ニコラ・ヨキッチ

アーロン・ゴードンの「贅沢な起用法」がハマる

現地1月23日のキングス戦、ナゲッツは危なげない試合運びで132-123の快勝を収めた。年末から10勝1敗と勢いに乗るキングスが相手でも、ナゲッツの優位は全く動かなかった。ナゲッツは年末から12勝3敗、勝利を重ねるごとに試合内容が良くなり、『質』という意味で今のNBAで最も好調なチームの一つとなっている。

そのナゲッツを牽引するのがニコラ・ヨキッチなのは間違いない。キングス戦では35得点22リバウンド17アシストを挙げ、これで5試合連続のトリプル・ダブル。第3クォーターの最後には、自陣のフリースローライン付近、しかもコートの右端からのフルコートショットを沈めて見せた。

ヨキッチは大きな弧を描いたシュートがリングに吸い込まれるのを見届け、仏頂面でベンチへと戻る。「なぜ無表情だったのか自分でも分からない。CB(クリスチャン・ブラウン)はダンクを決めるたびに得意げにアピールするし、DJ(ディアンドレ・ジョーダン)は普段から審判や観客とのやり取りを楽しんでいる。僕が多少でもマシなリアクションができないのはなぜだろう? 試合に集中しているから? 分からないな(笑)」

大盛り上がりの観客席とは対照的に静かなヨキッチに飛び付いたのはアーロン・ゴードンだ。「アシストをオゴってもらった」と彼は言う。この試合でのゴードンのアシストは1つだけ。残り1秒でリスタートのボールをヨキッチに託しただけでアシストが付いた。

このところのヨキッチは絶好調で、ナゲッツも絶好調だ。彼のトリプル・ダブル連発はシーズン序盤から変わっていないが、その質は大きく向上している。そのアシストはゴードンによるものだ。ゴードンはふくらはぎのケガで9試合を欠場して戻って来たが、筋肉のトラブルは癖になりやすく、そもそも昨シーズンに20試合を欠場したケガの再発だった。そのためチームは慎重を期し、ゴードンをベンチスタートにして出場時間を管理している。

それがナゲッツを一つ上のレベルへと引き上げた。これまでゴードンはフィジカルな仕事を請け負い、ヨキッチの負担を軽減する意味で不可欠な存在と見られていたが、彼がベンチスタートに回った結果、ベンチメンバーのパフォーマンスが安定し、ヨキッチを休ませやすい状況ができた。復帰後6試合に出場したゴードンのプレータイムは20分前後。それと時を同じくしてヨキッチのプレータイムは30分ほどに収まるようになった。

それを可能にしているのはゴードン不在の間に先発で素晴らしい活躍を見せたウェストブルック、スモールフォワードからパワーフォワードにポジションを変えることを苦にしなかったマイケル・ポーターJr.の存在あってこそ。層が薄いと批判されてきた控えも、ペイトン・ワトソンやディアンドレ・ジョーダンが良い働きを見せている。

ヘッドコーチのマイケル・マローンはゴードンについて「どの選手も出場時間を制限されればイライラするものだが、それを表に出さず、相手のエースを守るという役割を忠実にこなしている」と、その姿勢を称えた。「ベンチから彼が出てデマー・デローザンを抑えるのは贅沢な起用法だよ」

今回のキングス戦ではヨキッチの超ロングショットで110-85と大量リードで第4クォーターを迎えたが、キングスは時間をかけずに3ポイントシュートを打ちまくり、ダグ・マクダーモットが第4クォーターだけで5本の3ポイントシュートを成功させるなど高確率で決めて追い上げたため、ヨキッチの出場時間は久々に37分まで伸びた。それでもキングスの猛追に勢いがあっても、無理せずセーフティリードを保って勝つことができた。

指揮官マローンは「毎試合ヨキッチを温存できるほど甘くはないよ」と言い、このところのヨキッチのパフォーマンスを『過去最高』と評する。「素晴らしいスタッツを残しているが、空虚な数字ではなくチームの勝利に直結している。さらに素晴らしいのは、彼が現状に満足せず、もっと上手くなろうと貪欲であり続け、チームが勝つためなら何でもする姿勢を見せていることだ」

そしてヨキッチ自身も「これまでの人生で最高のバスケができている」と、シャイな彼としては珍しく今の好調を自画自賛した。「身体の調子も良いし、気分も良い。シュートは気持ち良く入るし、試合にも勝てている。自分が様々な面でそこに貢献できている感覚もある。自分が成熟してきたと感じられているよ」