ベスト8で昨年王者相手に41得点、12アシストの大暴れで勝利に導く

大学バスケットボールの全米王座を決めるNCAAトーナメントは佳境を迎えており、今週末には男女ともに厳しい戦いを勝ち上がってきた4チームによるファイナル4が行われる。今年も大きな盛り上がりを見せているトーナメントだが、特筆すべきは女子が例年以上に大きな注目を集めていることで、その原動力となっているのがアイオワ大4年のケイトリン・クラークだ。

183cmと女子では大型ガードの部類に入るクラークは、大学1年生で平均26.6得点、7.1アシスト、5.9リバウンド。2年生で平均27.0得点、8.0アシスト、8.0リバウンドを挙げるなど世代屈指の選手として躍動していた。そして3年時にも平均27.8得点、8.6アシスト、7.1リバウンドを記録。さらにNCAAトーナメントの準々決勝で41得点12アシスト10リバウンドと驚異的なトリプル・ダブルを達成。準決勝でも41得点と大暴れしてアイオワ大を準優勝に導き、この年の大学女子No.1選手として数々の賞に輝いた。

こうしてクラークは、今シーズンを女子バスケの枠を超えたアメリカ大学スポーツ界を代表するスター選手として迎える。この彼女の人気を示す代表的な指標が、NCAAで認められている肖像権を用いたスポンサー契約の金額だ。学生スポーツサイトの『On3.com』は、ナイキ、大手保険会社ステートファーム、スポーツ飲料のゲータレード、オーディオ機器のボーズなど複数の企業と契約を結び、その合計金額が310万ドル(約4億7,000万円)に達すると試算。WNBAでの最高年俸が1年平均25万ドル(約3,800万円)であることからも、彼女の契約が女子バスケ選手として破格の金額であることがわかる。

そんな大きな注目を集める中、彼女はこれまで以上のハイパフォーマンスを披露。現時点で37試合出場、平均32.0得点、9.0アシスト、7.3リバウンドを記録する活躍で、母校に史上2度目の第1シードでのNCAAトーナメント出場をもたらした。

トーナメントを順調に勝ち上がっていったアイオワ大はベスト8で、昨年の決勝で敗れたルイジアナ州立大と対戦した。ルイジアナ州立大にもエンジェル・リース、ヘイリー・バン・リスといったスター選手がいることで女子大学バスケにおいて、かつてないスポットライトを集めた。この試合を放送した『ESPN』は、実に平均で1,230万人が視聴したと発表。これは同局における大学バスケで最多の数字かつ、2012年以降のバスケットボールにおいても2018年東カンファレンス決勝、セルティックスとキャバリアーズの第7戦(1,360万人)に次ぐものとなった。

この大舞台でクラークは、3ポイントラインからさらに下がった位置から放つ長距離砲を次々と決めるなど41得点の大爆発。さらに12アシストと、的確なパスで味方の得点を次々と生み出し、7リバウンド、2スティールと守備でも存在感を示して試合を支配した。

アイオワ大は次に現地5日に行われるコネチカット大と戦う。コネチカット大は2013年からの4連覇を含む通算11度の全米制覇を成し遂げた大学バスケ界を代表する女王だ。クラークにとっても憧れのチームであり、高校時代の彼女はコネチカットへの進学を望んでいたが、コネチカットは彼女に興味がなくアイオワ大を選んだ。この因縁が、この一戦への興味をさらに増すスパイスになっている。

また、コネチカット大にもペイジ・ベッカーズという注目の選手がいる。クラークとベッカーズは同学年で、2019年のU19ワールドカップでは、アメリカ代表として共に金メダルを獲得。だが、高校時代はベッカーズが世代No.1の選手であり、U19でもベッカーズがエースで、クラークは控えだった。同じポジションのベッカーズの入学が早々に決まっていたことで、コネチカット大はクラークのリクルーティングを行わなかった背景もある。そして1年目から主力として期待に応えたベッカーズだが、昨年は故障でシーズン全休を余儀なくされた。だが、そこから見事な復活を果たし、エースとしてチームをファイナル4へと導いた。アメリカのスポーツファンにはお馴染みの両選手を中心としたアイオワ大とコネチカット大の黄金カードがどれだけの視聴者を集めるのか興味深い。