ケイトリン・クラーク

「代表入りを目指すことで、よりモチベーションが高まる」

先日、パリ五輪のアメリカ女子代表メンバーが発表された。ダイアナ・トーラジ、ブリアナ・スチュワート、ブリトニー・グライナーといった百戦錬磨のベテラン、エイジャ・ウィルソンやケルシー・プラムら東京五輪後の代表を牽引している新世代などおなじみのスター選手たちが順当に選ばれる中、インディアナ・フィーバーのケイトリン・クラークがこれに選ばれなかったことが大きな話題となっている。

クラークはアイオワ大での4シーズンで通算3951得点を挙げ、男子を含むNCAA通算得点の歴代記録を更新。同大をNCAAトーナメント決勝に導いたスターガードとして、女子大学バスケ界において過去最大の注目を集めた。クラークは4月のWNBAドラフトの全体1位でフィーバーに指名されると、5月のシーズン開幕から中心選手として奮闘中。戦力不足のチームはリーグ下位に低迷しているが、クラークは徹底マークというプロの厳しい洗礼を浴びながらも、ルーキーとしては申し分ないプレーを見せている。

その類稀なスター性もあり、クラークの代表落ちは多くの人々にとってサプライズとなった。だが、継続性を主体とするアメリカ代表のチーム作りを鑑みれば、これは順当な結果と言えるだろう。クラークが傑出した才能の持ち主であることは間違いないが、アメリカ代表はWNBAのシーズンを一時中断してパリ五輪に臨むため、新しい選手を招集してチームにフィットさせる準備期間がないまま五輪本番を迎えるのが恒例。だからこそ今回のメンバーも、26歳のサブリナ・イオネスクが最年少という経験重視のメンバーとなっている。

ここまでクラークの代表漏れが大きな騒動となっているのは、昨シーズンに負った故障の影響で今シーズンのWNBAを欠場しているチェルシー・グレイが選ばれていることも影響している。東京五輪の金メダルメンバーで、WNBAで3度の優勝、ファイナルMVPも受賞しているベテランガードの実力に異論を挟む人はいない。しかし、今シーズンまったくプレーしておらず、コンディションに不安を抱えるグレイなら、クラークのほうが適任と考える人は少なくない。

だが、クラーク本人はいたって冷静に受け止めている。「代表メンバーを見てワクワクしています。(アメリカ代表入りは)世界で最も厳しい競争であることを分かっています。自分が代表に入っていても、いなくても代表チームの金メダル獲得を応援します」と語り、「代表は夢で、いつか自分もチームの一員になりたいです。代表入りを目指すことで、よりモチベーションが高まると思います」と続けた。

取材対応ではこのような無難なコメントで終えたクラークだが、フィーバーのクリスティ・サイドヘッドコーチには、落選を受けて「コーチ、彼らはモンスターを呼び起こしたね」とメッセージを送っている。

得点力はもちろんのこと、負けん気の強さも魅力とするクラーク。現在は、より多くの人が「彼女がパリ五輪に出るべきだった」と思うようなプレーを見せるという意欲にあふれているはずだ。