ビッグラインナップが機能するも、チームを強調
3月13日、川崎ブレイブサンダースは横浜ビー・コルセアーズの粘りに遭いながら83-76と競り勝った。川崎のエース、ニック・ファジーカスは18得点と、彼にしては少ない点数だったが、勝負どころでは見事な存在感を発揮し、勝利に貢献している。
第3クォーター中盤、自分たちのターンオーバーから崩れて10連続失点を喫し、50-51と逆転された直後、横浜の流れを断ち切る得点を奪ったのはファジーカスだった。これで立ち直った川崎は、逆に10連続得点を挙げて試合の主導権を取り戻す。第4クォーターでは得点に加え、3アシストとチャンスメークでも光るプレーを披露。横浜の反撃を食い止め、常にリードを保ちながら押し切る原動力となった。
これで川崎は、ワールドカップ予選での中断前も含めて7連勝。対戦相手はすべてチャンピオンシップ出場圏外のチームとはいえ、ファジーカスは「勝利を重ねることはチームの勢いへとつながっていく」と考え、「3月はまだ多くの試合があり、ここで勝ってプレーオフに向けて弾みをつけたい」と意欲を見せている。
連勝とともにチームにとってポジティブな要素が、バーノン・マクリン、シェーン・エドワーズの両外国籍選手と一緒にプレーするビッグラインアップだ。「僕の故障もあってシーズン前半に一緒にプレーすることが少なかった」と語るように、ほとんど起用されなかった実質『オン・ザ・コート3』だが、前節の福岡戦から使われる時間が増え、今回の横浜戦では第4クォーターの10分間すべてで3人が一緒にプレーした。
この布陣を「とても気に入っているし、もっとやっていきたい。プレーオフで戦う相手にとっても有効な作戦となる」と自信を見せるファジーカスだが、一方で「リバウンドに関してはサイズがあってベストな組み合わせだけど、守備に問題はある。もっとケミストリーを構築していかなければいけないし、チームバスケットボールとしてうまくやる必要がある」と、発展途上であることも分かっている。だからこそ『試合に勝る練習はない』というわけではないが、実戦での経験を重ねていくことを特に重視している。
3人ともに個で打開する能力に長けているが、あくまでチームとして攻めることをファジーカスは強調する。「大事なのは1対1ではなく、パスを回していくこと。そうすればより簡単にシュートを打てる。バーノン、シェーンと一緒にチームとしての動きの理解度を高め、パスをもっと増やせるようにしたい」
新潟との中地区首位攻防戦にも自信「エナジーがある」
川崎にとって次戦は、3ゲーム差で追いかける新潟アルビレックスBBとの中地区首位決戦。ファジーカスと新潟のダバンテ・ガードナー、リーグを代表するスコアラーの対決と周囲は見るだろうが、「そういう見方は馬鹿げている。あくまで川崎と新潟の戦いだからね」とファジーカスは言う。
そういう意味でも、「タフでチームディフェンスで止めなければいけない」とガードナー対策はチームでと語る。「誰か1人を警戒するのではなく、対チームとして良いプレーをすることが大切だ」
川崎にはまだまだ課題はあるが、開幕当初に比べてチーム力が上がって来ていることも確か。ファジーカスは「リーグ戦が中断したブレーク中、バーノンとシェーンは一時帰国した。僕と(篠山)竜青、辻(直人)はワールドカップの予選突破という素晴らしい経験ができた。そうやって個々にうまくリセットできたことで、みんなエナジーがある」と、チームの雰囲気が良くなっていることを肌で感じている。
川崎と新潟はまだ5試合残っており、この対決の行方が中地区の首位争いに決定的な影響を与えることは間違いない。川崎が今の勢いを維持して敵地でゲーム差を詰めるか。それとも新潟が返り討ちするか、今週末の試合が楽しみだ。