文=鈴木健一郎 写真=B.LEAGUE

田中大貴とのマッチアップは「ガンガン来て楽しいです」

前節、大阪エヴェッサはアルバルク東京を相手に連敗を喫した。第1戦は終盤までもつれる大接戦でA東京を苦しめるも勝ち切れず、続く第2戦では立ち上がりから圧倒され、抵抗できたのは後半開始からの限られた時間帯のみ。

58-75と敗れた第2戦を終え、キャプテンの今野翔太は試合開始直後の攻撃機会でターンオーバーを犯した自分のミスを「こういう立場で最初ターンオーバーから入ってしまったのはアカンと思います」と悔やんだ。

それでも23-41で始まった第3クォーター、一時は3点差まで迫る猛追を演出したのが今野だった。このクォーターは10分フル出場し、前半だけで12得点2アシストと絶好調の田中大貴を0得点0アシストと沈黙させ、大阪の時間帯を作り出した。

リーグの看板選手とのマッチアップを「あれぐらいガンガン来てもらうと僕は楽しいです」と今野は言う。

実際、田中はガンガン仕掛けたし、今野はバチバチにやり合った。第3クォーター残り5分34秒、根来新之助が正面から3ポイントシュートを放った場面、リバウンドに備えて激しくポジションを争う2人。肘を押し付けて今野を突き飛ばした田中に、アンスポーツマンライクファウルがコールされた。「アンスポの前にもバチバチやり合っていたので、田中選手もイライラしてたと思います。僕としてはイラつかせて正解です」と、今野はこのシーンを振り返ってニヤリと笑う。

試合が終わってみれば今野の口から出て来るのは称賛の言葉だった。「やっぱりうまいです。あれぐらいガンガン来てくれるのが日本の代表選手だと思うとうれしいです。うまい選手はたくさんいますが、田中選手はドライブからのフィニッシュ力が違いますね」

ただし今野も歴戦のプロであり、「僕はディフェンスマンですから」と守備には自信がある。ひとしきり田中を褒めた後は、「止める自信はありましたし、1対1ではそんなにやられていないです」と胸を張った。

大阪の現状は「追い付く力はあるんですが、その先です」

大阪はその前の週に試合が組まれていなかったため、準備期間が十分にあった。今野は、ギャレットとのマッチアップを想定して入念に準備をしてきたそうだ。

「ギャレットは僕がマークする予定でした。ピック&ロールからの守り方として、基本は下を通ってファイトオーバーせずにアンダーで守って、3ポイントにはちょっとコンテストするだけで、ドライブはしっかりコースに入ってタフなショットを打たせようと考えていました」

「田中選手とのマッチアップは楽しかったですが、やはりギャレットとやりたかったですね」と残念そうな今野。アルバルク東京との対戦はこの2試合のみで、今シーズン中に再戦するにはチャンピオンシップでぶつかるしかない。

現時点で、西地区2位の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、ワイルドカード下位に付けるサンロッカーズ渋谷はともに22勝21敗、21勝22敗の大阪とは1ゲーム差だ。

今野は第2戦の展開を「追い付く力はあるんですが、その先ですね」と振り返った。「クロスゲームになって競ったところで、細かいミスが出てしまう。簡単に言えば『若さ』なんですが、若さじゃ片付けられません」

大阪が浮上するためにカギとなるのは『チームであること』

A東京に競り負けた試合も、今の順位も同じ。「追い付く力はあるが、その先」なのだ。あと1ゲームではあるが、勝ち越しているチームと負け越しているチームには差がある。小さいようで大きな一歩を乗り越えられるかどうか。これがシーズン終盤戦の大阪の課題となる。

現状を突き抜けるためのカギは何だろうか。「僕らは代表選手が一人もいないので、チームで勝っていかなければいけない」と今野は言う。「シーズン残り少ない中でチーム力をもっと上げて、個々の能力の差をチームで、特にチームディフェンスで乗り越えないといけないです。個々の能力が高いチームはそれほど考えなくていいのかもしれませんが、僕らは『チームであること』にもっとフォーカスする必要があります」

「僕たちそれぞれの自覚と自信だと思います。自分の持っているどの部分がチームに求められているのか、それぞれ考えて明確にすることです。それをコートで出すことができれば自信になっていきます」

37歳になった大ベテラン木下博之、31歳の今野とリチャード・ロビーの3人だけが30代と、大阪は若いチームだ。今野の言うようにクロスゲームで『若さ』が出てしまうのも仕方がないのかもしれない。ただ、若さは伸びしろと言い換えることもできる。シーズン終盤戦に波に乗れば、思わぬ爆発力を見せられるかもしれない。これから先、キャプテンの今野がチームディフェンスの先頭に立って若手を引っ張ることで、ブレイクスルーは可能なはずだ。