ドリュー・ホリデー

チームトップの26得点は「テイタムのおかげ」

セルティックスが105-98と快勝を収め、NBAファイナルを2勝0敗とした試合後の会見で、ドリュー・ホリデーは席に着くなり「まず僕から一つだけいいかな」と話し始めた。それは前日にマーベリックスの指揮官ジェイソン・キッドが、ジェイレン・ブラウンを『セルティックスのベストプレーヤー』と呼び、それについて「彼が嘘をついているとは思わない」とコメントした彼自身の発言についてだった。

セルティックスにはジェイレン・ブラウンとジェイソン・テイタムという2人のスター選手がいて、ファンはその序列を決めたがる。キッドがその話題に乗ったのは、セルティックスを揺さぶろうとしたのかどうかは分からないが、人々はその文脈で受け止め、ホリデーの発言も同じように扱った。

ブラウンはテイタムより優れていて、ホリデーもそれを認めている──。そんなストーリーが一人歩きするのをホリデーは嫌がった。「昨日の僕の発言は、僕がJT(テイタム)よりJB(ブラウン)が好き、みたいな話じゃない。僕はチームメートが良いプレーをしている時には褒めるべきだと思っていて、それだけのことさ。2人はプレーヤーとして全く異なる。彼らがこのチームで成し遂げたこと、どのように一緒にプレーして協力してきたかは、神聖であり侵すべきものではない。どちらか一方が優れている、というわけじゃない。僕は2人とも好きだし、彼らを比較したりはしない」

キッドの思惑は別として、SNSを中心に世間がどれだけ騒いでも、その揺さぶりはセルティックスに効かなかった。現地6月9日に行われたNBAファイナル第2戦、テイタムは18得点9リバウンド12アシストを記録。ペイントアタックからズレを作り出してはパスをさばき、チームオフェンスを活性化させてアシストを量産するプレーはエゴとは無縁のものだった。ブラウンは21得点4リバウンド7アシストを記録。彼も目立とうとするプレーは全くせず、ルカ・ドンチッチを抑えるディフェンスに力のほとんどを注いだ。

ホリデーはチームトップの26得点を挙げた。フィールドゴール14本中11本成功と高確率だったが、ビッグショットを決めた印象はない。チームで作り出したチャンスを決め続けた結果の26得点だった。

「JTのおかげだ」とホリデーは言う。「彼はバスケットにアタックし、ダブルチームを受けて、正しいプレーを選択した。オフェンスを引っ張り、ペイントエリアに入って僕のためにスペースを作ってくれた。すべて彼のおかげだよ」

「僕は勝つためならどんな仕事もする。このチームを勝たせるために連れてこられたんだから、そのために全力を尽くす。結局のところ、セルティックスは彼らのチームだ。僕に『自分のチーム』という意識がないわけじゃないけど、彼らが抱えるプレッシャーは僕のものとは少し違う。スーパースターである2人のプレッシャーに向き合う姿勢は立派なものだ」

優勝経験を持つ唯一の選手として、ホリデーはチームを引っ張る立場にいる。だが、先頭に立たなければいけないとは考えていない。「みんなが犠牲を払い、一つの目標に向かって進めば、チームの絆は強まる。成功も失敗も一緒に経験して何かを築くことには大きな意味がある。このチームはそういうグループであり、だからこの旅は素晴らしい」とホリデーは言う。

「みんなNBAファイナルまで来た経験がある。そのために何が必要かは分かっていて、実践してきた。僕が声を出して引っ張る必要はなく、ただコートに出てチームが勝つためにやるべき役割を一生懸命やればいい」