安斎HC「後半は完全に力の差が出た」
1月29日、越谷アルファーズはホームに群馬クレインサンダーズを迎えた。越谷はここまで11勝21敗と負け越しているものの、前節は佐賀バルーナーズに連勝しており、チームの状況は上向きと言えた。しかし後半出だしから群馬に流れを受け渡し、67-87で敗戦した。
試合後、越谷の安齋竜三ヘッドコーチはこう試合を振り返った。「前半はなんとか群馬さんに食いついて…という感じでしたけど、後半は完全に力の差が出ました。やはり強いチームのメンタル的な部分や、ディフェンスからアグレッシブに来てオフェンスもどんどんアタックしてくる圧に負けてしまった感じでした」
越谷の勝率は33試合を消化して3割3分3厘。大部分の選手がB1クラブでの所属経験があるとはいえ、初めてB1に参戦したチームとしては決して壊滅的な成績ではない。しかし安斎ヘッドコーチは、勝敗以前の戦う姿勢や遂行力を常日頃から言及している。この試合でも同様の言葉が聞こえた。
「ジェフ(ギブス)がケガから戻って来れず苦しい時ですが、こういう時こそやるべきことをやれるかどうかが問われます。今日はそこをやれず、相手に付け入るスキを与えてしまいました。まだまだそういうところを徹底しないといけないチームなので、次戦以降もしっかり準備していきたいです」
安斎ヘッドコーチは長らく、どの選手にもファンがいるという理由で、なるべく多くの選手を起用する方針を採ってきた。しかし、今シーズンは選手起用が偏る試合も多い。この群馬戦こそベンチ入りした全員が出場機会を得たものの、オールスター前の千葉ジェッツ戦と前節の佐賀戦では起用する選手を絞った。
「僕はそっち側(出場選手を絞る起用法)にシフトしたので、ある程度、メーン選手主体でカルチャーを作りながら戦っていこうとしているところです。『しっかりやっている選手を使う』という方針自体はずっと変わっていません。しっかりやっていればチャンスをあげようと思いますし、そこが見えなければプレータイムをあげる必要もないと思っています」
「プレーに迷いがなくなってきた」
一見厳しいように聞こえる指揮官の期待に応え、試合前半からチームを牽引したポイントガードの松山駿は、安斎ヘッドコーチと同様に後半の出来を悔いた。
「第3クォーターがすべてだったかなと。相手がギアを上げてくるのが分かっていましたが、対応しきれずにアグレッシブさを出すことができませんでした。オフェンスも手詰まりになって流れが悪くなり、相手のオフェンスを乗せてしまいました」
松山は序盤から積極的なアタックを見せて前半だけで12得点を挙げる活躍を見せた。後半こそ群馬の勢いに押されたものの、3ポイントシュートを2本沈め、トランジションも牽引した松山が群馬の脅威になっていたのは間違いない。松山は試合を次のように振り返る。
「スカウティングする中で、速い展開でのアタックが効果的だというのは分かっていました。前半はできていましたが、後半に出せなかったのは悔いが残っている部分です」
前半は肉薄できたが、後半に崩れた。この結果をもとにチームにどのような変化が必要なのか、松山は分析した。「僕たちは下の順位のチームなので、今日の良い時間帯を40分間やり続けられないと勝つ確率は下がっていきます。チャレンジャーとして気持ちの面で相手に負けないようにしないといけない。今日はリバウンドやルーズボールを取られてしまったので、まずは改善が必要です」
『チャレンジャー』という言葉の通り、チームはB1という舞台で新たな挑戦をしているが、松山個人もチャレンジングなシーズンを過ごしている。富山グラウジーズ時代にB1での出場経験はあるものの、キャリアの大部分でB2を主戦場にしてきた松山にとって、今シーズンが初めて主力として戦うB1の舞台。昨シーズンは平均13.1得点でキャリアハイ35得点も記録したが、今シーズン序盤はシーズン序盤は1桁得点の試合が続き、ここまで平均8.8得点にとどまっている。
ただ現在は、4試合連続で2桁得点を記録しているように調子を上げてきている。スコアリングガードとしての本来の姿を取り戻した要因を松山は次のように明かす。「慣れというものありますが、チームとしても個人としても自分がやるべきことが明確になりました。最初の頃に比べるとプレーに迷いがなくなってきました」
シーズンはまだ半分を折り返したところ。松山のチャレンジもまだまだ途中だ。この後中2日で広島ドラゴンフライズ戦が控えているが、ホームでの連敗は避けたい。「まず一人ひとりがアタックメンタリティを持ってアグレッシブなプレーをすることと、リバウンドやルーズボールを心がけることが大事になってくると思います。チームルールを徹底できるように準備からしっかりやっていきます」
プロキャリア7年目の28歳。ここが全盛期でなく、まだまだ上を目指していける能力の高さは疑いようもない。安斎ヘッドコーチのもと、チームカルチャーの創造に着手し始めた越谷の看板選手として、松山がより輝く姿を切望する。