トレイルブレイザーズ

写真=Getty Images

リラード「このチームの力は本物」

トレイルブレイザーズは、今シーズンも周囲の予想を良い意味で裏切った。例年通り、開幕前の評価は芳しくなかったが、激戦区の西カンファレンスで50勝をマークし、2シーズン続けてカンファレンス3位でプレーオフに進出できる可能性も残されている。

ただ、仮に3位でレギュラーシーズンを終えられても、そしてファーストラウンドでどのチームと対戦することになっても、こちらも例年通り、彼らはアンダードッグとして見られるだろう。特に今シーズンは、CJ・マッカラムが左ひざを痛めて離脱中で、復帰時期は未定。ユスフ・ヌルキッチも今シーズン終了の重傷を負ったばかりだ。しかし、彼らは主力がチームを離れてからも大崩れすることなく、年間50勝という限られたチームしか成し遂げられない難しい目標をクリアした。デイミアン・リラードは、『The Athletic』に「自分たちより弱いチームは、(主力の離脱を)言い訳にするだろうね。でも、このチームは違う」と語る。

シーズン前には、すでにチームケミストリーができあがっている彼らの絆を強くする悲しい出来事が起こった。チームオーナーのポール・アレン氏が、シーズン開幕3日前に非ホジキンリンパ腫のために他界し、彼らは心を痛めた。

『The Athletic』によれば、ヘッドコーチのテリー・ストッツは、今シーズンの全試合で、オーナーのイニシャルが入ったバラのピンをスーツの胸部分に着けている。生前アレン氏は、試合前にストッツのオフィスに頻繁に顔を見せ、練習にも頻繁に訪れ、ロッカールームで選手、コーチを出迎えることも多かった。常にチームのことを考え、ケアを欠かさないオーナーだった。

「もちろん忘れるわけがないけれど、時々、ミスター・アレンが亡くなったことを気づかされる」と語ったリラードは、毎年プレーオフに向けてチームの士気を高める動画を製作している、アシスタントコーチ兼ビデオコーディネーターのジョナサン・イムに、今年の動画にはアレン氏の映像を加えるよう頼んだという。

「今シーズンは本当にたくさんの困難に直面した。でも、それでも自分たちは崩れなかった。それは特別なこと。ここ何年かでは、一番アップダウンが少なかったシーズンだと思う。自分がこのチームでプレーするようになってから、安定感、継続性ということをずっと話し合っている。それを今シーズンは実行できているんだ」と、リラードはいう。

そして、それだけのプレーができている理由を聞かれた彼は、間を空けずに即答した。

「このチームが強いからだよ。力強さが備わっているんだ。もう何度も同じことを繰り返し言っているから、みんなも聞き飽きているだろうけれど、このチームの力は本物。本物なんだ」

リラードは、自分たちに対する周囲の低い評価について仲間たちと話し、チームの反骨精神に火を点けた。そして、亡きオーナーのためにプレーすることを全員で意識するため、リラードは同氏の功績を称えるために作った特別なシューズを履いてプレーした。リラードは、自分自身を含め、チーム全員が感情と集中力をコントロールする必要があると言う。

「タフにならないといけない。心の中では、オーナーを亡くしたことの意味を理解している。ヌルク(ヌルキッチ)を失って、CJがプレーできないことも分かっている。でも、そういう気持ちを持って戦うわけにはいかない。やるべきことをやらないといけない。こういう姿勢が、自分たちの強さを物語っていると思う」

現時点では、ファーストラウンドでジャズ、もしくはクリッパーズと対戦する可能性が高い。主力の負傷に加えて、プレーオフ10連敗中という戦績も、ブレイザーズが不利と思われてしまう要因の一つだ。それでもリラードが言うように、今シーズンのブレイザーズは、厳しい状況にも負けず、西の上位をキープし続けた。

来週からは、いよいよプレーオフが幕を開ける。ブレイザーズは、目の前にどんな試練が立ちはだかろうと、亡きオーナーのため、戦いたくても戦えないヌルキッチのため、心を一つにして立ち向かう。