倒れた佐藤に代わり、小野寺が試合を決める
インターハイ準決勝、東山は立ち上がりに福岡第一の勢いに飲まれてしまい、早々に2桁のビハインドを背負った。エースの瀬川琉久が徹底的にマークされて持ち味を発揮できない中、2年生ガードの佐藤凪が東山の追い上げを主導し、第3クォーターに逆転した東山が試合の主導権を握った。
それでも第4クォーター残り5分、シュートを放った着地の際に佐藤が足を痛めてプレーを続けられなくなる。押し返そうとする福岡第一が勢いに乗りかけるたびに、その流れを切ってきたキーマンの離脱は、東山の優位を吹き飛ばすアクシデントだった。
残り5分で8点リードはセーフティリードとは言えない。そして何より、佐藤がコートからいなくなったことで福岡第一は追い上げへの自信を取り戻していた。しかし、佐藤に代わって入った小野寺星夢が勝負強いシューターの本領を発揮して、2本連続で3ポイントシュートを沈める。佐藤が抜けても他のメンバーが慌てることなく、福岡第一が最大までギアを上げた猛プレスを受けながらも落ち着いてボールを回し、小野寺のワイドオープンを作り出したプレーメークも見事だった。
こうしてセーフティリードではなかったはずの点差をさらに広げ、68-52で試合終了。地元チームの福岡第一を撃破した。佐藤が23得点、小野寺が13分の出場で9得点、カンダ・マビカ・サロモンが10得点21リバウンドと活躍したが、大澤徹也ヘッドコーチは「控えで出てくる3年生もスタッツに残らない仕事を、今日もそうだし昨日の試合でもやってくれた。そういった部分がチームにとってのプラス要因」と、チーム全員での勝利であることを強調する。
「佐藤の意思を小野寺が継いでくれた。チームでこうやって戦っていく部分はスポーツの良いところ」と大澤ヘッドコーチは語る。
「抜けたのは申し訳ないですけど、勝てて良かった」
その佐藤は両足を攣っていた。「前半は良くない入りだったんですけど、気持ちで巻き返すことができました。途中で抜けちゃったのは申し訳ないですけど、勝てて良かった」と安堵の表情を見せる。ベンチで涙を流したのは、痛みではなくて「途中で抜けるのが悔しくて」とのこと。勝負どころで次々とシュートを決めていたが、シュートタッチが良い感覚はなく、「ホント気持ちで決めた感じです」とのこと。
東山は何度も全国大会の決勝に駒を進めているが、ファイナルでなかなか勝てずにいる。その悪い連鎖を明日断ち切ると佐藤は誓う。「まだ結果は出ていません。優勝してこそ変えられると思います。ここで満足せず、明日に向けてしっかり準備していきたい」と語る。
ケガの状態が気がかりだが、佐藤は明日もプレーするつもりだ。頼りになる2年生はこう言い切った。「自分たちのプレーを貫き通すことをテーマに明日もやっていきます」