八王子学園八王子に敗れるも33得点5アシストを記録
『Softbank ウインターカップ2024』の大会3日目、男子の2回戦で八王子学園八王子(東京)と富田(岐阜)が対戦した。
第1クォーター、八王子は19-6と先制パンチに成功するが、第2クォーターは逆に富田が27-15とやり返し、互角の展開で前半を終える。第3クォーター中盤まで続いたシーソーゲームから抜け出したのは、不発だった外角シュートが決まり出した八王子だった。
堅守からトランジションを次々と生み出し、ゴール下へのドライブからフリースローを獲得。最終的には八王子の36本(21本成功)、富田の9本(5本成功)というフリースローの差が勝敗の分かれ目となり、八王子が80-61で快勝した。敗れたとはいえ、世代屈指のスコアラーである富田の保坂斡希は、33得点6リバウンド5アシストを記録。U18日本代表である八王子の十返翔里(34得点4アシスト2リバウンド)と互角に渡り合った。
「悔しい気持ちでいっぱいです。十返選手は世代を代表する素晴らしいスコアラーで、彼に自分が勝つことでチームを勝たせたかったです。自分が勝ちきれなかったので試合に負けたと思います」
このように保坂は、エースとして敗戦の責任が自分にあると振り返る。ただ、試合に敗れた悔しさの一方、高校生活最初で最後となった全国の舞台で自分の力を示せたことへの達成感もある。
「初戦は初めての東京体育館で緊張し、雰囲気に圧倒されたところもありました。今日はいつもの自分を取り戻せました。負けたことは悔しいですが、先生(村田竜一コーチ)も自分に『行け』と言ってくれ、高校生活最後の試合で自分の力を出せたことには満足しています」
強豪・四日市メリノール学院中の中心選手を務め、早くから実力を高く評価されていた保坂は、今シーズン大きな躍進を遂げた神奈川大で活躍した兄・晃毅の勧めと、次のような理由から富田に進学したと明かした。
「中3の時、今岐阜スゥープスにいる髙橋快成選手が富田にいて、自分もこんな風になりたいと思いました。そして、富田のスクリーンオフェンスが多く、チーム全員が共通意識を持ってプレーしないとできないスタイルがすごくおもしろくていいなと思いました」
得点の取り方の理想とするのは比江島慎
だが、保坂が中学3年時にウインターカップ初出場を果たした富田は、今年のインターハイで準優勝と台頭した美濃加茂の存在もあり全国の舞台から遠ざかる。今年のウインターカップ県予選も美濃加茂、高山西の後塵を拝して3位に終わったが、岐阜県の出場枠が3となったことで、最後の全国への切符をつかめた。
県3位でのウインターカップ出場は、もちろん本人にとって望んだ形での全国デビューではなかった。保坂自身も「1番で行きたかったですし、3位という悔しさはありました」と明かすが、村田コーチの「ウインターカップに行けるのだから、今の悔しい思いを全国にぶつけよう」という言葉を受けたことで気持ちを切り替えたと話す。「自分もそうだと思って、ウインターカップに向けて全力で練習をしてきました」
そうして富田は、ウインターカップで全国1勝を挙げ、今日も強豪の八王子を苦しめた。保坂が「やってきた練習、やってきたプレーができたことには達成感はあります」と語るとおり、富田が全国でも戦える力を持っていることを証明した。
類稀な才能を全国の舞台で証明した保坂は、次のステージでのさらなるステップアップが楽しみな逸材だ。「(高校で)一番、伸びたのがコミュニケーション能力だと思います」と語る保坂は、理想とする選手像について次のように説明した。
「点を取ることは好きですが、それだけでなくゲームを作れるガードを目指しています。点の取り方の理想は比江島(慎)選手で、プレーを参考にしています」
保坂は富田でプレーしたからこそ今の自分があると感謝する。「『富田に行かなかったほうが良かったんじゃないか』と、悔しいことを言われたりもしました。でも、自分は富田に来て良かった。最後に全国で自分たちのバスケを見せることができて、本当に良かったです」
非凡なシュートスキルと、コンタクトの強さを備えたスコアリングガードとして、保坂はこれからどんな選手へと成長を遂げていくのか。初の全国大会で見せたプレーは、今後への大きな期待を抱かせてくれるものだった。