「U18日清食品 東海ブロックリーグ2024」に初出場し、7勝1敗の成績で初優勝を遂げた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ U18。部活動の強豪と戦って優勝した背景には、「名古屋ダイヤモンドドルフィンズ」のコンセプトを受け継ぎながら、育成に取り組む姿勢がうかがえた。大西順ヘッドコーチに、「U18日清食品 東海ブロックリーグ2024」での戦いぶりと、「B.LEAGUE U18」ならではのチーム作りについて聞いた。
歴史に風穴を開けたBリーグU18のブロックリーグ優勝
――今年で3年目になる「U18日清食品ブロックリーグ」でBリーグのU18チーム(以下Bユース)が優勝したのは初のことです。東海ブロックリーグを制した感想は?
優勝できたことは素直にうれしいです。このU18日清食品ブロックリーグは、リーグ戦文化の醸成というところで、一発勝負のトーナメントとは違い、勝敗だけにかかわらない選手育成を目的にしていることを理解した中で戦っています。僕たちBユースのチームが部活動のチームと一緒に大会に出させてもらい、試合を戦っていく中で、最終的に結果がついてきたことが本当にうれしいです。
――中部大学第一、桜丘、浜松開誠館には1点差で勝利しています。部活動の強豪チームに接戦を勝ち切れた要因は?
正直、1点差での勝利というのは「たまたま」な部分があると思います。ただ、勝負のアヤというのはどっちに転がるかは分かりません。でも、「勝利をつかむための準備は日頃からしておこう」と選手たちには伝えています。
接戦になった時に選手に伝えたのは「負けるとしても、自分たちに負けるのではなくて相手に負けよう」でした。これはつまり「相手の内容がすごく良くて、僕らも全力を出し切った末に負けたのであれば構わない。逆に自分たちから崩れて負けることはしたくない」ということです。ですから、自分たちで問題解決できるように最終的な判断はなるべく選手に任せましたし、それができたからこそ、接戦に勝てたのだと思います。
――Bユースと高校の部活動、それぞれどのような特色があると思いますか? また、Bユースのチームがブロックリーグに参戦して気付いたことや収穫はありますか?
私たちのチームはBリーグのトップチームのカルチャーや戦術のコンセプトに照らし合わせて戦っていますし、Bユースの多くはそうだと思います。ですから、トップチームの雰囲気を見れば、Bユースのチームがやろうとしていることはだいたい分かりますし、スカウティングもできます。Bユース同士だと戦術vs戦術の戦いになるので、読み合いもできます。
一方、部活動は留学生を含めてフィジカルにぶつかってきて、1対1の強さでシンプルに攻めてきます。そういったチームに対して胸を借りるつもりで臨み、部活動チームが得意な1対1の勝負、トランジションの走り合い、ディフェンスの守り合いに対応することは、上手くできたんじゃないかと思います。試合前にもちろんスカウティングをしますが、試合を通してアジャストできた部分もあったので、そういった意味でも多くの収穫がありました。
実は愛知県内では、中部大学第一の常田健先生、桜丘の水越悠太先生にお願いして、何度か練習試合をさせてもらっているんです。そうして鍛えてもらった上で、ブロックリーグで胸を借りながらお互いの良さを出して戦えたことが良かったです。お世話になった先生方やチームとブロックリーグで戦えて、感謝の気持ちでいっぱいです。
トップチームと同じカルチャーで戦うBユース
――名古屋D U18がチームカルチャーを確立している背景には、トップチームと隣接した体育館で練習したり、常に近くにいて学べる環境の良さがあると思うのですが、環境面についてはどのような考えがありますか?
確かに、そうした環境の良さはドルフィンズの強みです。ドルフィンズとWリーグの三菱電機コアラーズが大きな2面の大きな体育館を使い、ユースは隣接した体育館で練習ができます。また、その中でトップチームとの連携だけでなく、U18世代には高校生に合った指導があることも模索していて、選手たちが持っている力を最大限に引き出せるような環境作りをすることが、自分自身の一番の目標です。
と言うのも、私はU18のヘッドコーチだけではなく、強化と育成を兼ねる強化・育成課長も兼任していて、全体のことを統括する立場にいます。ヘッドコーチの力量をつけることも大事ですが、環境面をどれだけ整えられるかも大切なので、そこにも注力してきた3年間でした。
――トップチームとの連携とは、具体的にどのようなことをしているのでしょうか。
基本的に私たちのチームは組める限り土日は練習ゲームをして、月曜は休み、火曜から相手のスカウティングや、自分たちのやるべきポイントを練習するといったように、トップチームと同じようなスケジュールをルーティンとしてこなしています。ブロックリーグでも同じようなルーティンで試合に臨みました。
――それは、所属選手の目指すところがBリーグだから、ということですか?
その通りです。基本的にはトップチームのコーチやトレーナーと会話をして、練習のインテンシティの強度もトップチームと同じレベルを目指しています。今シーズン、トップチームが「BE US!GO BEYOND!」、「Dolphins PRIDEを胸に ‟ドルフィンズらしく” ‟更なる高みへ”」というスローガンを掲げていて、それは「自分たちらしくプレーする」という意味が込められています。日頃の練習からそのスローガンにフォーカスしていて、「問題を解決するのは自分たちだよ」と選手に伝えています。日頃の練習で、想定されるトラブル、エラーはこうして起こるから、その解決方法をみんなで共有して、どんなゲームでも対応できることを目指しています。
僕はゲームではあれこれ言わないようにしています。実際に戦術はアシスタントコーチがデザインすることがありますし、今西優斗キャプテンを中心に主体的に行動して、「今は何がダメで、何が良くて、次はこうしていこう」という話し合いができているので、そこがドルフィンズの強みです。
「今後はキラリと光るものが何個もないと通用しない」
――Bユースチームの当面の課題は何でしょうか。
今、思いつくのは2つあって、一番難しいのは、Bユースには将来プロになりたい選手が集まっているので、その選手たちが「何を武器にすればプロになれるか」というところに取り組むことです。今後、BリーグがBプレミアになった時には外国籍選手が増えて、日本人選手がどうやって生きていくかも課題になります。そこで、昔はキラリと光るものが一つあれば良かったかもしれませんが、今後は何個もないと通用しなくなります。チームの台所事情でインサイドをしている選手がBリーグを目指すのであれば、オールラウンダーに育てながら、その中で勝てる形をいかに作るか。そこは難しいですが、トライしたいところです。
もう一つは、先ほど部活動は1対1が強いと言いましたが、他にもルーズボールを取り切るような泥臭さや、ひたむきさや一生懸命さがあると感じていて、そこはバスケットボールをする上で根幹になる部分です。自分も部活動出身ですので、今のユースの選手たちを見ていると、そういう泥臭さは足りない部分だと感じています。
Bユースはトップチームと連携して同じ戦術で戦っているので、戦術やスキル面ばかりにどうしても目が行くんですね。そんな中で、最終的に勝敗を決するのは、どっちにボールが転ぶか分からない時に「取り切る力」だと思っているので、そういった面は先ほども言ったように、同じ愛知県内の高校と練習試合をすることで鍛えられています。
――Bユースのチームは戦術優先ということで、足りないと感じる泥臭さに関しては、体力、フィジカル、メンタルの練習はどうしても少なくなってしまうのでしょうか。
そこは、どうしても少なくなってしまいますね。私たちのチームでもミスをした後にヘッドダウンしてハリーバックしないとか、次のプレーに集中できていないとかあるので、そういう時は厳しく指摘します。そこはやっぱり、バスケットボールマンとして大切なところだと思うので。
――部活動のコーチの方に聞くと、学校で集団生活をすることで絆が生まれたり、様々な人間関係の中で役割をこなすことで「頑張り切る力」をつけることがある、という話をよく聞きますが、その点は、放課後と休日に集合するBユースと違いはありますか?
学校生活の影響は大きいと思います。「同じ釜の飯を食う」じゃないですけど、一緒に学校生活や寮生活を送ることで、チームの一体感が高まるのは間違いありません。学校や部活動にはいろんな人がいて、いろんな問題が起きますから、そういった中で集団生活をすることで、トラブルや喧嘩があっても、解決手段や乗り越える絆ができて、人間関係を学べると思うんです。そこはどうしてもユースチームの弱いところで、いまだに課題としてあります。そこはうるさいと思われるかもしれませんが、チームの絆については逐一指摘するようにしています。
「選手やスタッフが本当によくやってくれたおかげ」
――名古屋DのユースはU15も強豪ですが、U15とU18が連携できる強みはありますか?
それは大いにあります。それぞれ所属する選手たちの特徴と強みを把握しているので、U15からU18に上がる時には連携した指導ができます。それがユースチームの強みです。やはり、U15からU18に上がる選手より、外からU18に入ってくる選手は、その部分で苦労しているので。でも、それもまた対応力をつける練習になると思います。
――大西へッドコーチがコーチングする上で大切にしていることは何でしょうか。
大切にしているのは、その選手の強みを生かしてあげることです。ドルフィンズの持ち味である速いトランションというスタイルはあるのですが、そこに合わせるだけではなく、その選手の個性を引き出してバスケットをやらないといけない、と常に思っています。ただ、それはとても難しいし、その引き出しが僕の中にまだないので日々勉強です。最近、ようやく自分の中で、「選手個々の良さを生かしながら、コーチングスタッフの意見をすくい上げるようなコーチングをしなければ、良いものは出来上がっていかない」と気付けたので、そこを大切にしてしいきたいです。
――今後の目標を聞かせてください。
東海ブロックリーグのタイトルを取れたことは成果としてとても大きいです。Bリーグを代表して戦い、多くの方がサポートや応援してくれた中で、一つひとつの戦いを積み上げていって結果が出ました。それは、選手やスタッフが本当によくやってくれたおかげだと思います。
11月末からはBリーグの「U18 CHAMPIONSHIP」があり、それを勝ち抜けば2月には「U18 INTERNATIONAL CUP 2025」があります。先ほど言ったように、今度はBユースの特色の中で戦うので、ブロックリーグとはまた違う戦いになります。また、一つひとつ課題をクリアしていきながら、チャレンジしたいと思います。