アウェーの大阪戦に連勝「みんなが信頼し合ってプレーして勝ちに繋がっている」
11月3日、琉球ゴールデンキングスはアウェーで大阪エヴェッサと対戦。第1クォーターで2桁のリードを奪って主導権を握ると、大阪の反撃を要所でしっかり抑える先行逃げ切りで95-84と勝利した。
琉球は前日の初戦、第3クォーターに37-16のビッグクォーターを作り出し96-76で快勝。大差で勝利した翌日の出だしは、前日のリベンジに燃える相手に対し受け身になってしまうことが珍しくない。しかし、この日の琉球は立ち上がりからエナジー全開の激しいプレーでいきなり17-4のビッグランに成功した。
琉球の桶谷大ヘッドコーチも勝因にこの先制パンチを挙げる。「これで勝負が決まったとは言わないですけど、第1クォーターから自分たちが主導権を握る戦いができました。後半、プレッシャーをかけられて厳しい時間帯がありましたが、誰が出ても自分たちの役割を徹底していました。得点も止まらず、守備では相手を連続でストップできる場面があって、しっかりと自分たちがゲームをコントロールできたと思います」
琉球は10月30日、マカオでEASL(東アジアスーパーリーグ)を戦い、そのまま大阪に遠征するタフな日程の3試合を全て勝ち切った。「水曜ゲームもあって、土日とずっと試合が続いている中、コーチ陣のスカウティングも簡単ではないです。練習もウォークスルーしかできていない中、みんなが信頼し合ってプレーして勝ちに繋がっている。良いチーム作りができているのでこれを続けていきたいと思います」
このように指揮官は、今のチーム状況に手応えを得ている。これで琉球は、島根スサノオマジックにアウェーで61-98と屈辱的な大敗を喫して以降、5連勝となっている。この復調について、指揮官は島根戦が自分たちの課題と真摯に向き合い、チーム全体で改善に取り組むきっかけになったと明かす。
「島根戦は、スカウティングしたことに対してやりきれていなかったです。また、僕たちも選手たちへの指示を詰めきれていなかった。あの時は本当にそれぞれが違う方向を向いていました。このままでは、いつまでたってもチームの土台が作れない。そこから今はやるべきことを、しっかりやるようになっています」
島根戦の大敗後の変化「選手たちは常にポジティブで、それが良い雰囲気に」
桶谷ヘッドコーチは、次の変化が大きいと続ける。「特にチームメートに対して、ネガティブな感情を出すものではないとそこも含めて一回反省して、それに対して今、選手たちは常にポジティブでそれが良い雰囲気をもたらしています。誰が出ても、若い選手がミスをしようが、大丈夫というチーム内の包容力があるからみんなが伸び伸びとプレーできています。その結果、若い子たちが自信をつけているので失敗してもチャレンジを続け、みんながどうやったら強くなっていくのか理解しながらチーム作りができています」
島根戦以降、特に大きな変化が見えている1人がヴィック・ローだ。チーム2年目の今シーズン、主将も務めるローは、彼の魅力である負けん気の強さに加え、リーダーとしての強い責任感が時に裏目に出ることがあった。シュートタッチが悪い時でも個で打開しようと強引な攻めでチームオフェンスのリズムを崩し、そして負の感情をコート内で出してしまう場面が見受けられた。
だが、この連勝中の彼はプレー選択がより的確になった。特にこの試合はフィールドゴール7本中3本成功に終わるなどシュートタッチは決して良くなかったが、ゴール下で泥臭いプレーを続け、オープンの味方にしっかりとパスを出すなどチームファーストの献身的な姿勢が光った。
桶谷ヘッドコーチは「島根戦の後、1人の選手のムードでチームを潰さないでほしいと結構厳しいことを言いました」と、ローとのやりとりを明かし、彼の変化に目を細める。「今は高いレベルでチームメートにかなりポシティブな発言をしてリーダーシップを取っています。コートで倒れた選手がいたら真っ先に駆け寄って起こしにいく。今、彼がチーム内の良い雰囲気を作ってくれているのは間違いないです」
「B3の選手だからレベルが低いかと言われたら、僕はそうでもない」
もう1つ、今の良い流れに大きな貢献をしているのが、開幕戦で伊藤達哉が全治2、3カ月の負傷離脱したことを受け、B3の横浜エクセレンスから11月13日までのレンタル移籍で加入している平良彰吾だ。彼が控えポイントガードとして、1試合10分以上のローテーション入りを果たしてから、チームは負けなしだ。
27歳の平良はこれまでB1でのプレー経験がなく、過去3年間はB3でプレーしていた。それが開幕直後に加入し、チーム練習も満足にできていない中、B1でも屈指の強豪である琉球でローテーション入りしている。B3からいきなりB1にうまく適応できているのは大きなサプライズだ。
だが、桶谷ヘッドコーチは「僕はB2(2018-19、19-20シーズの仙台89ERS)でコーチをやっていました。B3の選手だから(B1、B2と比べると)レベルが低いと勘違いをしている人もいるかもしれないですが、僕はそうでもないと思っています」と語る。
Bリーグ屈指の実績、経験を誇る指揮官は、選手が活躍できるためには何よりも適材適所で起用することが重要と続ける。「B1、B3と場所が違うだけで平良彰吾は平良彰吾です。彼はどのカテゴリーにいても、彼に合った役割を与えることで活躍できる選手だと思います。逆に今B1で活躍できない選手が、B2やB3に行ってもすぐに活躍できるという訳でもないです。大事なのは、選手に適した役割を与えることができるか。その上で平良のようにしっかりとチーム内の役割を理解してプレーできたら、彼以外でもB1で活躍できるB3の選手はいると思います」
今シーズンの琉球は元々、ロスター全員を起用していくことで生まれる一体感を強みにする方針の元、11名と人数を絞った状態で開幕を迎えた。それが開幕戦で伊藤が離脱し、いきなりプランが狂うことになった。さらに今節は、先発メンバーの松脇圭志が体調不良で欠場となっていたが、文字通りの全員バスケで勝ち切った。
桶谷ヘッドコーチは、平良の今の活躍は彼のハードワークによるものと強調する。それが第一にあるが、同時に平良がここまでチームにフィットできているのは、彼を信じてチャンスを与える指揮官の決断力、そして平良をうまくサポートできる琉球の高いチーム力が根底にあるのは間違いない。
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