ホーバスHC「佐々木はプレータイムが短かったけど、もうちょっと見たい」
バスケットボール男子日本代表は6月23日、オーストラリア代表と強化試合2試合目を実施。第4クォーター残り1分半で6点のビハインドを背負うが、河村勇輝の連続得点により土壇場で追いつき、95-95と引き分けに持ち込んだ。
今回の2試合はパリ五輪に向けたトレーニングマッチであるとともに、代表12名の内、すでに当確と言えるメンバーが7人、もしくは8人いる中で残りの少ない枠を争う選考の場でもあった。ガードの佐々木隆成もサバイバルレースの渦中にいる1人だ。この試合が代表デビューとなった28歳の佐々木は、コンタクトによって眉から出血するアクシデントもあって、プレータイムは4分3秒に留まった。それでも、この限られた時間の中で持ち味のスピードを生かしたドライブで、見せ場をしっかりと作った。
そしてトム・ホーバスヘッドコーチも「佐々木はプレータイムが短かったけど、もうちょっと見たい。彼は10日間くらい前に捻挫して、長い間練習できなかったです。本当に治したばかり。でも今日は出ている時間は面白かったです」と語るインパクトを残した。
佐々木は次のように代表デビュー戦を振り返る。「初めてで緊張しましたが、それを良い方向に変えてやることができました。自分の持ち味の1つである、スピードを生かしたドライブで切り込んでいくプレーをある程度はできました。アクシデントがありましたが、あとは3ポイントシュートを決め、プレータイムをもっと伸ばしていけたらと思います」
NBA組は不在とはいえ、オーストラリア代表というバスケ強国を相手に爪痕を残せたことは大きな収穫となった「やっぱり、やらないと分からないところはあります。強豪のオーストラリア相手にある程度できたところは本当に自信になります。これからの僕のバスケットボール人生のプラスになればいいなと思います」
世代別の代表に選ばれたこともない佐々木にとって、今回は文字通り初めて日の丸を背負ってのプレーとなった。佐々木は「責任感の重さはものすごく感じました」と語るとともに、次の思いを抱いてコートに立った。「これまで合宿を続けてきて、メンバーに入れなかった人たちをたくさん見てきました。そういう人たちの思いも背負いながらやろうという気持ちで入りました」
「僕がフォーカスしないといけないのは、自分のプレーをすること」
現状、佐々木の立ち位置は河村勇輝、富樫勇樹に次ぐ3番手ポイントガードの座をテーブス海と争っている。3番手はワールドカップ2023の西田優大であり、前日のテーブスの起用法を見れば1番と2番をこなせるコンボガードの役割を求められる。佐々木は所属する三遠ネオフェニックスで司令塔の大浦颯太との同時起用を難なくこなし、コンボカードの経験は十分にある。ただ、代表のシステムにおいてホーバスヘッドコーチは、「ケガによって(練習でも)2番でプレーするチャンスが全然なかった。今回はポイントガードだけで、まだ2番ができるかは分からない。そこをもうちょっと見たいかな」と語った。
佐々木自身はコンボカードでの起用法について「トムさんにやってと言われたらやるだけです。そこで『できません』ということはないです。僕がフォーカスしないといけないのは、自分のプレーをすることです」と、特に意識することはない。
今シーズン、佐々木は三遠の中心メンバーとして中地区優勝の原動力となり、この活躍が評価され日本代表に招集された。そして今、パリ五輪代表まであと一歩のところまできている。2021-22シーズンまでB2の熊本ヴォルターズに在籍していたことを考えれば、驚異的なステップアップだが、本人は「達成感はあまりないです」と満足することはない。だが、一方でこれまで自分を信じてくれた人たちの期待に応えられたことへの充実感はある。「熊本にいた時から本当に周りの人たちは期待してくれていて、『代表まで行ける』と信じてくれた方々もいました。そういう人たちの思いを背負ってプレーできたのは良かったです」
当時の佐々木は、代表でプレーするチャンスが来るかについて「B2の時で、B1でまだプレーしたことがなかったので半信半疑でした。B1で通用するかもわからない状態だったので、絶対にできるとは思っていませんでした」と振り返る。だが、そこからB1で活躍し、今回代表でも確かなインパクトを与えた。すでに大きな下剋上を達成している佐々木だが、さらにパリ五輪出場という大きな偉業を成し遂げられるのか。より期待が膨らむ今回のデビュー戦となった。