宇都直輝

文・写真=鈴木栄一

「あと一歩のところで何かを変えなければ」

3月10日、富山グラウジーズは琉球ゴールデンキングス相手に80-78と競り勝った。西地区首位の難敵を相手に前日敗れた雪辱を果たしたことで、富山は連敗を3でストップ。そして、プレーオフ最後の切符となるワイルドカード2位争いにおいても、名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのゲーム差2を維持する価値ある勝利となった。

この試合、富山は3ポイントシュートが好調な琉球に主導権を握られ、第4クォーター開始時には2桁のリードを許す劣勢に。しかし、そこから巻き返す原動力となったのは宇都直輝だった。

前日はフィールドゴール8本中2本成功のみの10得点と不発に終わったが、10日はフィールドゴール11本中7本成功の19得点をマーク。特に第4クォーターは、残り24秒での勝ち越し弾を含む2つのバスケット・カウントなど計11得点を挙げる圧巻のパフォーマンスだった。

最後までどちらに転ぶか分からない緊迫した試合だったが、「すごく楽しかったです」と宇都は語る。クラッチタイムを楽しむ余裕があったからこそ、終了間際にゲームウィナーとなったバスケット・カウントの場面で「時間がなかったのと、ミスマッチだったので行きました」と、的確な判断ができたのだろう。

チームだけでなく、宇都個人としても前日の消化不良となる内容からのカムバックを果たせた要因として、「昨日とそんなに変わりはなかったです。ただ、あと一歩のところで何かを変えなければいけない中で、自分が行こうという選択になったと思います」と、ゴール下へのアタックをより重視した。その積極性も最後の勝ち越しシュートに繋がった。

宇都直輝

「バリエーションの多い攻撃をできれば上位を狙える」

冒頭で触れたように富山は、プレーオフ出場に向けて厳しい戦いが続く。宇都、ジョシュア・スミス、レオ・ライオンズの3人を軸にしたオフェンスはリーグ2位の平均得点を挙げる一方、平均失点は現時点でワースト2位と課題は明確だ。

ただ、宇都は「ディフェンスを変えていこうと意識して、練習からすごく取り組んでいます」と言い、先週のアルバルク東京戦、今回の琉球戦と向上への手応えを得ていると続ける。

オフェンスに関しては、「自分たちが良い時は、全員が点を取れる時。ジョシュア、レオを主体にしつつ、僕が仲介役となって周りの選手にも点を取らせたり、自分も点を取りに行く。よりバリエーションの多い攻撃ができれば上位を狙っていけます」と、ポイントは理解できている。

振り返れば過去2シーズン、この時期の富山は残留プレーオフを視野に入れなければならない戦いを余儀なくされていた。しかし、今シーズンはチャンピオンシップという高みを目指しての戦いができている。ただ、この3年目のステップアップがチャンピオンシップを目指すところで終わるのか、実際に優勝に繋がる舞台に駒を進めるのかは大きく違う。富山が真のステップアップを果たすためには、司令塔でありながら得点、パス、リバウンドとすべてをこなす宇都の攻守にわたる奮闘が大きな鍵となってくる。

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