勝者のマインドを伝え、新潟はチャンピオンシップへ
平日開催が増えてリーグ3年目にして一気に過酷となったレギュラーシーズンも今週末で全日程を終える。最も大きなサプライズを起こしたのは新潟アルビレックスBBではないだろうか。
新潟の戦力は黒星先行で終わった1年前と比べ、前年ベースの実績で言えばほとんど変化はなかった。また、外国籍選手の起用ルールに変更があったが、これは帰化選手が不在の新潟にとってマイナス要因だった。それでも、開幕から順調に白星を重ね、前節には敵地で同地区の優勝候補である川崎ブレイブサンダースを粉砕し、2試合を残して中地区優勝を決めた。
この躍進を振り返る際、チームに大きなプラスアルファをもたらした存在として不可欠なのが柏木真介だ。アイシン(現シーホース三河)で数々の勝利に貢献した国内屈指のタイトルホルダーだが、ここ数年は故障に苦しめられていた。特に昨シーズンは長年在籍した三河を離れて移籍した名古屋ダイヤモンドドルフィンズで34試合出場、1試合平均のプレータイムも11分とキャリアワースト級の成績に終わっていた。37歳という年齢も加味すれば、新潟に移籍してどこまで戦力となれるのか懐疑的な声も少なくなかった。
しかし、柏木は開幕から五十嵐圭と不動の先発ガードコンビを形成すると、鋭い読みを生かしたタフなディフェンス、巧みなゲームコントロールに要所で決める外角シュートで中心選手として大暴れ。ここまで1試合平均28分出場、7.9得点3.0リバウンド3.1アシスト1.4スティールを記録。また、チームに勝者のマインドを伝える無形の効果も含めると、新潟にもたらしたインパクトは本当に大きなものだ。もし、プロ野球のカムバック賞に相当するアワードがあったなら、満場一致で柏木が受賞するであろうパフォーマンスだ。
「チャレンジの気持ちを持ってやりたいですね」
もともと、新潟は圧倒的な得点力を誇るダバンテ・ガードナーを擁し、爆発力は申し分ない。そこに守備で我慢できるようになったことが今シーズンの躍進に繋がった。その守備の改善に有形無形の貢献を果たしたのが柏木だ。
「自分の中では、何か特別なことを言ったりとか、やってきたわけではないです。チームのスタイルも昨シーズンとは変わっていない。ただその目指しているバスケットボールであったり、ディフェンスをどのようにやるべきか、シンプルに分かりやすく教えてあげたり、実際にプレーで見せてあげました。練習でも試合でも気づいた時にはすぐアドバイスしていました」
もちろん守備だけでなく、攻撃面の底上げにも尽力した柏木から見ても、今のチームは攻守で着実に進歩している。「もともとオフェンス能力があるチームで、そこにスペーシングなどをアドバイスしてバランスが良くなってきました。またオフェンスだけなく、やはりディフェンスが機能してきたことで勝ちがついてくるようになりました」
新潟にとっても地区優勝に大きな充実感はあれど、目指す頂きへの通過点にすぎない。大舞台の経験はチーム随一である柏木は、「ここからは特別なことをやるのではなく、いかに自分たちがやってきたことの質を高めていけるかだと思います。チームにとって初めてのチャンピオンシップですし、行けるところまで行く、チャレンジの気持ちを持ってやりたいですね」とポストシーズンへの意気込みを語る。
クォーターファイナルの相手は、昨シーズンの王者であり常勝軍団のアルバルク東京だ。大舞台になればなるほど、百戦錬磨である柏木は新潟にとってさらに頼りになる存在となってくる。
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