Bリーグ王者を決めるチャンピオンシップに向けて、出場8チームの選手が抱負を語った。琉球ゴールデンキングスの岸本隆一は、チームの「ここだけは負けない」ポイントとして『団結力』を挙げた。レギュラーシーズンはケガ人が続出し、なかなか会心の戦いぶりとはいかなかったが、それでも西地区優勝を果たした。我慢の展開で勝ちきるのが琉球の形。そのためにチーム一丸の『団結力』を生かして勝ち上がっていきたいと岸本は考えている。
「今シーズンの不甲斐なさをここでぶつけたい」
名古屋ダイヤモンドドルフィンズと対戦するクォーターファイナルについて岸本は「我慢の展開になると思います」と語る。「見ている人にはちょっと物足りないような展開がウチの流れ。点数の取り合いはしたくなくて、相打ちになるような展開になれば自ずと結果はついてくると思っています」
シーズン中盤にインサイドの要であるジョシュ・スコットが戦線離脱した後も故障者が相次ぐ状況、チームは団結を強め、我慢の展開に持ち込むことで一つずつ勝ちを拾ってきた。このスタイルをチャンピオンシップでも貫くことが大事。ちなみにこの団結とは、選手とコーチングスタッフだけでなく、フロント、さらにリーグ随一の熱狂度を誇るファンを含めてのこと。思い返せば琉球が優勝したbjリーグラストシーズンのチームスローガンも『団結の力』だった。
琉球と名古屋Dは昨シーズンにもクォーターファイナルで対戦している。GAME3までもつれる接戦を琉球が制したのだが、前後半5分のGAME3の勝負どころで岸本はベンチに回された。この時のことを「意識しないわけにはいかないです」と振り返る岸本は、同時に「僕の感覚としては昨シーズンよりも今シーズン、名古屋Dに対して良いプレーをさせてもらえていません。そういう意味では、今シーズンの不甲斐なさをここでぶつけたいです」と必勝を期している。
目標はあくまでBリーグ制覇だが、これについては岸本は慎重だ。「どのチームにも勝てる可能性があるし、どのチームにも負ける可能性がある。それが今シーズンの琉球だと思うので、先を見すぎることなく、一つひとつ泥臭くやっていくしかないと思っています」
「空気を読まずプレーして、結果には貪欲にこだわる」
これまで岸本は長く琉球の日本人エースとして、30分近いプレータイムを得てオフェンスを引っ張る存在だった。それが今シーズン、国内トップレベルのポイントガードである並里成と橋本竜馬が加入したことで、先発出場は60試合から16試合へと激減。プレータイムが減り、起用法も定まらない苦労を味わった。1月27日のシーホース三河戦では3分半、2月3日の新潟アルビレックスBB戦では3分のみの出場に終わる悔しい思いもした。「キツかったですよ。昨シーズンにヘッドコーチから信頼されてプレーできたと思っていたので、途中で心が折れかけましたし、投げ出したくなった時も正直ありました。でも、綺麗事みたいですけど応援してくれる人のことを考えると、投げ出すわけにはいかないと思って、どうにか心を留めたというところです」
bjリーグ時代も含めて琉球で7シーズン目、Bリーグになってから大型補強を繰り返してロスターが大幅に入れ替わる中で、地元出身でチームの生え抜きである自分が主力選手であり続けることが、岸本にとっては大きなモチベーションになっている。
「やっぱり意識します。チームの歴史を背負っているつもりだし、大事にしなきゃいけない価値観を僕自身が持っているつもりです。自分がチームを引っ張っていかなきゃいけないとずっと思っています」
だからこそ、チームのレベルアップに置いていかれるわけにはいかないし、脇役に甘んじるわけにもいかない。「勝利を決める場面でコートに立っていたいです。欲を言えば、調子が悪くてもヘッドコーチから信頼されて最後にコートに立ちたい。どういう状況に置かれても、自分の強気のプレースタイルは崩さずプレーしたいと思っています」
「僕が良い意味で空気を読まずにプレーできるのはチームにとってプラスになると思います。応援してくださっている方々はファイナル進出、優勝を期待していると思うので、結果には貪欲にこだわります」
泥臭く我慢のバスケを展開するチームのスタイルを貫きながらも、試合を決める場面では「自分が」という強い意志を持つ。琉球が頂点に立つには、クラッチタイムの岸本の爆発が必要だ。
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