文=丸山素行 写真=鈴木栄一、B.LEAGUE

攻守両面で威力を発揮し、アルバルク東京を撃破

アルバルク東京との首位攻防戦、その第1ラウンドが3月5日に行われた。栃木ブレックスは序盤に0-12の猛攻を受け劣勢を強いられるが、最終クォーターで13-0のランを生み出し74-66で接戦をモノにしている。

リーグ2位の平均83.9得点という攻撃力を誇るA東京をわずか66点に封じる、栃木の強固な守備が光った試合だった。

栃木のパワーフォワード、ジェフ・ギブスはBリーグの前身にあたるJBLとNBL時代の6シーズンをトヨタ自動車アルバルク(現在のアルバルク東京)で過ごした。そして、Bリーグがスタートした今シーズンから栃木でプレーしている。

そんな古巣との対戦にギブスは「少し気負いすぎた」と長年在籍したチームを相手に少なからず特別な思いだあったことを認める。

「最初のクォーターは古巣に対して、相手のホームということもあって少し気負いすぎた。それが少し自分のあまり良くないパフォーマンスに繋がってしまったと思う。落ち着いて自分のプレーをやろうと心掛けて後半は臨んだ」

前半を終えてギブスは無得点。それでも後半に入るとギブスは持ち味を発揮し11点を記録。なかなか点差が詰まらない我慢の時間帯での連続ゴールは価値のあるものだったし、インサイドで身体を張ってオフェンスリバウンドに絡み続けるシーンは印象的だった。

「自分のストロングポイントはインサイドのパフォーマンスだと思うからチームとして苦しんでる時、自分がやるべきことを頭に置いてプレーしたんだ」

188cmのビッグマンの秘密は身体の強さとポジショニング

オフェンス面での貢献もさることながら、特筆すべきはディフェンスでの働きだ。ヘッドコーチのトーマス・ウィスマンは勝因をディフェンスと語り、特にギブスと田臥勇太の名前を挙げた。その話を伝えると「チームでも最年長の2人がディフェンス面のカギになるのは……」と苦笑しながらも、後半のディフェンスには満足気な様子を見せた。

「チームディフェンスで後半を10点と13点に抑えることができたのはとても良かった。自分たちは何をやるべきかを熟知しているから、それをやっていくだけだね」

田臥とギブスは1980年生まれの36歳、栃木ではこの2人がチーム最年長だ。それでも「自分たちも36歳だと思ってプレーしていない」と健在ぶりをアピールした。

Bリーグではどのチームも200cmを超える長身選手をインサイドに揃えている。日本人ビッグマンでさえ2メートルを超える選手が少なくない中で、ギブスは188cmと決して大きくはない。いや、インサイドを主戦場とする選手としては小さすぎると言ってもいいだろう。それでもリバウンドをもぎ取り得点を量産できるのは「誰よりも身体が強いこと」と「ポジショニング」だと明かす。

「それは誰よりも身体が強いから。日々のウェイトトレーニングの賜物だね。身長がない分、重心が低いこともプラスに働いてると思う。でも秘訣はポジショニングだ。相手をしっかり押すことができてポジショニングを意識してプレーすることが得点につながっている」

強さと俊敏さを兼ね備えているのはアメフトのおかげ

確かに188cmとセンターの中では低いが体重は110kgあり、どこからどう見ても『小柄』ではない。一目でその恐るべきパワーが理解できる筋骨隆々の肉体は、一度見たら忘れられないインパクトの強さがある。

しかし、その身体が彼にとっては理不尽な事態を生み出すこともある。「7年間日本でプレーしている中で、ファウルされてもコールされないということがあった」とギブスは言う。しかも「自分のほうが身体が強いからだと審判から直接言われたこともある」というから驚きだ。

ギブスは長いウイングスパンを生かし過去にスティール王を2度獲得したことがある。それが証明するようにただ『ゴツい』だけではなく速攻の先頭を走ることのできる俊敏さも兼ね備えている。その理由をこう分析する。

「自分はアメフトをずっとやっていたからじゃないかな。力強さだったり、身体の当て方というのはアメフトで鍛えたところからきていると思う。21歳まではアメフトをやりながらバスケを続けていたからね」

漫画『スラムダンク』の中で赤木剛憲が「ゴール下は戦場だ!」と言っていたように、ペイントリアでの攻防は激しさを極める。戦場で一際輝きを放つギブスはその強靭な肉体を駆使してこれからも栃木を勝利に導く。