新潟に逆転負けを喫し、中地区2位が確定
川崎ブレイブサンダースは前夜の新潟アルビレックスBB戦を78-80で落とし、地区優勝を逃した。2点ビハインドで迎えた残り4秒、同点を狙った篠山竜青のシュートが外れ、タイムアップを迎えた。「今日の試合に関しては僕ですね」と、篠山は敗因を語る。「勝負どころで一つターンオーバーもありましたし、最後のシュートもそうです。ディフェンスのところでも判断ミスがいくつかあったので、今日は僕のところ」
篠山のラストショットが外れた要因は、『見えすぎた』視野に起因した。篠山はドライブでベースラインを通過するも合わせられず、再びリングにアタック。ゴール下で待つバーノン・マクリンへのパスか、自らがシュートを打つのか、最後まで迷ったという。
「ずっとバーノンは見えていて、(ラモント)ハミルトンがチェックに来ていて、さばくべきなのか、自分が打つべきなのか、最後の最後まで迷ってしまった。バーノンに出してフリースローになった場合も含めて、それなら自分のシュートのほうが良いんじゃないかと。自分の思考が、本当にトゥーマッチだったなって。それが中途半端なプレーに繋がってしまった」
思い切りの良いシュートは得てして入るし、迷いながら放つシュートは外れるもの。「見すぎた、考えすぎた、そういう判断ミスです」と篠山が言うように、マクリンへのパスを考えながら放ったシュートはリングに当たらず、大きくオーバーした。
『もうちょっといけるはずなのに』
川崎はニック・ファジーカスとマクリン、シェーン・エドワーズを同時起用するビッグラインナップで最終クォーターを戦った。追いつかれることは多々あったが、新潟にリードを許した時間は約30秒間と、優位に立っていたのは川崎だったと言える。篠山も「良い面もたくさんありましたし、ポイントポイントでは抑えられていたので、悪い感覚では決してなかった」と言う。
ファジーカスも以前から、「このビッグラインナップはチームにとって一番強い」と話すように、川崎にとって大きな武器となるはずだが、結果からすれば、ビッグラインナップが機能しなかったことが敗因だった。篠山も『理想と現実』の違いにいまだ戸惑っている。「チームが理想としてる完成度には至っていないかなとは感じました。もうちょっと行けるはずなのに、というもどかしさも、手応えと同時に感じます」
今シーズンの川崎はファジーカスが帰化したことにより、中地区は川崎の『1強』と見られていたが、蓋を開けてみれば勝ち星はなかなか伸びず、地区優勝を新潟に譲ることとなった。
篠山はそんな現在のチームに、強さと脆さの両方を感じている。「今年のチームは、ディフェンスで我慢してオフェンスがカッチリ噛み合えば、どこにでも勝てるチャンスはあると思うんです。でもその一方で、少しでも歯車が狂ってしまうと、どこにでも負けてしまうというような脆さもあって、そこをチャンピオンシップに向けて高めていかなきゃいけない」
のしかかった「勝って当然」の重圧
優勝候補と見られることはモチベーションを刺激し、シーズンを戦う上でメンタルに良い影響を与える。だが、期待に応えられていないもどかしさが長く続くと、バスケットに向き合う気持ちの持ちようは難しいものとなる。
「自分たちのポテンシャルを考えると、今シーズンは負けられないというか、勝って当然、負けたらなんでだ、って見られます。勝ってホッとすることはあっても、めちゃくちゃうれしいとか、そういうのがチーム全体的に味わえてないと思うんです」
そんな状態だからこそ、バスケットを楽しむという原点回帰も必要なのではと、篠山は考える。「順位は決まっちゃったので、残りの試合はもっと1プレーに対して、チーム全体で楽しむ。そういう部分に立ち返ってもいいかなとは思っています」
新潟に敗れたことで、川崎は中地区2位でのチャンピオンシップ進出が決まった。篠山が言うように、楽しむことで見えてくることや、チームが好転することもあるかもしれない。残り3試合を消化試合にするのではなく、バスケットの楽しさを思い出し、チャンピオンシップに向けて心身ともにベストの状態に持って行くことが求められる。