「一つひとつのポゼッションの重要性をあらためて感じています」

現在、アルバルク東京は宇都宮ブレックスと東地区首位、チャンピオンシップの第1シードの座を巡って激しい争いを繰り広げている。A東京は1位の宇都宮を2ゲーム差で追いかけているが4月20日、21日と直接対決が控えており、自力で逆転できる状況にある。

これから、よりタフでプレッシャーのかかる試合が続いていく。そこで大事になってくるのはチームの一体感を生み出し、同じ方向を向いて進んでいくこと。そのためには、酸いも甘いも嚙み分け、統率力に優れたまとめ役の存在が重要となる。チーム最年長となる35歳の橋本竜馬は、これまで青山学院大、JBL、NBL時代のアイシン(現・シーホース三河)で司令塔としてチームを日本一に導いた。大舞台での豊富な経験を誇り、頂点に立つチームには何が必要なのかを熟知する人物だ。

一方で、ここ数年の橋本は、リーグ上位争いやポストシーズンの舞台から遠ざかっていた。キャリアの晩年に差し掛かったベテランにとって、このブランクは少なくはない影響を及ぼすのではないか。しかし、24日の試合後、橋本についてこの点について聞くと、「あまりなくて、スっと入ることができると思います」と答えてくれた。

「自分の中で、勝つことが身体の中に染み込んでいるのかは分からない。ただ、(優勝争いの渦中にいる感覚は)久しぶりというものではなく、これまで通りにやれている感覚の方が強いです」

そして、一選手としてタイトルを狙える位置で戦うことへの充実感を語る。「選手としてうれしいですよね。チームに招いてもらって、こういう環境でやらせてもらえることにすごく感謝しています。その中で一つひとつのポゼッションの重要性をあらためて感じています。長い時間のプレーではなくても、しっかりと自分のプレーをし続けることが勝つために必要です。それを突き詰めていきたいです」

「自分がやりたいのは、こういうひりついた状況でプレーをすることです」

かつて2017-18、18−19シーズンの連覇達成時、A東京には正中岳城という傑出したリーダーがいた。プレータイムは多くなかった正中だが、豊富な経験を生かした的確な助言や堅実なプレー、ハードワークで文字通り縁の下の力持ちとしてコート内外でチームを支え続けた。正中の貢献度の高さに疑問を呈するA東京の関係者はいないだろう。

今のA東京は、連覇達成時からチームに残っている主力はザック・バランスキーのみ。再び王朝を築くための新たなサイクルに入った現在のロスターにおいて、スタイルは全く違うが、正中のようなリーダーシップを橋本は期待されている。

その中で橋本は、自身の目指すリーダー像として他の選手の良いところを取り入れつつ、「やっぱり自分らしくいるっていうのがすごく大切かなと思っています」と語る。「いろいろなところを見て、いろいろなことが分かる人になっていきたい。バスケットもそうですし、人間としても豊かになっていきたいです」

橋本には、自身のスタイルを確立できるだけの豊富な経験がある。しかし、彼はさらなる進化に貪欲で、新天地のA東京で様々なことを吸収できていると強調する。

「今は本当に、勉強させてもらっている感じですね。コーチ陣だけでなく、若い選手からもいろいろなことを聞いて、自分の中で解釈してどういった形にしていくのか、作業の途中でまだまだ未完成です。常に学び続けて、インプットしたことをアウトプットしていく。それを繰り返して、より良くなっていきたいです」

これからA東京は、今まで以上に負けられないプレッシャーのかかる試合が増えていく。だが、これこそ橋本が望んでいるものだ。「今シーズン自分がやりたいことは、こういうひりついた状況でプレーをすることです。それができていることに感謝して毎日を過ごしています」

中心選手として多くの時間コートに立つことはないかもしれない。しかし、橋本の巧みなゲームコントロール、闘志を全面に押し出して味方を鼓舞する姿はチームに有形無形の効果をもたらす。大舞台になれば橋本の存在感はより大きくなっていく。約1カ月後にはそれを多くのバスケットボールファンが実感することになるはずだ。