得点力の課題は「誰よりも自分が分かっています」
横浜ビー・コルセアーズは、シーズン前半を11勝19敗と厳しい結果で終えた。だが、オールスターブレイク前の琉球ゴールデンキングス戦とのGAME2では、敗れたとはいえ外国籍ビッグマンを1人欠く中で、フルメンバーの琉球にダブルオーバータイムまで持ち込む激闘を演じた。シーズンを通して外国籍ビッグマンの離脱に苦しみながら、上位チーム相手にあと一歩の接戦を何度も繰り広げている。
接戦でも負けたことに変わりはなく、借金8の現状を厳しく受け止める必要はある。だが、ラッシ・トゥオビ新ヘッドコーチの下、横浜BCが着実に進歩しているのも確かだ。その中でも今、注目すべき明るい材料は司令塔、森井健太の得点だ。
学生時代から非凡なパスセンスとゲームメークに定評のあった森井は、Bリーグでプレーするようになっても味方の持ち味を引き出す司令塔として安定したプレーを見せている。ただ、昨シーズンまで平均3得点以上のシーズンがないように得点力のあるタイプではない。それが1月に入ってから4日、5日の長崎ヴェルカ戦、11日、12日の琉球戦と4試合続けて8得点以上、この4試合すべてで3ポイントシュートを2本決めている。シュートタッチの良い日が続いたにしては長く続く森井のポジティブな変化について、12日の琉球戦後に聞いた。
この4試合と、その前までの大きな違いは、キーファー・ラベナと一緒にプレーしていることだ。その前まで、同じ司令塔のラベナと森井はプレータイムを分け合う形だった。それが4日の長崎戦から2人揃って先発起用されるようになった。
ラベナとのツーガード起用がもたらす効果を森井はこう語る。「ツーガードにすることで、キーファー選手にハーフコートの場面でボールを多く触ってもらうのが一番の狙いだと思います。起点にディフェンスが寄る中、自分がワイドオープンを決めることが必要で、ここ数試合は自信を持って3ポイントシュートを打てていて、自分として成長段階で良いチャレンジができています。キーファー選手とは練習中からコミュニケーションを取る機会が多いのでお互いがプレーしやすいように、新たなビーコルのパターンとしてこれから武器にしていきたいと思います」
そして森井は、「学生時代からシュートの部分が課題であることは、誰よりも自分が分かって上で練習をしています」と、シュート力向上への思いを続ける。「あとは決め切る自信、成功から生まれる自信しかないです。どんな試合でもしっかりと準備をして、良いタイミングで積極的に打つことを意識していきます」
「お互いの強み、弱みを理解してプレーできています」
森井はシュートタッチが良い今の状況にも気を引き締めている。「一昨年のチャンピオンシップで川崎に同じようなディフェンスをされ、自分がオープンになって3ポイントシュートが入りました。今はそれと同じだと思います。これをスタンダートにできるようになれば、相手のディフェンスが変わってきて、自分がプレーしやすくなる。これは積み上げなので、今までと変わらずこれからも一歩一歩、努力を続けていきたいです」
この『自分がプレーしやすくなる』とは、森井の外角シュートを警戒し、相手が守備の間合いを詰めることがドライブしやすくなることを示す。シュート力の向上によって自身の得点力アップだけでなく、持ち味である他の選手のシュートチャンスを作り出す能力も発揮しやすくなると森井は考えている。
「今日の場面だと、延長で3ポイントシュートラインにいた僕に相手がクローズアウトしたことでドライブができ、そこからアシストという形がありました。僕が外から決めることによって自分の好きな形、チームにとって必要な形が生まれます。より味方を生かしやすくなる相乗効果で、自分もプレーしやすくなります。この怖さを相手に与えられていければ、自分として一つ上のレベルのポイントガードになれます」
森井にとってシーズン前半戦は、「大事な最初の10試合を欠場してしまったことは個人、チームとしてもかなりマイナスでした」と苦い思いだ。しかし、ここで苦しさに正面から向き合ったことで得られたものも大きい。「ただ、12月の1カ月間、苦しみながらチームとともにプレーできたのは大きなプラスでした。そのおかげもあり、この数試合はお互いの強み、弱みを理解してプレーできています。キーファー、外国籍選手、ラッシヘッドコーチとの意思疎通がすごくプラスになっているのが、今のプレーに繋がっています」
明日からのリーグ再開で横浜BCは、いきなり好調の群馬クレインサンダーズと対戦する。森井が再び外からしっかりとオープンシュートを射抜き、攻撃の起点としてチームを牽引できるのか。リーグ屈指の堅守を誇る群馬相手にも、引き続き効果的な得点を挙げられたら、それは確かなステップアップを意味する。