一昨年は3回戦で強豪の桜花学園を1点差で破り、昨年は準々決勝で優勝候補だった大阪薫英女学院に2点差で競り勝った東海大学付属福岡。大方の予想を覆す快進撃を見せてはいるが、いまだ決勝進出は果たせていない。今年のインターハイでは県予選直前にキャプテンでエースの伊東友梨香が右膝前十字靭帯断裂を負傷し欠場するアクシデントもあったが、チーム一丸となりベスト4入りを果たした。下級生中心ながら成長を続けるチームを指揮する宮﨑優介コーチは「今年こそは」と初のファイナル進出、その先の全国制覇を目指す。
「学びの多い時間を過ごすことができました」
──去年のウインターカップから、どんな1年を過ごされてましたか。
主力であった3年生が引退した後は、 伊東友梨香、チャラウ・アミというインサイドプレイヤーを軸に新チームをスタートさせました。今年のインターハイは地元である福岡県での開催でしたので、下級生主体のチームでベスト4という結果を残せたことは、今シーズンのスタートとしてすごく良かったと感じています。
──伊東選手が前十字靭帯をケガしてしまったのは、チームとして計算外だったと思います。
インターハイ福岡県大会の直前に右膝前十字靭帯断裂を切ってしまうハプニングの中、チームが一丸となって県予選に臨めたことは、インターハイに向けての弾みになりました。でも「伊東がいたら」というようなゲーム展開は多かったので、そこは彼女が2年間積み上げてきたチームに対しての貢献度の高さをすごく感じました。
──今回、初めてU18日清食品トップリーグへ参加されましたが、どうでしたか。
強豪チームとの対戦で学ぶことは多いですが、 昨年、一昨年はインターハイやウインターカップの舞台でしか対戦する機会がなかったので、トップリーグに参加させてもらったことで、9、10月がチームにとって学びの多い時間になりました。チームにとってもすごく良いものになったと感じているので、今回の経験をウインターカップに繋げていきたいです。
──宮﨑コーチは試合中の最終的な決断だったり、大事な場面での采配を選手に任せることが多い印象です。「選手に託す」のは簡単ではないと思いますが、どうやっていますか?
練習中と同じようなシチュエーションが起こった時は、安心して見ていられます。セットプレーもいくつか準備していますが、今回トップリーグで使ったセットプレーが県予選でアジャストされたりすることがあったので、そういった部分では、最後『選手たちの決断力』に勝敗を委ねていると言えば委ねているのかもしれません。今は、練習中に何度厳しく言われてもなかなか克服できなかった粗削りな部分を、磨いて磨いて、やっと光り始めているかなと感じられるようになってきたので、ウインターカップが楽しみです。
──ベンチでは冷静でクールなイメージの宮崎コーチですが、強豪チームとの対戦にはどんな心理状態で臨んでいますか。
チーム立ち上げの時から、強豪チームの先生方が作るバスケを勉強させていただいてきたので、対戦できることはすごく光栄です。 試合前はもちろん、スカウティングをして選手たちと共有するという時間はありますが、どちらかと言うとワクワクしながら大会に臨んでいますし、チャレンジすることが私自身にとって大きなエネルギーになっています。
「伊東という存在がチームにとってプラスに働く」
──成長を続けるチームの中で、特にここがすごいというところを教えてください。
福岡県予選の福岡大学附属若葉戦は「ここを勝たないとウインターカップが見えてこない」という一戦だったのですが、最終的にリードして第4クォーターを迎えて、終盤で浜口ゆずのターンオーバーから延長に入り、延長で浜口が退場する場面がありました。その時に浜口が涙を流している中、留学生のチャラウが「リードしてるんだから、泣くとこじゃないよ」と言った一言を聞いた時に、「この試合は勝てる」と思いましたし、すごくチームとして大きくなりつつあると感じました。バスケが進化しているかというと、まだまだなところはありますが、一人ひとりの人間性の成長を感じています。
──反対に、克服しないといけないところはありますか。
トップリーグの中では、リバウンドミスだったり、ターンオーバーで相手に流れを持っていかれて、自分たちに流れを持ってこられない、得点が伸びないシーンが多かったです。ウインターカップまでに、もう一度基本を見つめ直して、ルーズボールやリバウンドではどこにも負けないという泥臭さを、選手たちに自覚させて臨みたいと思ってます。
──オフェンス面でのポイントを教えてください。
チャラウの魅力としてリムランがあるので、トランジションの中での早い展開ですね。それと、県予選で根間芙奈から東口紅愛へディフェンスからのブレイクが出たシーンがあったんですが、そういうシーンを数多く出せるように練習をしていたり、トップリーグや県予選でやっていたバスケとは違うバスケを準備しています。
──ケガをしてプレーできない伊東選手もベンチに入るそうですね。
伊東はインターハイ予選の直前に右膝前十字靭帯断裂を切ってしまいました。キャプテンがいなくなる中で、チーム一丸となって県予選に臨めたことでインターハイに弾みが付きましたが、大会中に「伊東がいたら」というようなゲーム展開は多かったので、そこは彼女が2年間積み上げてきたチームに対しての貢献度の高さをすごく感じました。
ただ、その後の伊東はチームをサポートする側に回っています。紅白戦をする時は「じゃあ、片方のチームは私がコーチする」みたいな感じで、もう練習中から面白いですよ。今までコートの中でしかバスケをしたことがなかった彼女が、チームを鼓舞しながら、コート外で学ぶことをしっかり学んでいます。
伊東は今回、アシスタントコーチとして登録しています。1年生から常にチームの中心にいた選手なので、3年間の集大成となるウインターカップでプレーできないのは今でも悔やまれるところですが、だからこそもっとコートにガンガン入って来てほしいです。プレーできない伊東には酷かもしれませんが、私が彼女に求めるものは多いので、あとは彼女がどう解釈してくれるかです。私としては、ベンチでもっと伊東らしさを出せると思っています。それこそ、去年のウインターカップにケガで出場できなかった浜口さくらにカメラが寄ったように、今回は伊東がそういった雰囲気、チームをさらに大きくする力を出してくれることを期待しています。
「東海大福岡らしいバスケットを体現していきたい」
──2年連続でミラクルを起こしました。「2度あることは3度ある」と期待して良いですか。
まずは1戦1戦の勝負になりますが、トーナメントの中でチームが大きく成長していると今年の夏も感じたので、ノーシードであることをプラスに捉えて、1試合1試合成長していくような準備を進めてきました。県予選では選手たちが「こんなバスケもあるんだな」というプレーをいくつか試すことができたので、それらの質を上げながらトーナメントを一つひとつ勝ち進んでいきたいです。過去の2大会はメインコートには立てたものの、あと1つ上のファイナルステージには立てていないので。私も選手たちも「今年こそは」と思っています。
──最後に、全国で東海大福岡を応援してくれてる方々に応援メッセージをお願いします。
今年の東海大福岡は下級生主体のチームですが、3年生もこれまで積み上げてきた努力の証を後輩に伝えていきながら、チーム一丸となって東海大福岡らしいバスケを体現していきます。また、ミラクルを期待していただくというところで、ぜひ熱いご声援をいただければと思います。