「最悪のターンオーバーで試合を台無しにしてしまった」
経験がモノを言うとされるプレーオフで、若手中心のペイサーズは苦戦が予想されている。バックスとニックスを撃破して迎えた相手は古豪セルティックス。気合十分で臨んだものの、それが空回りして試合開始から2分半でミスを連発して0-12と圧倒された。TDガーデンはすでにお祭り騒ぎで、ペイサーズの選手たちはカンファレンスファイナルの雰囲気に飲み込まれて自分たちのプレーを全く出せないように見えた。
だが、自分たちのスタイルであるタイリース・ハリバートン中心の速い攻めに立ち戻ると、マイルズ・ターナーとパスカル・シアカムでクリスタプス・ポルジンギス不在のインサイドを攻め立てる。立ち上がりのつまずきを取り戻して第1クォーターを31-34終えると、その後もセルティックスに食らい付く。ビハインドの時間帯が長かったものの、点を取り合う展開に持ち込んだ時点でペイサーズ優位の試合展開と言えた。
ペイサーズのリードは最大でも5点だけ。それでも第4クォーター残り2分にハリバートンのアシストからアンドリュー・ネムハードが3ポイントシュートを沈めて115-110とし、ペイサーズが土壇場で優位に立っていた。しかし、残り27秒でハリバートンがボールを運んでいる際のハンドリングミスを犯す。
ディフェンスに寄せられていたわけではないが、キャリアで初めてプレーオフを戦うハリバートンには、敵地でのカンファレンスファイナルで見えない重圧があったのだろう。『チームの顔』のミスはチームメートにも伝染した。残り8.5秒、ネムハードがリスタートのボールを預けたシアカムがキャッチし損ねてターンオーバーに。セルティックスは残り8秒からの攻めでブラウンがタフな3ポイントシュートを決めて土壇場で延長に持ち込んだ。
ハリバートンは延長の残り1分にもドリュー・ホリデーの執拗なプレッシャーを受けてターンオーバーを犯している。この時点では1点ビハインドだったが、ここでジェイソン・テイタムの3ポイントシュートを浴びると、クロージングの上手いセルティックスに残り時間を悠々と逃げ切られた。
133-128でセルティックスが勝利。ペイサーズは低調な立ち上がりから見事に巻き返し、低評価を覆すパフォーマンスを見せたのだが、試合を通じて21ものターンオーバーを犯した。ハリバートンは25得点10アシストを記録したものの、ターンオーバー3を記録。特に勝負どころでのターンオーバーで試合の流れが変わり、ほぼ手中に収めていた勝ちを取り逃したのだから、ミスの代償は大きい。
指揮官リック・カーライルは「ブラウンに3ポイントシュートを打たれたシーン、あの直前にタイムアウトをなぜ取らなかったのか。タイムアウトを取ってボールを前に進めていれば勝てていた。この負けは私の責任だ」と語ったが、これは選手たちに余計な精神的ダメージを与えたくないカーライルの配慮だろう。ハリバートンはそれを理解した上で「彼の責任じゃない」と話す。「僕は最悪のターンオーバー2つで試合を台無しにしてしまった。彼が僕を守ってくれているのは分かるよ。だからこそ、次はもっと良いプレーをしなきゃいけない」
そしてハリバートンは、今回の負けは悔しいが精神的ダメージはないことを強調した。「悪いシーンは頭の中でもう100回以上再生したよ。セルティックスが勝ち、僕らは負けた。そこで湧き上がってくるのは落胆ではなく勇気だ。僕らのプレーはダメだったけど、もっとできると分かっているからそう思うんだ。勝てる試合を落としたのは事実だけど、前の2つのシリーズよりもずっと良いプレーを僕らはやっている。だから今回の映像を見て失敗から学び、次の試合でその成果を見せる。悔しいけど、まだ1試合が終わっただけだ」
そしてハリバートンはこう続ける。「今日勝っていたとしても、それでシリーズに勝てたわけじゃない。明日はまた新しい一日になる。まだ先は長いし、やるべきことは多いから、正しい方法でやっていくだけさ」