ギャビン・エドワーズ

文・写真=鈴木栄一

リバウンドから攻めに転じる獅子奮迅の活躍

4月13日、千葉ジェッツはアルバルク東京と対戦。試合終了直前、富樫勇樹がゲームウィナーを沈めて59-57と競り勝った。この試合、劇的シュートを決めた富樫、第4クォーターだけで5スティールを奪った石井講祐とともに勝利の原動力となったのがギャビン・エドワーズだ。

前半、千葉は守備で我慢できた一方で「最初、シュートが入らないことで萎縮し、さらに打つべきシュートを打たなくてリズムを悪くしてしまった」と大野篤史ヘッドコーチが振り返る悪循環でオフェンスが停滞した。その中でもエドワーズはゴール下で奮闘し、第2クォーターにはチーム全体で16点の中、フィールドゴール5本中5本成功の11得点をマークする。彼の奮闘によって、千葉は前半で4点を追う僅差で折り返すことができた。

そして第3クォーターに不用意なターンオーバーもあって11点のリードを背負う劣勢となった時、この悪い流れを変えたのがエドワーズだった。リバウンドを奪うと、そのまま持ち味である機動力を生かして自ら敵陣のゴール下までボールを運んでそのままレイアップ。もしくはフリーの味方にパスをさばいて得点を演出する獅子奮迅の活躍。A東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチも「フリースローをミス、ターンオーバーをする。ファウルすべきところでしない。エドワーズ選手を走らせてしまった」と敗因を挙げたように、エドワーズの速攻が第3クォーターに連続で出たことは試合の大きな分岐点だった。

エドワーズは勝因を「ロースコアゲームで多くのシュートが外れたけど、我慢して1試合を通してハードなプレーを続けたこと」と語る。

また、本人が語るようにロースコアの展開の中、11点のリードを許してもチームは決して慌てなかったと振り返る。「僕たちはどんな展開になってもパニックになることはない。この2シーズン、僕たちはほとんど変わらないメンバーでタフな経験をしてきた。たとえうまくいかなくても、自分たちのやるべきことを続けていけば良い流れが来ることは分かっているからね」

ギャビン・エドワーズ

「自分がエースかどうかを気にしたことはない」

その流れを引き寄せた自身の速攻については「速いペースに持ち込めるのは良いこと。攻撃より守備にフォーカスしているけど、気分は上がるよ。A東京は他と比べてもイージーバスケットに持ち込むのが難しいチームだからね」と言う。

前半は不発に終わった速攻を後半に出せた理由をこう分析する。「前半は、僕が2回に1回くらいはゴールから遠ざかっていた。後半は常に速攻を狙うことができていた。毎回狙うことで相手チームは疲れる。そうなればオフェンスリバウンドに行くのは大変になるし、自分たちのテンポに持ち込みやすくなっていく」

『攻撃より守備にフォーカス』という言葉もあるが、今シーズンのエドワーズは平均得点を前年の18.1から13.6へと減らしている。ただ、エゴを持たない彼がそのことを気にすることはない。

「自分がエースかどうかを気にしたことはない。勝利のために何でもするだけ。自分が多くの得点を取ったところで、それでチームがプレーオフに行けなかったら、それは何の意味もないこと。すべては勝利のためにプレーするだけだよ」

ギャビン・エドワーズ

「自信は昨シーズンに比べて間違いなく強くなっている」

この勝利で千葉は、天皇杯を含めるとアルバルク東京に5勝1敗と大きく勝ち越している。だが、それでもエドワーズに油断や慢心は一切ない。昨シーズンのファイナルで、A東京に大差で敗れたことを彼は忘れていない。「レギュラーシーズンの成績に依存してはいけない。特にファイナルは一発勝負で、なんでも起こり得る。すべての試合でハードにプレーして、昨年の決勝で自分たちに起こったことが二度とないようにしたい」

ただ、これで残り3試合で地区優勝へのマジック1とし、チャンピオンシップのホームコートアドバンテージに王手をかけたことは「当初から狙っていたもの。もし、セミファイナルを栃木のホームで戦うことになったら、それはとてもタフだからね」と大きな価値があると言う。

エドワーズと言えば、常に謙虚で慢心とは無縁の選手。そんな彼でも、力強く断言するのが千葉の成長だ。「自分たちへの自信は昨シーズンに比べて間違いなく強くなっている。昨シーズンは試合の出だし、クォーターの出だしが悪かったらそれを長くひきずってしまった。でも今は『OK、自分たちのやるべきことをやろう』とより早く立て直せるようになってきている」

天皇杯に続くリーグ制覇に向け千葉は着実にステップアップしている。それをさらに印象づけるとともに、『走れるビッグマン』エドワーズの破壊力をあらためて実感した今回の逆転劇だった。

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