佐古賢一の『バスケット談義』vol.9~チームを支えるファンの皆さまに感謝して、『B1昇格』というプレゼントを届けたい

2017/02/15
Bリーグ&国内
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文=岩野健次郎 写真=高村初美

華々しいスタートを切ったBリーグにあって、2部リーグである「B2」はやや注目度が落ちるが、それでもB1所属クラブに劣らぬ実力を備えた強豪も存在する。その一つが広島ドラゴンフライズだ。初年度のB1昇格を虎視眈々と狙うチームを率いる「Mr.バスケットボール」こと佐古賢一ヘッドコーチに、チームの状況やバスケ界の話を聞く。

PROFILE 佐古賢一(さこ・けんいち)
1970年7月17日生まれ、神奈川県出身のバスケットボール指導者。中央大学3年次に日本代表入り。卒業後はいすゞ自動車リンクスに入団し、2002年にはアイシンシーホースに移籍して「プロ宣言」をした。ずば抜けた技術と勝負強さで数々のタイトルを獲得し、2011年に現役引退。広島の初代ヘッドコーチとして2014年から指揮を執っている。

B2の西地区では、熊本ヴォルターズ、島根スサノオマジック、そして広島ドラゴンフライズの3チームによる混戦が続いている。広島は先週末、西宮ストークスと対戦した。中地区2位の強豪を相手に初戦は84-79、第2戦は65-64といずれも接戦になったが勝ち切っている。
3位の熊本が東京エクセレンスに痛い1敗を喫して一歩後退したが、それでも3チームともに勝率は東地区と中地区の1位チームよりも高く、西地区のトップ争いは先が読めない展開となっている。広島がB2優勝、そしてB1昇格という『大命題』を成し遂げるためには何が必要なのか、佐古賢一ヘッドコーチに聞いた。

悪いなりに勝つことはとても重要、チームの経験値になる

──84-79で勝利した西宮との初戦を振り返っていかがですか?

ゲームの入りは良かったのですが、第2クォーターでターンオーバーを連発して相手にイニシアチブを取られたところから試合がおかしくなりました。後半には良い展開を作れるようになり、朝山(正悟)、田中(成也)、北川(弘)といったガード陣の3ポイントシュートが効果的に決まって相手にダメージを与えることができましたね。

第4クォーターの最後、西宮のプレッシャーディフェンスやアグレッシブなオフェンスに対し受け身となったところは反省材料ですが、勝たなければいけないプレッシャーに対して選手がしっかりと結果を出したところが良かったと思っています。

──この試合の観客は4508人。チームの観客動員記録だけでなく、B2リーグでも最多の数字となりました。

シーズン開幕当初と比べて約3倍のファンの皆さまに集っていただきました。クラブが創設された3年前のことを考えると『夢のような光景』です。こんなにたくさんのファンの方にお越しいただけるということは、広島という土地にこれだけのポテンシャルがあるということですから、選手やスタッフは、この状況や環境に感謝しなければいけません。それだけでなく、もっともっとたくさん勝利して、『B1昇格』というプレゼントを何としてでもファンの皆さまにお届けすることが我々の責任と感じています。

──余談になりますが、バレンタインデー直前ということで、試合後のハイタッチの際には、かなりたくさんのチョコレートをもらっていたようでしたが。

今シーズンからファンの皆さまの要望に応える形で、試合後のハイタッチに回っています。おかげさまでいただくチョコレートの数も去年の5倍ぐらいに増えました(笑)。ファンとの距離が近くなることで、皆さまの声を直接聞けるようになり、とてもありがたく感じています。もっと早い時期からそうすべきでしたね。

──第2戦についてはいかがでしょう?

一言で言うと『我慢』の試合でした。西宮のアグレッシブなリバウンドとボールプッシュに押し込まれる時間帯が多く、『がっぷり四つ』の接戦のまま最後まで試合が進行しました。オフェンスでシュートを放った数はおそらく今シーズンワーストで、西宮のストロングポイントがゲームに反映されたため、試合時間全体の3分の2ほどの時間帯で我々がディフェンスに回っていたかと思います。

──苦しい試合のどこに勝機を見いだせたのでしょうか?

後半、勝負どころでの朝山の3ポイントシュート2発と、田中の1発に助けられました。ディフェンスリバウンドを1本目で取ることができたらもっと良い展開となったはずなので、リバウンドの意識をもっと強くしないといけないですね。

ただ、こういった我慢のゲームで勝てたことは大きいです。悪いなりに勝つことはとても重要でチームの経験値となります。

目標は昇格、チームに『勝つ空気』が漂っている

──西地区は島根、広島、熊本と三つ巴で大変な状況です。どのチームもB1昇格を目標にしていますが、広島の現在のチームの完成度は何割程度ですか?

チームとは常に上昇を目指すものなので、完成形というものはないんです。だから完成度に関して言葉にするのは正直とても難しいですね。ですが、積み上げるものがあるとしたら、今まで我々が信じてやってきたプレーの方向性の精度を高めつつ、バリエーションを増やしていくということでしょう。魔法の薬はありません。自分たちのやってきたことを信じて一つ一つ地道に努力を続けることがB2優勝という『最大の挑戦』に対する最短の道だと思っています。

──では質問を変えます。B2優勝を目指す広島は今、良い方向に向かっていると思いますか?

昨シーズンと今を比べて明らかに違うのは、選手一人ひとりに『勝つチームのプライド』が生まれていることです。チーム内に『勝つ空気』が漂っていると感じます。

勝つためには何が必要なのか。スタッフはアドバイスや戦術を提供しますが、そのお膳立てに対して、実際にコートで表現するのは選手です。刻々と変わる試合状況の中では、コーチが隣にいて指示をすることは不可能です。選手自身が自分たちで考え、話し合って、さまざまな問題をコート上で解決することが必要です。そして今の選手たちには、『勝つために考える力』がつきました。責任感も増したと思います。そこが今シーズン大いに変わったところだと感じています。

──B1への昇格を目指すにあたり、ここからのキーポイントはどこになりますか?

タフな試合はずっと続きますが、やはり上位チームとの直接対決で結果を出すことですね。

──3月17日と18日にホームで行われる熊本戦と、4月1日と2日にアウェーの松江で行われる島根戦ですね。

ここの勝敗がプレーオフへの出場に向けて最もウェイトを占めることになります。レギュラーシーズンではコンディションも含め、チームで最大限のフォーカスをしていくことになります。表現が極端かもしれませんが『勝てば天国、負ければ地獄』で、絶対に落とせない試合ですね。

──ここではファンの後押しも必要ですね。

広島ではファンのことを『シックスマン』(ベンチから出場してチームの力となる選手)と呼んでいます。シックスマンであるファンの皆さまの声援は強力な後押しとなります。我々にとっては絶対に必要な力ですよ。

──実際のところ、ファンの力は勝敗にどれだけ影響を与えるものなんでしょうか?

選手だって普通の人間です。激戦の最中、疲労困憊でディフェンスの足が動かない時、なかなか踏み出せないその一歩を後押ししてくれるのはファンの皆さまの声なんです。試合時間残り1分で負けている時、誰だって怖い状況でも戦う勇気を与えてくれるのはファンの皆さまの声です。ファンとともに試合を戦っている、我々はそう考えています。

今から是非とも我々の応援を予定に入れておいていただきたい(笑)。会場での熱い応援を期待しています!