいですね」と笑顔を見せて、こう続ける。

「ただ闇雲に速さを使うというより、少しずつ頭を使って、こういう動きを使ったら相手がこういう反応をするというのは、ここ数年でなんとなく分かってきました。自分のアジリティをより効果的に利用できていて、速く感じるように上手く見せることができている感覚です」

3月の琉球は、クラブの歴史にとっても大きな意味を持つ重要な試合が続く。その中で自分たちが望む結果をつかみ取るためには、岸本の勝負強さと経験を積み重ねて研鑽されたゲームメークが欠かせない。